恒例の評論家鼎談、邦画・勝手にベスト3

2019.2.16 18:00

映画『カメラを止めるな!』© ENBUゼミナール

(写真9枚)

「あれは完全に吉田恵輔監督のオリジン」(斉藤)

春岡「俺は、吉田恵輔監督の『愛しのアイリーン』と、身贔屓で申し訳ないけど、やっぱ大阪芸大の後輩・山下敦弘監督の『ハード・コア』だな」

田辺「それはもう、同感ですよ」

春岡「『愛しのアイリーン』の木野花は、ちょっとびっくらこいたわな。やればできる人とは知ってたけど」

斉藤「その通りよね。でも僕、後から原作読んで、内容がまったく一緒やったのにビックリした。あれは完全に吉田恵輔監督のオリジン(原点)で、やっぱりあれをやっとかなきゃ次のステージに進めないくらいの作品だったんだろうな、と」

春岡「俺はもう、久々に伊勢谷友介に感動した」

斉藤「よかったよなあ。ホントはもっといっぱい撮ったらしいけど、がっつり切ったとか。でも、あれだけで伊勢谷の役割は十二分に発揮されてるよね。あの役は新井さんの原作とは全然違うんだけど、素晴らしい改変で」

春岡「映画版の方がいいよ。フィリピン人とのハーフで、おふくろの苦労をずっと見てて差別されてきた人間だから、主人公・アイリーンに『お前の気持ちはよくわかるんだ』って。あれ、すごい説得力あるもんな」

斉藤「あそこだけは残したらしい。もっと撮ったけど、説明的になっちゃうんでバッサリ切ったって」

春岡「いや、もう伊勢谷なんて切ったっていいんだよ、そもそも存在感めちゃくちゃあるんだから。あれだけで十分だよ」

映画『愛しのアイリーン』© 2018「愛しのアイリーン」フィルムパートナーズ

田辺「あそこから、主人公・岩男が変わってくるってシーンですから。彼が出てきて出会うからですよね」

春岡「毎回同じような感じで出てるけど、河井青葉がいて、伊勢谷友介がいて、あと主役たちがいて、でも全体に木野花がのしかかってるからさあ。すごい映画じゃん」

斉藤「木野花が連れてくる女がまたダメダメで最高なんだ(笑)」

春岡「いいよね! あれ誰? 劇団の子?」

──桜まゆみですね。安田顕演じる主人公・岩男と見合いさせられる女性・真嶋琴美役。

斉藤「うん、桜まゆみ! 同じ新井英樹原作で、真利子哲也監督が撮ったテレビドラマ『宮本から君へ』にも出てるの」

田辺「地味ですよねぇ!地味だけど、なんかちょっと色気がありましたよね。あと僕も、『ハード・コア』は挙げておきたい1本ですね」

春岡「山田孝之が、ロボ男に『ああ、お前出てきちゃダメじゃん!ユーアー!ノットヒューマン!あなたロボットですよ!』ってめちゃくちゃ面白かったよね」

田辺「山田孝之プロデュースなんですよね」

春岡「もう好き勝手やってるよね。しかも佐藤健を自分で口説きにいって、佐藤健も山田孝之の弟役ならと、2秒で出演を決めたって」

斉藤「でも、健くんが映画をグッと締めたよな。ストーリー自体はグダグダだし収拾つかなくなるところをかろうじて」

春岡「あいつだけ真っ当ってことになってたけど、実はでも佐藤健なんかはアニキに憧れてんだよな。できればああいう生き方をしたいと思っていて。あと、原作とはちょっと違うらしいけど、あの結社の連中(首くくり栲象、康すおん)が、また山下監督の味付けでめちゃくちゃ上手いじゃない。あと、康すおんの娘役がめちゃくちゃいいんだ」

田辺「あれ、すごいですね! あのヤリマン(笑)。私は勘違いされがちなの、みたいなこと言って」

斉藤「多恵子役の石橋けいやろ。山内ケンジの映画やCMで最高なのはよく分かってるけど、この映画では見事にハマってたなあ」

田辺「劇中でも、弟役の佐藤健が言ってますけど、『美人でもなく不美人でもなく、ああいうタイプが一番厄介なんだよ!アニキの手に負える女じゃない!』って(笑)。もう名言ですよね」

春岡「(脚本は)向井康介だから、やっぱり。『ハード・コア』と『愛しのアイリーン』とは、きっとこの鼎談でしか評価されない・・・と言うと申し訳ないけど、ぜひとも挙げておきたい」

田辺「ですね!」

  • LINE
  • お気に入り

関連記事関連記事

あなたにオススメあなたにオススメ

コラボPR

合わせて読みたい合わせて読みたい

関連記事関連記事

コラム

ピックアップ

エルマガジン社の本