「誰も本当に愛してくれないのだったら･･･」（土屋太鳳）

──でもテレビやＭＶで太鳳さんのコンテンポラリー・ダンスの素晴らしさは承知していたのですが、それにしても鬼気迫っていました。

いえいえ（苦笑）。Ｓｉａの『Ａｌｉｖｅ』のミュージックビデオで振り付けしてくださった辻本（知彦）さんが、今回の映画でも振り付けしてくださったんです。最初はもっとキレイな踊りになる予定だったんですけど、徐々に振り付けが変わっていって。サロメちゃんはお姫様なんですけど、「お姫様だからこれしちゃダメ、これしなさい、これ習いなさい、あの人に近づいちゃダメ、お前はここで踊れ」とか、ある意味檻のなかに入れられているというか。



──なるほど、そういうことでしたか。

ニナや累と同じように、本当の自分を受け入れてくれる人を求めていたとき、預言者ヨカナーンに会って、「あの人なら」と思ってすごい勢いで近寄っていくんです。誰も分かってくれない苦しさみたいなものを表現するなら、キレイな踊りじゃダメだな･･･。どこかこう、汚い踊りというか、意地でも絶対に幸せになりたいという感情を入れたいなと思って、結果、激しい踊りになったんですけど。ニナも累もサロメちゃんも、誰も本当に愛してくれている人がいないのだったら、私が全力で受け止めてやると思って演じていました。

──難しいといえば、そもそも芳根京子さんとの２役というのが大変ですよね。正直、芳根さんが最初に登場されたとき、しばらく太鳳さんだと思い込んでたくらいで。思いのほか、風貌が似ていますね。

いや～、申し訳ないです（苦笑）。きょんちゃん（芳根京子）はキレイなので。完璧に似せていました。髪の毛の感じも同じ形のウイッグですし、ぐっと似せてましたね。

──それもちょっと騙し絵っぽくて面白かったんですけれども、資料を読ませていただくと、浅野忠信さんに勧められて芳根さんと交換日記をしてたとか。

お互い感情の幅も、（役の）受け取り方も違うし。喧嘩中も感情が激しいままキスして入れ替わるので、お互いの感情を並行して入れ替わらなければいけないんですよね。「これ、どうしようかなぁ･･･」と思って浅野さんに相談したとき、「こんな面白い役ないから、２人でノート作りなよ」と言ってくださったんです。大学ノート買ってきて、「ニナ・累ノート」というのを作って。２人で「このシーンのときはこう思った」って書くようにしました。２ページで終わってしまったんですが（笑）。

──あ、そうなんですか（笑）。

はい、２ページで（笑）。でも、そのノートを作ったということが、自分たちのなかで心が通じ合った瞬間でした。だから、すごく意味はありました。

──お互いのなかで、ひとつの回路が出来たような？

はい、そうです。監督がすごく的確なアドバイスをくださる方だったので、それにいち早く反応出来るのが勝負だなと思っていました。