600円で食べ放題! 京都・ MKタクシー社食、その誕生秘話

2022.8.17 11:45

オプションのドリンクバーとアイスバーをつけても、セット価格で1000円というお得さの「MKバイキング」

(写真5枚)

ハートがトレードマークな「MKタクシー」といえば、京都の街ではお馴染みのタクシー会社だ。日本有数の観光エリアが拠点なだけあり、観光客や修学旅行生向けの貸し切りプランも実施している。

そんな同社の社員食堂は「MKバイキング」(「MKボウル上賀茂」内レストラン)と呼ばれ、一般客にも開放されている。しかも価格はなんと600円で食べ放題だそうで・・・。京都通や地元住民が知る穴場グルメが生まれたきっかけについて、「エムケイホールディングス」(本社:京都市南区)で経営企画部に所属する今井さんに話を訊いた。

■ 1976年オープンの「MKバイキング」、当時は400円

──さっそくですが、バイキングをやっているのを知らなくて・・・メニューが気になります! やはり京都だけに和風なものが多いのでしょうか?

日によってメニューは変わりますが、天ぷらやカレー、揚げ物や麺類、サラダバーなど和洋問わず常時30種類のメニューを用意しています。親子煮、鶏とナスの揚げびたし、ハンバーグ、肉団子などは登場するとすぐに無くなってしまう人気メニューですね。

残念ながら2016年で閉店したものの以前は山科区にも店舗があり、その頃は両店で違った献立や調理方法、味付けを堪能できるという楽しみ方もありました。

──かなり多彩なメニューですね。しかも価格が600円との噂を聞いたのですが、本当ですか?

「仕事を精一杯頑張ってもらいたい」という気持ちをこめて、1976年のオープン当初は従業員は290円でした(現在は400円)。

一般のお客さまには、なんとか収支が見合う値段として当初は400円という値段設定でしたが、2022年現在は物価の上昇などの影響もあり600円(土日祝は900円)となっています。

1976年当時から続く「食べ残し厳禁」ルール。この安さを保つためには欠かせないルールだ

──値上げをしても驚きの安さです。 正直なところ、そのお値段で運営は成り立つのでしょうか。

あくまで「MKバイキング」は社員食堂なので、利益は求めていません。ただ赤字ギリギリになってしまうので、お客さまには取った分を完食してもらうため「食べ残しは倍額」をお願いしています。

また、安価な値段で提供していることもあり使える食材は限られてきます。そのなかでバラエティー豊かなメニューを提供できるよう、食材業者から珍しい食材が入った場合はすぐ情報を教えてもらえるようお願いするなど、常に試行錯誤を続けています。

■ タクシーではなく、元々はボウリング場の社食だった

──そもそも、社員食堂でバイキング形式は珍しいと思うのですが、なぜバイキングなのでしょう?

それは「MKボウリング」の歴史と関係があります。弊社は1970年代のボウリングブームをきっかけに山科と上賀茂にボウリング場をオープンしたのですが、のちに広い敷地を活かすため、敷地内にタクシーの営業所も併設しました。

当初はボウリング場の従業員への昼食としてお弁当を提供していたのですが、タクシー営業所もできたことでドライバーの昼食も必要になりました。ドライバーは決まった時間に営業所に戻ってくるわけではないので、それまでのようなお弁当は難しいということに。そこで、営業時間中なら好きなおかずを食べられるバイキング方式に切り替わったと聞いています。

オープン当時は現在より「社員食堂」らしさがうかがえる

──なるほど、従業員に寄り添った結果としてバイキングになったんですね。一般のお客さんにも提供するようになったのはいつから?

実は、社員食堂を開始した当初から一般客も受け入れる予定だったそうです。「MKバイキング」では毎回30種類ほどの料理を作る必要があるため、どうしても従業員のみ対象では採算が合わないという事情がありまして・・・。当時も現在も、一般のお客さまの方が多く来られますね。おおよそですが従業員は全体の3割ほどの割合です。

──そうだったんですね。先日ツイッターで「修学旅行中、ドライバーさんにおすすめのメニューを聞いたらMKバイキングに連れていってもらった」という投稿を見かけました。やはり京都を中心に活動しているMKタクシーさんともなると、おすすめグルメを聞かれる機会も多いのでしょうか?

そうですね、ドライバーは修学旅行や貸切観光タクシーではお客さまと一緒にいる時間が長いです。お客さまから「観光地に詳しいドライバー」と頼りにされ、おすすめのお店やランチなどを尋ねられる機会も多いです。

そんな期待にこたえるため、休日に新しいお店を開拓したり仲間同士で情報交換したりと、お客さまの多様な要望にあわせたおすすめの食事処を紹介できるように努力しているそうです。

46年もの歴史を持つ「MKバイキング」だが、今年8月6日に新たな「和朝食バイキング」がスタート。丹後直送の魚を使ったお刺身やおばんざいなど食材にこだわったメニューが食べ放題だが、それでも1500円とかなりリーズナブルなお値段だ。社員でもおすすめしたくなるMKタクシーの社員食堂、京都に行ったら一度訪れてみたい。

「MKバイキング上賀茂」の営業時間は平日昼11時から2時半、夕方5時から夜9時(土日祝は昼12時から夜9時)。和朝食バイキングは毎週土日祝・朝7時から10時半。

取材・文/つちだ四郎

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