恒例の評論家鼎談、邦画・勝手にベスト3

塩田明彦監督『さよならくちびる』の成田凌
「山戸結希監督は大林化してるとは思う」(斉藤)
田辺「いやあ、スゴかったですね。ストーリーは謎な展開も一部あったけど、映画として面白かった」
斉藤「そのへんは、原作がそうなってるから、って感じやったな。だって、なぜそうなるのかまともに考えるとわからんシーンが結構あるし。でもそんなのどうでもいいという気にさせる圧倒的な推進力がある」
田辺「ただ、勢いで持ってかれましたね。あの言葉数と速度は、山戸監督の真骨頂だし」
春岡「大林宣彦監督みたいなスピード感になってるんじゃないの?」

斉藤「たしかに、山戸監督は大林化してるとは思う。(山戸監督がプロデュース・企画した)『21世紀の女の子』も完全に大林ぽかったし。いや、それは全然いいのよ。だって大林映画って真似しようと思っても絶対に無理なんだし、それは精神的・詩的に似たものがあるんだと思う」
田辺「ホント、素晴らしいですよ」
斉藤「あのアパートの造形とか驚いたよな。どこで見つけてきたんやって。その造形に惚れ込んで、ガンガン建物を映しこんでまるで主役級」
春岡「そういえば、故・黒川紀章が提唱してた建築運動(メタボリズム)があったよな。カプセル型の集合住宅とか(中銀カプセルタワービル)、ああいった建築を思わせる集合住宅だったな」
田辺「その建物を使って、ものすごい無理のある角度からふたりをしゃべらせるという(笑)」
春岡「鈴木清順監督みたいな」
斉藤「清順さんは、高低差大好きで、不自然なくらいの上と下で、高低差で会話させるけど、山戸作品にもよくあるね。山戸映画は言葉も磨かれてるのが魅力だけど、やっぱり画に運動性があるのよ」
春岡「山戸監督はいま、撮る度にうまくなっている。好き嫌いでいえば、前作『溺れるナイフ』(2016年)の方が好きだけど、作品のクオリティは高くなってる」
田辺「あと、やっぱり編集のスピードがすごい。リズム感が抜群に気持ちいい」
斉藤「最後のシーンなんてまさにそうやけど、ジャン=リュック・ゴダール的な映像と音の音楽的なコラボレーションで盛り上げるのは圧巻よね。セリフの間も編集して」

田辺「あと、解散ツアーで全国を巡る音楽デュオ・ハルレオと、ローディー・志摩との三角関係を描いた塩田明彦監督の『さよならくちびる』も素晴らしかった」
斉藤「音楽映画としても、ちゃんとした作りになってるよね。やっぱり、主演の2人が歌う曲に、秦基博とあいみょんを連れてきたのは大正解。僕の趣味かどうかはともかく(笑)、リアリティがある。と同時に、ロードムービーとしても成立しているしね。塩田監督の『カナリア』(2005年)を思い出した」
田辺「完全にバンドのツアードキュメンタリー映画ですよね。テロップの出し方とか。ライブハウスのとかもそうやし」
斉藤「それに、門脇麦が演じるハルのレズビアン的な性向、その扱い方が非常に慎ましやかで、でも、はっきりと分かるという。さすがうまいよね。塩田監督は、サラッとそういうことができる」
春岡「で、ここでもやっぱり成田凌が良い仕事してるんだよね」
田辺「そうなんですよね。ちゃんと3人の関係性をつないで、小松菜奈に迫られて一瞬グラッときそうやけど、いやダメだから!って拒否したりして(笑)」
春岡「それやっちゃったら、関係性が壊れるから。でも関係がどうこうじゃなくてあいつは実は門脇が好きなんだから、やりたいけどやっちゃダメ、って言い聞かしてる」
田辺「僕、あそこが好きなんですよ。ホームレスに肩をもまれるシーン」
春岡「あれ、スゴいよなー! あれを入れる塩田監督はさすがだわ」
田辺「ホステスがもまれてて、で、もう一度振りかえったら、小松がもまれてるっていうね。あそこのシーンがあるとないとでは全然違いますからね」
斉藤「『さよならくちびる』もちゃんと恋愛映画になってるんですよね」
春岡「恋愛映画の基本だよ、三角関係というのは」
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