2020年上半期に見逃していない? 観るべき洋画の評論家鼎談

『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』
「ヒトラーとか目新しいネタではないけど、やっぱりセンス」(斉藤)
斉藤「『ジョジョ・ラビット』は、いやぁ、素晴らしかった! タイカ・ワイティティ監督は日本ではマーベル映画の監督と思われてるでしょ?初期作は東京国際映画祭で1本上映されたくらいで。でも、どれも本当におもしろいのよ。今回のオタクの男の子と女の子の設定なんかも、彼の原点のような感じで変わってなくって」
田辺「今回もそうですもんね。ヒトラーオタクの少年と、ユダヤの女の子。オープニングではビートルズ『抱きしめたい』のドイツ語版が流れるけど、ヒトラーという存在をまさにビートルズ的なアイドル/偶像の熱狂に重ねていく。そもそもビートルズってドイツですさまじい数のライブをやっていて、力をつけたバンドですし」
斉藤「でも始まってしばらくは、ナチの時代の話じゃなくて、現代のネオナチ一家の話だと思ってた」
田辺「そうなんですよ。だって、ビートルズが流れるワケですから、まさか世界大戦下の話だとは思わない。そしたら「あれ? これは違うぞ」って。その理由が、少年らにとってのポップスターの話なんだって分かって、なるほどと。ほかにも、ユダヤ人の女の子が「自由になったら外で踊りたい」と言って、いざそういう状況になったら、流れるのがデビット・ボウイの『ヒーローズ』のドイツ語版。物語との関連性も含めて選曲センスが良い」

斉藤「衣装設計も抜群。特にスカーレット・ジョハンソンの衣装ね。その設計だけで悲劇とかを見せていく。本当に上級な映画なんですよ。ヒトラーとか決して目新しいネタではないけど、やっぱりセンスなんだよね」
春岡「ユダヤ人の少女をかくまっていたとかも、一番ありきたりな手なんだけど、ナチスシンパな子どもを抱えるお母さんがそれをやっていて、その息子と少女と出会っちゃって、どんどん少年が心変わりしていくとか。そんなストーリー性は、俺は正直どうでも良いんだけどさ、でも映画としておもしろくできている」
田辺「スカーレット・ジョハンソンが吊されているシーンのカットも、足だけでね。あの撮り方と描写は、悲しいシーンだけど品がある。しかもその前のシーンが賑やかだから、落差がね」
春岡「役者でいえばサム・ロックウェルが泣かせる。『バイス』(2019年)のジョージ・ブッシュ大統領役も良かったけどさ。ジョジョを突き放すシーンも、全部状況が分かった上でやっていて、変わり者かと思いきや実は真っ当であり、大人な兵士なんだと。それが良かった」
斉藤「タイカ・ワイティティは『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』(2015年)みたいなオタク的なパロディもいいんだけど、やっぱり『ジョジョ・ラビット』が本流。マーベルが見出したのは、彼のニュージーランド時代の作品。DVDでもいいからちゃんと出してほしいな」
田辺「ニュージーランドといえば、出身のピーター・ジャクソン監督の戦争ドキュメンタリー『彼らは生きていた』もちょっと触れておきたいです。戦地へ向かう若者たちのメンタリティの変化。あとあの映像ですよ。正直、これを観たら『1917』は「うーん・・・」ってなりました」
斉藤「そうなんだよ。ピーター・ジャクソンはもともとこういう手法が上手いよね。『光と闇の伝説 コリン・マッケンジー』(1996年)というフェイクドキュメンタリーも撮っていたけど、実は今回はそのテイストなんだよね」
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