エールで見る「売れる音楽を作る才能」木枯と裕一の違い

2020.6.2 19:15

第33回より、夜のカフェーにやってきた木枯(野田洋次郎)と裕一(窪田正孝)(C)NHK

(写真24枚)

「木枯(古賀)の名曲『影を慕ひて』の史実」

いっぽう裕一は、21曲連続不採用。同時期に入社し盟友となった木枯正人も19曲連続不採用。共にプロフェッショナルの職業作曲家としていまだに実績を挙げていない。思いどおりにいかず傷ついたプライドを舐めあうふたりだが・・・、先に木枯の『影を慕ひて』がレコーディングされるのだ!

周知のように『影を慕いて』は昭和歌謡を代表するくらいの名曲だが、史実はもうちょっとややこしい。木枯≒古賀政男は以前この曲を、古巣である「明治大学」マンドリン倶楽部の伴奏でもって日本ビクターでレコーディングしているのだ(しかも作曲に至る由縁には、失恋による自殺未遂などという物語もある)。

ただしまったく売れなかったらしいが、それに目をつけたのがコロムビアレコードの営業マンで、それで古賀はコロムビアに入社したようだ。

連続テレビ小説『エール』公式サイトより、カフェーで弾き語りをする木枯のメイキング映像
連続テレビ小説『エール』公式サイトより、カフェーで弾き語りをする木枯のメイキング映像

ドラマでは、これが最初はA面仕様だったのにB面扱いとなり、ふてくされた木枯が行きつけのカフェー「パピヨン」に裕一を誘うことに。ママを演じるのは、監督・塚本晋也の傑作『六月の蛇』(2003年)のヒロイン・黒沢あすかだ。

恋愛に関する世のなかの機微においてはほとんど童貞と変わりない裕一が、福島のダンスホール以来接する「風俗」である。実はこのあたりが流行歌には一番大事で、木枯は女給と客とのやりとりに「生々しいだろ。ここに居ると曲が湧いてくる」と自らギターを持って『影を慕ひて』の原型バージョンを弾き語るのだ。

これ、後年の美空ひばりの歌唱や、古賀政男自身の歌唱(なんとYouTubeで聴けます)を聴き慣れてると、いわゆる演歌調のこぶしがなくて平坦に聴こえてしまう。しかし別に野田洋次郎が歌うからというのではなく、楽譜に書かれたもともとはこういうものであった。

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