恒例の評論家鼎談、邦画・勝手にベスト3

2019.8.3 18:00

塩田明彦監督『さよならくちびる』の成田凌

(写真12枚)

「人の死で感動したの、久しぶりでした」(田辺)

田辺「僕はあと、阪本順治監督の『半世界』を推したいです」

春岡「あれは良かった!」

田辺「ですよね! ほかに誰もトップに挙げないなら、自分が1位に推したいくらいなんですけど」

斉藤「僕的にはそこまでじゃないけど、近年の阪本作品・・・どころか今まででナンバー1じゃないかな」

田辺「主人公がほとんどなにもしない、動かない、そして文字通り、最後は動かなくなる。人の死で感動したの、久しぶりでした。なにもしない主人公を稲垣吾郎がうまく演じているんですよ」

【関連記事】稲垣吾郎「近鉄線にすごく愛着が湧いた」

斉藤「キャストは少数なんやけど、全員ばっちりハマってて。池脇千鶴がやっぱりうまいのよ」

田辺「あと、主人公の自宅に同級生役の渋川清彦が押しかけて来て、昔話をしようとするんだけど、稲垣が『ごめん、今からセックスなんだ』ってのがまた最高で(笑)」

春岡「稲垣と池脇がやろうとしてるところに、ピンポーンってインターホンが鳴って、渋川がやってくるっていう(笑)。『早く帰れよ』とか言って、『いや、これからセックスなんだよ』、『あっ、それは申し訳ない』って。そんなこと言われるかってのもあるけどさ(笑)」

田辺「あと、自衛隊員として海外派遣から帰ってきた長谷川博己の格闘シーンも素晴らしくて。ヤクザ的な奴らの腕を折るっていう」

斉藤「長谷川さんにインタビューしたとき、そのシーンの話をしてさ。村川透監督の松田優作主演映画『野獣死すべし』(1980年)を思い浮かべたって言ったら、長谷川さんがすごい喜んでた」

春岡「えー、そうなの? 長谷川って、優作ファンなの?」

斉藤「どうやらそうらしい。まあ、どっちもPTSDの話やし、いきなり凶暴性が目覚めるところが。帰還した自衛隊員にも話をいっぱい聞いたと」

映画『半世界』のワンシーン(左から渋川清彦、稲垣吾郎、長谷川博己)

春岡「なにかのきっかけで、自分にはわからなくても体が動いちゃうっていう。あれは見事だったよね。でも、それで松田優作を思い出したって言ったら、長谷川は喜んだ。いい話じゃないか」

斉藤「でも最後のシーンの、バスに乗ったときの『ここが全部の世界じゃないんだ』ってセリフはいらんと思うけどね。長谷川さんも無い方がいいんじゃないですか、と監督に言ったらしいけど」

春岡「プロデューサーの椎井友紀子さんがやれって言ったんじゃない? あれは映画を観たら分かるわけだから。わざわざセリフで分からせるようじゃダメなわけだから」

田辺「とはいえ、僕は久々に阪本順治監督の作品にグッときましたね」

ガレッジセール・ゴリこと、照屋年之監督を囲む映画座談会

斉藤「あとは、ゴリこと照屋年之監督の『洗骨』。まあ、この映画は3月にたっぷりやったから、そっちを読んでもらうとして」

【関連記事】「洗骨」の映画人・照屋年之に迫る/前篇

春岡「監督を交えて、5時間しゃべったからね。とりあえず、ここでも良かったことは言っておかないと」

次頁:「今年いちばん『映画的な映画』やった」

  • LINE
  • お気に入り

関連記事関連記事

あなたにオススメあなたにオススメ

コラボPR

合わせて読みたい合わせて読みたい

関連記事関連記事

コラム

ピックアップ

エルマガジン社の本