消しゴムカスのアート作家が神戸で個展

2019.11.28 07:00

本展の主人公たち。背景のダンボールや台座の商品箱を消しゴムでこすリ、カスを作品素材にする。サイズは天地約20センチ

(写真6枚)

「兵庫県立美術館」(神戸市中央区)の注目作家紹介プログラム『チャンネル』。10回目となる今回は、広島を拠点とする若手作家、入江早耶がピックアップされ、個展がおこなわれている。彼女は消しゴムカスを素材に立体作品を制作するユニークなアーティストだ。

入江が題材にしたのは、神戸市東灘区と灘区にある3つの古墳(処女塚古墳、東求女塚古墳、西求女塚古墳)と、それにまつわる悲恋伝説「菟原処女の伝説」。伝説ではひとりの女性を巡って2人の男性が争い、ついには3人とも死んでしまう。本展はその令和版と言うべき新たな物語である。

展示作品と作家・入江早耶。1983年岡山市生まれ。関西での個展は初めて

ホワイエの壁に記されたテキストに沿って展示室に入ると、そこにはダンボール製の二つの箱と一つのパネルがあり、それぞれの中央に3体のフィギュアが展示されている。2人の男性は古代の兵士と毘沙門天、不動明王の掛け合わせで、女性は千手観音とアニメの美少女戦士が融合した姿だ。それらはダンボールの表面を消しゴムでこすったカスで作られている。色付きの部分は着色ではなく、ダンボールの印刷部分をこすって色付きカスにする手間の掛けようだ。

入江が創作した本展のストーリーでは、スポーツやゲームで勝負がおこなわれ、最後は誰も死なずにハッピーエンドを迎える。つまり原作とは異なるわけだが、古代の悲恋伝説が現代に受け継がれるのは意義深いことだ。なお本展では、館内のコインロッカーと美術情報センターにも入江の作品が展示されている。こちらもお見逃しなく。会期は12月22日まで、入場無料。

取材・文/小吹隆文(美術ライター)

『注目作家紹介プログラム チャンネル10 入江早耶展  純真(ロマンス)遺跡~愛のラビリンス~』

期間:2019年11月23日(祝・土)~12月22日(日)※月曜休 
時間:10:00~18:00(金土曜~20:00 ※美術館情報センターは〜18:00)  
会場:兵庫県立美術館 ギャラリー棟1F アトリエ1、ホワイエ、美術館情報センターほか(神戸市中央区脇浜海岸通1-1-1 HAT神戸内)
料金:無料
電話:078-262-0901

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