2021年上半期、注目の邦画は?評論家による映画鼎談

2021.9.4 18:15

左から、春岡勇二、ミルクマン斉藤、田辺ユウキ

(写真13枚)

3人がそれぞれ選ぶベスト3は?

斉藤:アニメもすさまじいものが多くて、まず『映画大好きポンポさん』。キャラクターの動き、背景の画づくり、さらにアニメーションでロジャー・コーマン論をやっている。しかもプロデューサーのポンポさんが「90分で人を感動させられないとダメ」という、実はちゃんとした映画論を持っている。

田辺:ひとりの女優が水たまりを飛び越えるシーンなどの画のすばらしさ、そして映像編集という作業に焦点をあてた目の付けどころが本当におもしろかった。

おいしいものには目がない、食いしん坊の肉子ちゃん。(C)2021「漁港の肉子ちゃん」製作委員会

斉藤:アニメーションとしての質が高いといえば、さすがSTUDIO4℃と思わせたのが、明石家さんまプロデュースの『漁港の肉子ちゃん』ですよ。2020年公開の『えんとつ町のプペル』もすごく頑張ってたけど、画、動き、どれも美しい。肉子ちゃんだけカートゥーンキャラで、あとはジブリ1期生のリアルさで固める、これは参った。

田辺:『シン・エヴァンゲリオン劇場版:II』はすべてきっちり回収して決着をつけた。よくぞここまで、と感動しましたよ。そして強烈だったのが『名探偵コナン 緋色の弾丸』。最高時速1000キロの真空超電導リニアの車内でアクションをやるとか、アニメでしかできない運動表現になっている。しかも、スマホなど電子機器をつかったやりとりもちゃんとアクション的になっていて、ずっと興奮しっぱなし(笑)。

斉藤:まさに『大陸横断超特急』(1976年)だったね、オリンピックを意識した大パニック。本来なら2020年公開予定だったというのに驚く。これをオリンピック前に公開するってケンカ腰やん(笑)。そしてパペットアニメ『JUNK HEAD』(堀貴秀監督)。あれをひとりで長年に渡り作り続けたなんて狂気の沙汰でね。

春岡:あれはすごかった。小さいキャラクターが伸びるところなど、表現がどれもおもしろい。

斉藤:あとね、SNSで話題になっているから『劇場版 少女☆歌劇レヴュースタァライト』(古川知宏監督)を観たけど、ちょっとぶっ飛んでる。T字型の表象がやたら出てくるんだけど、これってミュージカルなど舞台の立ち位置を示すバミリの形。話は、舞台女優になりたい女の子たちが競い合っているだけの話なんだけど。『幕が上がる』の最後の公演を2時間やったって感じ。

壮大なオーケストラ音楽のなかでキリンがずっと砂漠を走るとか、そのキリンが彼女らの想念や現在への橋渡しになったり。みんなが乗った地下鉄が突然ステージになってそこで彼女らのレヴューが始まる。ヘンではあるけど、1960~70年代前衛演劇の憧れに満ちてるよなあ。

田辺:・・・さて、それぞれのベストですけど、日本映画は上半期、大豊作なので難しいですね・・・。いつもは3人の総括で3本選んでましたけど、今回は1人3本にしましょう。僕は『コントラ』『くれなずめ』『猿楽町で会いましょう』かな。そしてこれからのキーパソンとしては、円井わんを推したい。

斉藤:僕は、『猿楽町で会いましょう』『街の上で』『海辺の彼女たち』かな。石川瑠華、金子大地、中田青渚というバケモノが出てきた。ここに円井わんを加えたら、なんだか現在を象徴する感じがするよな。

春岡:僕はじゃあ『すばらしき世界』『海辺の彼女たち』『いとみち』かな。で、これはよく見る俳優ではあるんだけど『街の上で』の芹沢興人や、『痛くない死に方』の柄本佑をあらためて評価したいね。

『すばらしき世界』

『すばらしき世界』 監督:西川美和
Blu-ray & DVD 2021年10月6日発売 ※レンタルDVD同時リリース
発売・販売元:バンダイナムコアーツ
(c) 佐木隆三/2021「すばらしき世界」製作委員会

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