戦国の母は強し「どうする家康」母・於大と予想を超えた再会

2023.1.24 06:45

16年ぶりに再会する元康(松本潤)と於大(松嶋菜々子)(C)NHK

(写真4枚)

古沢良太脚本・松本潤主演で、江戸幕府初代将軍・徳川家康の、厳しい選択だらけの人生を描きだす大河ドラマ『どうする家康』(NHK)。1月22日の第3回「三河平定戦」では、松平元康(家康)が今川と織田の板挟みとなり、非情な決断を迫られる姿が描かれた(以下、ネタバレあり)。

■どうする家康、今川を裏切り織田側へ

織田信長(岡田准一)に対抗して、三河国平定に乗り出した元康たちだが、織田軍の勢いにはかなわず、惨敗。窮地に陥った元康の元に、織田に寝返った叔父の水野信元(寺島進)が訪れ、主君・今川氏真(溝端淳平)を裏切って信長に頭を下げるよう促すが、元康はそれを拒絶する。

そんな元康の前に現れたのは、幼い頃に別れた母・於大(おだい/松嶋菜々子)。冷徹にも元康に対し、「父上はかつて尾張におったそなたを見捨てました。主君たる者、家臣と国のためならば、己の妻や子ごとき平気で打ち捨てなされ!」と一喝するのだった。そのうえ家臣からも、このまま今川から離反するよう懇願され、結局は織田側に着くことになった・・・。

■急展開で描かれた修羅の戦国時代

先週までは「まるで乙女ゲー」といったSNS投稿もあり、このコラムも含めて大河ドラマらしからぬ盛り上がり方をしていた『どうする家康』。

しかし第3回は、戦で討死する農民たち、戦死者から武具を奪う人々、次々に運ばれる首桶、そして国のためなら妻子の犠牲も厭わず、裏切り者の身内は容赦なく殺すという倫理観や死生観・・・と、突如「修羅の戦国時代」が牙をむく展開となった。

やはり今回最大の見どころは、ギリギリまで今川に忠誠を誓おうとするも、親や家臣一同に説き伏せられて、家康が泣く泣く織田に恭順する道を選ぶ過程だろう。特に生き別れの母・於大と対面できたと思ったら、実はその母こそが、今川との縁を断ち切るための最大の切り札だったという流れは、家康ならずとも呆然としたはず。

■戦国の母からの無情な説得に同情の声

元康の母・於大(松嶋菜々子)を岡崎城へ連れてきた水野信元(寺島進)(C)NHK

SNSでも「涙涙のはずが・・・怖すぎる母上さまや」「史実どおり水野信元ではなく、実母である於大の方に織田方に寝返るよう説得させるの、かなりの鬼脚本」「幼い頃生き別れた母が、出会い頭お前上司と家臣と妻子裏切ってこっち来なさいって言ってくる、まだ10代の元康くん可哀想すぎないか?」などの、家康への同情の声が。

そんな於大に対して、視聴者は非難轟々・・・かと思いきや、「華奢なのに剛の者感半端ねぇ」「前回、息子の誕生日をごまかして寅だと強弁したように、今回は息子の嫁と子を捨てさせようとする。なんともしたたかな、戦国の女」と、むしろ感心の声が多数。

演じる松嶋菜々子にも、「やさしい母の顔から現実的で冷徹な意見を突きつける武将の妻になる演技良い」「於大の方は慈悲深い母として描かれることが多かったが、本作は戦国を生き抜くしたたかな女で、それを松嶋菜々子さんが演じるのがたまらない」などの応援の声が寄せられた。

どうやらここからしばらくは、於大や三河の家臣団をはじめとする「家族よりお国が大事。そのためなら戦闘上等」な戦国的価値観と、家康の「家族や家族同然の人たちがなによりも大事。できるだけ平穏に生きたい」という、むしろ現代の私たち寄りの価値観とのせめぎ合いの展開となりそう。となると、現代人の私たちはどうしたって家康の肩を持ちたくなるはず。自然に主人公を応援したくなる構図を、さりげなく作り上げた脚本家の古沢、やはり相当な策士である。

『どうする家康』は、NHK総合で日曜・夜8時から、BSプレミアム・BS4Kで夕方6時からスタート。第4回『清須でどうする!』では、信長との再会、木下藤吉郎(ムロツヨシ)や信長の妹・市(北川景子)との出会いが描かれる。

文/吉永美和子

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