努力義務化された自転車のヘルメット、実は品薄状態だった

2023.6.14 07:15

今年4月の法改正後、ヘルメットは全国的に品薄状態だという「サイクルベースあさひ」都島本店

(写真6枚)

2023年4月、改正道路交通法の施行によって自転車を利用する際は大人も「ヘルメット」の着用が努力義務化された。ところが、法改正以降も「ノーヘル」で自転車に乗る人ばかりを見かけるのは気のせいだろうか。

これまでヘルメットを着ける習慣が無く、また「強制」ではないとなると、わざわざヘルメットを買いに行く人も少ないのではないか。実際、今回の法改正で世間のヘルメット事情に変化はあったのか? 自転車専門店「サイクルベースあさひ」(本社:大阪市都島区)の都島本店を訪れ、店長の森本健太さんに話を訊いてみた。

「売り場を広げても追いつかないくらい」

──2023年4月に法改正されて以降、ヘルメットの売れ行きに変化はありましたか?

ヘルメットの購入者がかなり増え、問い合わせも激増しました。これまでは1週間で数個売れる程度だったのが、改定によって売り場を広げても追いつかないくらいに売れ、劇的な変化となりました。

ヘルメットは人によって頭のサイズやそれに合う規格も異なるため、予約販売なども難しいこともあり、品切れ状態が続いています。

──そんなに影響が! でも、街中でヘルメットを着けてる人ってあまり見かけないような・・・。

実は、僕も売り場での様子とは反比例し、街では少ないなと感じています(笑)。

ヘルメットの着用率に関しては地域差があり、大阪は着用率が低く東京では高いという傾向があります。大阪の場合、市内は自転車移動をする人が多く、自動車含め事故自体も多いという背景もあるため、より着用してほしいのですが。

「サイクルベースあさひ」都島本店のヘルメットコーナー

──たしかに大阪市内に住んでいる者としても、危ない運転をしている人が多いように感じます。ちなみに、法改正によって具体的にどうルールが変わったんでしょうか。

コロナ禍をきっかけに自転車ユーザーが増えたのか、この数年で自転車事故も増加しました。子どものヘルメット着用は以前から努力義務化されていたんですが、今回の法改正から大人も対象となっています。

「努力義務」ですから、あくまで「着けてくださいね」ということで、罰則は特にありません。ただ、事故に遭った際、過失割合が変わってくる可能性もあるでしょう。事故に遭った後では遅いんです。

■ ただ頭を保護すればいいわけじゃない、自転車のヘルメット

──なるほど。以前、「あさひ」さんのツイッターで、「本当にあったヘルメットをかぶっていなかったら怖い話」を紹介していました。やっぱり、ヘルメットを着けることで防げる事故やケガはあるんでしょうか。

自転車で転倒しても、健康な大人ならとっさに手をつくことができますし、大きなケガには繋がらないと思っている方は多いと思います。ただ、自転車事故で怖いのは、たまたまこけた先に縁石や車止めがあり頭が・・・という恐ろしいケースです。不意なこけ方で、頭を守れないケースはとても多いんですよ。

──それは恐ろしい・・・。ヘルメットの重要性を感じます。

自転車用のヘルメットは、横からの衝撃から頭を守ってくれる機能があります。品薄状態で工事現場のヘルメットをかぶっている人もいるそうなのですが、そのタイプは上からの衝撃を逃がすことに特化しており、横からの衝撃には効果がありません。

──ただ頭を保護すればいいんじゃないんですね。ところで、実際に自転車用のヘルメットを手にとってみると、予想外に軽くて驚きました。

そうですね、メーカーさんの企業努力のおかげでかなり軽量化しています。

デザインも進化していて、最近では皆さんがイメージするような競技用ヘルメットだけでなく、つば付きのハット型ヘルメットやカジュアルでおしゃれなヘルメットも増えています。色も、以前は白・黒やシンプルなものが多めでしたがバリエーションも増えています。

「サイクルベースあさひ」都島本店の店長、森本さん

──これだけ軽くてかわいいヘルメットなら欲しくなります。購入時、気をつけるポイントなどはありますか?

やっぱり、中古や通販で購入することはおすすめしません。特に、最近は格安で見た目がかわいいヘルメットも通販で販売されています。品薄ということでつい購入したくなるかもしれませんが、なかに下敷きが入っているだけで何の機能もない粗悪品も・・・。

購入する際は、SGやJCF、CEといった機関のマークがあり、一定の安全基準を満たしているヘルメットを選びましょう。

森本さんいわく、法改正前に比べるとヘルメット姿の自転車ユーザーもちらほら見かけるようになったという。今後品薄状態が解消され一定数の人が着用することで、ヘルメットがスタンダードになっていく日も近いかもしれない。

取材・文・写真/つちだ四郎

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