2020年上半期に見逃していない? 観るべき洋画の評論家鼎談

2020.7.26 17:15

『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』

(写真6枚)

今年は新型コロナウイルスの影響で、映画館の休業や公開延期など、新作を観る機会が失われてしまっていた上半期。上映された作品数は少なかったかもしれないが、観ておくべき作品は多数。

数々の映画メディアで活躍し、本サイトの映画ブレーンである評論家 ── 春岡勇二、ミルクマン斉藤、田辺ユウキの3人が、「ホントにおもしろかった映画はどれ?」をテーマに好き勝手に放言。今年、見逃したくない2020年・上半期公開の外国語映画を厳選しました。

文・編集/田辺ユウキ

「ポン・ジュノ映画の見慣れた手法が多く、驚きは・・・」(田辺)

田辺「劇場公開も延期され、マスコミ試写もなくなり・・・という状況だったので、各配信サービスのオリジナル映画を自宅で観ていたんですけど、そのなかでもNetflixの『アンカット・ダイヤモンド』がメッチャおもしろかったです」

斉藤「アダム・サンドラーって今やNetflix俳優だよな?」

田辺「コメディアンでもあり、脚本家でもある彼らしい芝居でありながら、でも新味もあるという。金目のものはすぐに質屋に入れたりして、横流しの果てに人生が詰んじゃってる男なんですけど。で、アダム・サンドラーがことあるごとにボッコボコにされちゃうんですよね(笑)」

斉藤「アダム・サンドラーはほかにも『マーダー・ミステリー』が上半期に当たっているし、本当に大した映画作家だよ。あと上半期のトピックスはアカデミー賞作品賞、監督賞の『パラサイト 半地下の家族』か。内容は確かにおもしろい。だけど、ポンちゃん(ポン・ジュノ監督)のベストワークではないよね。カンヌ映画祭でも、『殺人の追憶』の時点でパルムドールを獲って当たり前なのに、遅いよ」

春岡「そうなんだよ。『殺人の追憶』(2003年)か、もしくは遅くとも『母なる証明』(2009年)なんだよね。『殺人の追憶』はクエンティン・タランティーノも当時のベストワンだって言い続けていたし」

斉藤「すでにデビュー作の『ほえる犬は噛まない』(2000年)から映画史に残る監督になるかも、って天才を感じさせたしなあ。そんなポン・ジュノにしては、『パラサイト』はちょっと図式的かな」

ポン・ジュノ監督による『パラサイト 半地下の家族』ⓒ 2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED

田辺「パーティでの混乱シーンも『グエムル 漢江の怪物』(2006年)などでやっている画づくりだったり、ポン・ジュノ映画の見慣れた手法が多いので、とてもおもしろいけど、驚きではないんですよね」

斉藤「そうそう。階級闘争の話は『スノーピアサー』(2013年)でやっていてね。あれはJ.G.バラードの小説『ハイ・ライズ』(1975年)だと俺は思っているのよ。あっちは格差が縦に伸びる話だけど、『スノーピアサー』はそれを横にした内容で」

春岡「『パラサイト』では、ヒエラルキーの話を階段や地下も含めてやった。でもその前に『スノーピアサー』でフラットな一列の状態ですでに描いていた。で、棲みついた豪邸の地下に降りたら主人公家族と同じような人たちがいて、同病相憐れむ状態というか、弱い人間たちが骨肉相食むみたいななかで闘ってしまう。その苦しさなんだよね」

斉藤「『グエムル』も完全に反米闘争の学生運動の物語だった。そういうところも踏襲している。なんだかんだ言って、ジャンル映画のなかに落とし込むことがやっぱり映画のおもしろさだって言うことを一番分かっているんだよね。そうしないと誰にも通じないし、そんなイデオロギーの話をやってもつまんねぇじゃんって」

春岡「おもしろい映画としてやったけど、実はイデオロギー映画で、全然それで良いんだって」

斉藤「『パラサイト』でいうと、美術とあの家屋の設計はお見事だった。1階の本棚の真ん中にラックホールのような謎の空間があってね。1階の窓の向こうには、子どもが巣ごもりするテントが張っていて・・・」

田辺「その灯りで、夫婦がセックスをおっぱじめるという(笑)そんな『パラサイト』と同じように壁裏の住人が登場する傑作が、『ジョジョ・ラビット』ですよね」

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