コントと喜劇の終着点、どちらも知る李闘士男監督の違いとは?

2021.12.17 20:00

映画『私はいったい、何と闘っているのか』のメガホンをとった李闘士男監督

(写真7枚)

安田顕、小池栄子らをキャストに迎え、お笑い芸人・つぶやきシローの原作小説を映画化した『私はいったい、何と闘っているのか』。主人公は、スーパーで働いている45歳・伊澤春男。勤務先では頼られるものの、なかなか出世に結びつかず、幸せそうに見える家庭にも複雑な事情があり・・・。メガホンをとったのは、『デトロイト・メタル・シティ』(2008年)などで知られる李闘士男監督。「悪者にも寄り添った」という監督に話を訊いた。

取材・文/田辺ユウキ

「コメディ映画の監督の性質なのかも」(李監督)

──李監督の映画監督デビュー作『お父さんのバックドロップ』(2004年)は息子に振り向いてもらいたい中年レスラーの奮闘劇でした。今回は逆に、父親が自分の家族の現実を直視できない物語になっていますね。

みっともないほどに不器用でおバカな人間が好きなんです。安田顕さん演じる春男がずる賢い人間だったら、あそこまで愛せないはず。僕は『グレイテスト・ショーマン』(2017年)の主題歌『ディス・イズ・ミー』が大好きなんですけど、その理由が「どこか欠けているからこそ人間的な魅力がある」という部分。今回の映画って、派手な出来事は起こらないじゃないですか。だけど、人間に寄り添った話になっていると思うんです。

映画『私はいったい、何と闘っているのか』 © 2021 つぶやきシロー・ホリプロ・小学館/闘う製作委員会

──「派手な出来事が起こらない」とは言いつつ、春男たちが終盤の沖縄旅行で、ある男性と出会うパートはかなり劇的でした(笑)。

まあ、一般的に見ればただのヤリチ○野郎ですよね(笑)。だけど、単なるヤリチ○野郎にはしたくなかった。確かにひどい男なんだけど、彼には彼なりに事情があるように描いています。観る人が「こいつも訳アリなんだな」と許せるようになっている。これは僕の演出家としての欠点でもあるんですけど、どれだけ悪人でも許せるように描いちゃうんです(苦笑)。

──それこそデビュー作『お父さんのバックドロップ』の主人公は、職業は悪役レスラーだけど、素顔は心やさしいお父さんでした。

そうそう。「こいつにも事情があるんだよ」と汲み取って描くと、悪い奴の表現も変わる。それが正解かは分からないけど、僕自身はそこを追求するために映画監督をやっている気がします。コメディ映画を撮る監督って、みんなそういう目線を持っている。客観性も含めていろんなモノの見方をする。悪者にも寄り添う。というか、悪い奴をそのままにすると自分が辛くなっちゃうんですよ。それってコメディ映画の監督の性質なのかも。

映画『私はいったい、何と闘っているのか』

2021年12月17日公開
監督:李闘士男
出演:安田顕、小池栄子、岡田結実、ファーストサマーウイカ、ほか
配給:日活、東京テアトル

  • LINE
  • お気に入り

関連記事関連記事

あなたにオススメあなたにオススメ

人気記事ランキング人気記事ランキング

写真ランキング

コラボPR

合わせて読みたい合わせて読みたい

人気記事ランキング人気記事ランキング

関連記事関連記事

コラム

ピックアップ

写真ランキング

エルマガジン社の本