「尺足りる?」承久の乱、まさかの最終回持ち越しに【鎌倉殿】

2022.12.13 06:45

鎌倉御所・執務室にて。はるか昔のことに思いをはせる義時(小栗旬)(C)NHK

(写真5枚)

三谷幸喜脚本・小栗旬主演で、鎌倉幕府二代執権・北条義時の生涯を中心に描く大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(NHK)。12月11日放送の第47回「ある朝敵、ある演説」では、上皇が自分に追討の院宣を出したことに対して動揺する義時の姿と、急激に暗黒化する妻・のえの姿が描かれた(以下、ネタバレあり)。

■「おもしろき人生でございました」微笑む義時

源氏の血統の源頼茂(井上ミョンジュ)が、次期鎌倉殿の座を狙って京で挙兵し、内裏の一部が消失した。後鳥羽上皇(尾上松也)は内裏の再建費用を武士から取り立てると宣言するが、義時はその命令を黙殺。この強い姿勢に対して、御家人たちが不安や不満の声を上げるのを聞いた義時の息子・泰時(坂口健太郎)は、上皇の真の狙いが金子ではなく、執権と御家人たちとの間を裂くことの方にあると察知する。

その予想通り、上皇側の武士・藤原秀康(星智也)が、京都守護を襲撃して殺害。京都守護は義時の妻・のえ(菊地凛子)の兄だったため、彼女は義時に「兄は見殺しにされたのですか!」と詰め寄る。しかし三浦義村(山本耕史)を通じて、自分に追討の院宣が出されたことの方で頭がいっぱいの義時は相手にせず、のえは怒りの形相を見せる。

京・院御所にて。源頼茂の謀反により焼け落ちた内裏を修復するための図面を引く後鳥羽上皇。左から、後鳥羽上皇(尾上松也)、藤原兼子(シルビア・グラブ)、藤原秀康(星智也)(C)NHK

泰時は京と戦うよう義時に進言するが、義時は「私一人のために鎌倉を灰にすることはできん」と告げ、自分がいなくなったら泰時に後を託すことを、弟・時房(瀬戸康史)や息子・朝時(西村たける)の前で明言。しかしそれを、自分と義時の間の息子・政村(新原泰佑)を後継にすることを望んでいたのえに聞かれてしまう。

義時は、鎌倉のために自分の首を差し出すことを、今は「尼将軍」を名乗る政子(小池栄子)と妹・実衣(宮澤エマ)に告げるが、これ以上家族の死を望まない政子は、逆に大勢の御家人たちの前で、京と戦うように仕向ける演説を行う。

そこに泰時が「今こそ一致団結し、尼将軍をお守りし、執権殿のもとで敵を打ち払う。ここにいる者たちは 皆その思いでいるはずです!」とダメ押しをしたことで、御家人たちは京と戦う方向で団結。姉と息子の思わぬ行動に、義時は昔の「小四郎」の頃に戻ったように、人目をはばからず涙を流すのだった──。

鎌倉御所・寝殿にて。御家人たちに語る政子を見つめる北条義時(小栗旬)(C)NHK

■ 「小四郎だ」一瞬昔に戻った義時に、視聴者もらい泣き

まさに『ハムレット』の「生きるべきか、死ぬべきか」という有名な台詞を地で行くような煩悶の果てに、姉や息子によって「生きるべき」という道を開かれた、第47回のラストの義時。

SNSでも「義時は独りではなかった。孤独になろうと家族の手を振り払おうとも、決して見放されなかった。それが義時が人生全てを鎌倉に捧げてきたことを知っているから。なんという脚本」「義時は孤独ではなかった!」「いやー、小四郎くんのボロボロッ、ていうのと同じタイミングでだばーっと涙出た」「あの涙は義時というより小四郎って感じだった」と、最終回直前になって、久々に義時に同調するような声があふれた。

■「ゾクっとした」のえの愛憎を表現、菊地凛子のすごみ

しかしその一方で、京都と鎌倉の関係以上に不穏な状態になったのが、義時とのえの関係。兄が鎌倉のために死に追いやられたこと、息子の後継者の道が断たれたこと、さらに前妻・前々妻と比較して自分に冷たい夫・・・と「伊賀の方(のえ)暗殺説」のゲージが、確実にマックスに膨れ上がった。

また、義時への激しい愛憎が入り混じった思いを、大胆かつ繊細な表情で表現する菊地にも、「女が修羅道に落ちたときの表情を見せるために、のえ役を菊地凛子さんにしたんだろうなあ。ゾクっとした」「今日の菊池凛子さん、本当にすごかった。怒りや憎しみや悔しさやちょっとナメてたのがひっくり返されたやるせなさやら、何もかもがないまぜになってなんとも言えない凄み」「上皇が(尾上)松也さんな意味、のえが菊池凛子さんな意味をひしひしと感じる今日このごろ」という声が上がっていた。

義時の館にて。あることで義時に憤る妻・のえ。左から、二階堂行政(野仲イサオ)、のえ(菊地凛子)、のえの愛息・政村(新原泰佑)

■ カオスすぎる予告映像・・・義時の最期はどうなるのか?

そしていよいよ来週は、泣いても笑っても最終回。とはいえ承久の乱はまだ本格的には始まってもいないし、戦のあとの処理のあれこれも残っているし、さらには義時の死を描くことも決まっているし・・・と回収すべき案件がいろいろ残っているうえに、予告では義時の継母・りく(宮沢りえ)が再登場したり、政子が倒れていたりと、情報が渋滞状態。

SNSでも「待って最終回1回で尺足りる???」「あと半年くらい必要なんじゃないの??」「義時が主人公の大河なのに、最終回の1つ前でまだ承久の乱が始まってすらいないとは!」「(義時が)運慶(相島一之)に依頼した仏像、最終回まで持ち越されることになったねぇ」など、本当にすべての史実や疑問を回収して終われるのか? を心配する声があふれた。

なかでも気になるのは、三谷が「アガサ・クリスティを意識した」と言い、制作統括の清水拓哉氏も「(関係者が)一様に驚いた」と証言する、義時の最期の描写。SNSでは、今回の展開から「のえ実行犯説」が濃厚になりつつあるが、「政子と実衣が殺して、のえに罪をかぶせる」「トウと殺陣の末に暗殺? 長澤まさみが、トウと共に暗殺??」「最終回の黒幕トキューサじゃねw」「平六(義村)が上半身裸で小四郎刺す」などの推測が。

とはいえ視聴者の総意は「脚本家殿お得意の、持ち上げてからの絶望を要覚悟なんだろうな」ということと、「いろいろ予想しちゃうけど、どうかどこか少しでも小四郎に救いのある終わりになりますように」の2点ではないだろうか。

とにかく笑いと並んで、ミステリーものを得意とする三谷幸喜だけに、あっと驚きつつもどこかで納得できるラストにしてくれるはずだ。BS放送の「早鎌」すら『M-1グランプリ』とかぶってるのが悩ましいところだけど、ここまで来たら最後まで、みんなで一緒に三谷幸喜の鬼脚本に翻弄されよう。

『鎌倉殿の13人』の放送はNHK総合で毎週日曜夜8時から、BSプレミアム・BS4Kでは夜6時からスタート。12月18日の最終回『報いの時』では、「承久の乱」の結末と義時の最期が、15分拡大バージョンで描かれる。

文/吉永美和子

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