なぜ紅茶の聖地に?ムジカの三代目が語る
脈々と受け継がれる思い、聖地たる理由とは
6年ぶりに再開した喫茶部門は、トーストの種類が増えたぐらいで、堂島の喫茶時代とメニューにほとんど変化はない。今のご時世に合わせて・・・、たとえばMUSICA流のタピオカミルクティーなんてかなり上質で評判になりそうなものができそうですが? と聞くと、堀江さんは「うちの昔からのお客さまは、フレーバーティーでも嫌がる人が多いから、受け入れられないでしょうねえ」と笑う。
「やっぱり長くお店を継続させるには、オーソドックスなのが一番いいんですよ。流行に乗るのではなく、ずっと同じスタイルでやっている所は、お客さまにとってはいつ来ても安心できると思うので。もし『saloon』が定食やタピオカを出したりしたら『MUSICAって変わったね』ってなりますよね? ブームに合わせて簡単に変わったら聖地ではなくなる。いつ来ても『これこそMUSICAだ』と思ってもらえることが、重要なポイントなんです」とも。
その一方、堂島時代から20~30種類ある茶葉のラインアップに大きな変化はないなか、数少ない新商品が「芦屋プラウド」。安価で気軽に楽しめる看板商品「堂島ブレックファースト」に対し、ポットの1杯目と2杯目で香りと味わいが大きく変化する、少しセレブな紅茶だ。このお茶には「芦屋」を新しい聖地にすることへの、堀江さんの強い思いが込められている。
「昔より紅茶が飲まれるようになったとはいえ、日常的に飲む人は、まだ日本人全体の10分の1にも満たない。でもそれは、本当においしい紅茶にめぐりあってない人が多いから。実際この店をオープンしたときも、コーヒーばかり飲んでたという人が『紅茶ってこんなにおいしかったんや』って、立て続けに来てくれたんですよ。せっかく芦屋に来たわけだし、ここから少しずつ街に浸透して『MUSICAっていう紅茶のおいしいお店が、芦屋にあるらしい』となってくれたら。MUSICAによって、芦屋のブランドイメージがさらに上がった、ということになればいいなあと思います」とさらなる夢を語った。
この日の取材中、「MUSICA」名物のスパイスティーを煎れてくれたのは、堀江さんの娘・真彩子さん。茶葉の販売店で2年間働いてたというだけあり「渋みが苦手なら、キャンディ(の茶葉)がいいですよ」と、サラッとオススメが出てくるなど、すでに父親や祖父、曽祖父と同じように、立派な紅茶道へと足を踏み入れている。堂島から芦屋に場所を変えても、聖地は「聖地」であり続ける。
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