大阪市で最古の東横堀川、雑草生える区画を人が集う空間に

2023.10.1 09:00

久之助橋から見た東横堀川。かつて公園だったというベンチや整備された痕跡があるが、現在は封鎖され入ることができず、猫の憩いの場になっている(2023年9月9日・久之助橋から撮影)

(写真8枚)

大阪市が、市内を流れる「東横堀川」の水上と川沿いの空間を活用し、公園や緑道として人が集う空間になるよう計画中だ。今後、整備が進むであろう「東横堀川」の現状を見つめてみた。

■ 大阪市内最古の堀川、一部は市民憩いの場に

大阪市内を走る阪神高速1号環状線(南行き)の高架下を流れ、都会のど真んなかにありながらも雑草が生い茂る「東横堀川」。元は、1585年に豊臣秀吉の命によって大坂城の西惣構堀として作られた市内最古の堀川だ。

かつてはこのような堀川が市内のいたるところに張り巡らされ、舟運(しゅうん)によって大阪の発展を支えてきたが、自動車や電車の普及とともに埋め立てられてきた。

現存する同川は、大阪中心部を流れる大川から分岐して約3km縦断する運河で、大阪の観光名所である道頓堀川の東端につながる。

大川との分岐点になる「葭屋橋(よしやばし)」から1kmほど下った「本町橋」までは未整備区間もあるが、カフェや船着き場のあるイベントスペース「β本町橋」(大阪市中央区)を代表に、緑道や公園として整備。

未整備の区間も多いが、ある程度公園や緑道としてきれいに整備された「β(ベータ)本町橋」。カフェや船着き場などもある(2023年9月9日・本町橋から撮影)
未整備の区間も多いが、ある程度公園や緑道としてきれいに整備された「β(ベータ)本町橋」。カフェや船着き場などもある(2023年9月9日・本町橋から撮影)

「β本町橋」を運営する「水辺ラボ」の依藤さんは、「近隣の保育所の園児や子どもを連れた方が散歩に訪れて遊んだり、周辺で働く方々が昼時を中心に多く利用され、川を眺めながらランチや休憩をされています」と話すように、水辺空間は市民の憩いの場になっているようだ。

しかし、「本町橋」から道頓堀川手前の「上大和橋」まではほぼ未整備。過去に公園として活用されていた記録もあるが現在は封鎖され、雑草が生い茂りごみの不法投棄なども目立ち荒れている状態。

その先の道頓堀川には遊歩道「とんぼりリバーウォーク」があり、整備されている地域に挟まれている構図になる。

■ 未整備区間も空間整備が加速、水質の改善も

では今後、同エリアの整備はどうなるのか? 大阪市の担当課によると、「現在、本町橋から(約250m先の)農人橋間は護岸改修工事を、また(さらに約750m先の)末吉橋付近は碁盤を更新中。具体的な時期や計画は未定ですが、公園や水辺の空間づくりなど活用方法を模索している段階」と話す。

また、9月8日の定例会見で横山英幸市長は、「川沿いに向かって階段があったり、川に近寄りやすく、人が集う豊かな空間づくりを進めている。今後、舟運にも力を入れ、大阪市域に来る方々が楽しく開放的に川や町を楽しんでいただけるよう、できるだけ早く、東横堀川の親水空間をつくっていきたい」と整備に積極的な姿勢を見せた。

東横堀公園の川岸に向かって降りられる階段も見られる(2023年9月9日・農人橋から撮影)
東横堀公園の川岸に向かって降りられる階段も見られる(2023年9月9日・農人橋から撮影)

そして、水質に関しても「中浜下水処理場の高度処理水が東淀川を通って道頓堀に流れ水質が改善されていく長期計画もある。今後、東横堀川は舟運のキーワードになり、整備も加速させたい」と横山市長は明言した。

■ 現在封鎖中の川沿いを開放する社会実験

にぎやかな道頓堀と開放感のある大川の間をゆったり水上移動できれば、市民も観光客も大阪の魅力をより感じられるようになるだろう。川幅も距離も十分にある同川沿いの空間と水上がどう変化していくのか。

前出の依藤さんは、「東横堀川の水辺を歩けるようになること、川を眺められる・近づける・触れられるといった親水性の向上を望む声が多く、β本町橋としても市民や事業者の活動が水辺の賑わいや適切な維持管理につながり、暮らしに寄り添った水辺になってほしい。また、それらの活動拠点としての役割を果たしたい」と話す。

2023年度から本格的に護岸の耐震改修工事が始まったのをきっかけに、官民連携で同川沿川の将来ビジョンを考える『東横堀川水辺プラットフォーム検討会』がスタート。 

社会実験『東横堀ING 2023秋』の準備が進められていた東横堀川の川岸(2023年9月9日・末吉橋から撮影)
社会実験『東横堀ING 2023秋』の準備が進められていた東横堀川の川岸(2023年9月9日・末吉橋から撮影)

9月22日から10月1日までおこなわれている社会実験『東横堀川ING2023秋』では、これまで封鎖されていた川沿いの一部を「チャレンジパーク」として解放し、水上に浮かぶシンボリックなフリーレンタル空間「バシャバシャテラス」や出店など多様なプログラムを実施するという。

また、10月22日には水上運動会やJAZZバンド演奏、落語、屋台などが楽しめる『東横堀川オータムフェス』も決まっており、検討会やイベントなどを通じて今後の東横堀川の将来像がどう変化していくのか? 引き続き見守っていきたい。

取材・文・写真/岡田由佳子

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