長澤×野田、舞台で初タッグ「劇場は人と人が出会う場所」

2021.12.3 06:45

左から長澤まさみ、野田秀樹

(写真4枚)

人は人と会いたいはず、劇場とはそういう場所(野田)

──長澤さんは、これまで三谷幸喜さんや松尾スズキさんなど、そうそうたる演出家とご一緒されてますが、野田演出ならではのおもしろさはなにかありますか?

長澤:的確に、ピンポイントでダメ出しがもらえるところです。あとは、私は元々緊張しやすいタイプなので、稽古のたびに「ちゃんと居なきゃ!」と思うんですけど、そういった雑念みたいなものを持たずに稽古場にいらっしゃるので、すごいなあって。本当にシンプルに物を言っていただけるので、すごく気持ちがいいですし、私自身も迷わずに稽古ができていますね。

──野田さんは、日本語版でずっと井戸を演じてましたが(注:英語版では、小古呂の妻役!)、今回完全に外から舞台を眺める立場になって、今回のチームにどのような可能性を感じていますか?

野田:まだ稽古4日目ですが、とてもいい手応えがあります。普通はこの段階で「いい」とは言わないですよ。演出家として、油断してもらったら困るというのもあって(笑)。芝居作りで最初に大事なのは、どういう所で動機をつかんで、どういう風に自分を変えていくのか、みたいな大きい流れを掴むことなんですけど、そこをちゃんとそれぞれが的確にとらえていますね。

「私たちは生から死に向かって、リスクを負って生きている。それで言うと、まさに一回勝負、失敗したら取り返しがつかない「舞台」は、非常に我々の「生」と関係してるんですよ」と語った野田

──野田さんも長澤さんも、コロナ禍でも大きな舞台に立ってましたが、演劇に対する意識の変化を感じたりしましたか?

長澤:昨年『フリムンシスターズ』(作・演出:松尾スズキ)の千秋楽で、松尾さんが最後に「この舞台を一緒に完成させてくれてありがとう!」ってお客さんに言ったときに「ああ、お客さんは観ることで、舞台に協力してくださってるんだ」と、やっと気づけました。自分のことでいっぱいいっぱいで、こっちが気を遣っていると勝手に思っていた自分が恥ずかしかったです。「そうだった。これが舞台なんだ」と、すごく思いました。

野田:松尾がそんな立派なことを言える人間になったんだ(一同笑)。感動しちゃった。

長澤:「拍手を!」って言って、みんなでお客さんに拍手しましたよ。

野田:僕は昨年7月に、真っ先に『赤鬼』(東京芸術劇場主催 東京演劇道場生等による)を上演したけど、あれは舞台の構造上、お客さんの顔がよく見えるんだよね。最初は緊張してるけど、それがどんどん解けていくのがわかったから「ああ、やっぱり上演するのが当たり前だし、良いことなんだ」と思いました。人間は生きている以上、基本的に人と会いたいはずだし、劇場とはそういう場所。そのことをどうのこうの言われるのは、なんだかなあ・・・と思います。

──最初の緊急事態宣言の際、劇場閉鎖に反対する意見書を出されたのは、そういうことですよね。そして実際に上演を続けることで、その意義をより強く感じたのでは、と思います。

野田:演劇は人間の身体と(観る)人間があれば、それだけで成立するけれど、料理屋さんと一緒で、その場でお見せするしかない表現でもある。でもコロナというのは、人と人が出会うのを禁じるわけですから、非常にシビアですよね。

だからこそ、みんな必死で克服したいと思うわけですよ。人が人と出会わなくちゃいけないから、演劇が必要だから。でもそれが、逆方向に行ってしまっている場合は「変だな」と思います。オンライン演劇って、それはもう「映像」であって演劇ではないから、その言い方は止めてくれないかなあ? と思いますね(笑)。

──その意味で言うと『THE BEE』は4人だけで、しかも小さな空間で生々しい世界を作るという、THE・演劇という舞台です。

長澤:斉藤由貴さんと2人芝居(『紫式部ダイアリー』/2014年)をやったとき、少人数でもお芝居ができることを知っておもしろかったし、すごくいい経験になったんです。まだ「全部が課題」という感じですけど、今回も全力でぶつかっていこうと思います。

──この作品は初演当時、もっぱら「9.11」のメタファーだと言われましたが、今回の再演では、今のインターネットの状況であるとか、あるいはコロナの恐怖でお互いが監視し合ってる状況とか、もっといろんな事象と重ねてみることができるかもしれません。

野田:確かにコロナっていうのは、非常に人間の恐怖心と関係してますよね。「現実のコロナの怖さ」より「みんなが想像するコロナの怖さ」の方が大きくなってない? と思うけど、そう言うと「そんなこと言ってる人間がいるからダメなんだ!」って。それもまた、非常にシステム化された恐怖心でしょうね。でもどんなとらえ方の可能性があるかについては、稽古しながらもうちょっと探ってみます(笑)。

今作が初タッグながら、息のあった掛け合いを見せた2人。稽古が始まって間もないが、野田は長澤について「思い切りもいいし、素晴らしい」と絶賛

『THE BEE』は阿部、長澤、川平のほかに、長年NODA・MAP作品にアンサンブルで参加していた河内大和が出演。大阪公演のチケットは12月5日に一般発売開始で、当日券も毎公演販売される予定。 

衣装クレジット

ワンピース4万6200円(バウム・ウンド・ヘルガーテン/エスアンドティ☎03-4530-3240) ブーツ5万6100円(ロランス/ザ・グランドインク☎03-6712-6062)リング<右手> 8万2500円 <左手/親指>9万6800円   イヤーカフ<上>1万4300 <下>2万2000円(トムウッド/ステディ スタディ☎03-5469-7110)、リング<左手/中指・薬指>1万3200円(ソワリー/☎06-6377-6711)

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