若き名匠・白石和彌監督を徹底解剖(1)

2018.5.18 19:00
(写真6枚)

「儚さを持っていて欲しいんですよね」(白石和彌)

田辺「白石映画を観て、白石さんの好みの女は出てるんだろうか、なんてことを考えてたりするんですけど(笑)、実際どうなんですか?」

白石「僕の女性の好みは、極めて行定勲さんと近くて。まず歯並びが悪い。短足、ブス(笑)。で、幸は薄い方がいいと。そういう意味でいうと、映画にはなかなか出てはこないかな」

斉藤「行定さんは公言してるからね。ブス専門もそうだし、胸より尻とか(笑)」

田辺「幸薄そうといえば、『ロストパラダイス・イン・トーキョー』に出てた内田慈もそうですよね」

白石「自分で女性を描いてて思うのは、やっぱ蒼井優ちゃんが『彼女がその名を知らない鳥たち』でやったビッチとか、もしくは聖なる娼婦、たぶん、『孤狼の血』の阿部純子もそういう意味で言うとそうで。『牝猫たち』も娼婦だし、『人間昆虫記』も聖なるビッチというか、あれはもう全部入ってるんですけど」

白石監督がメガホンをとった、日活ロマンポルノ・リブート・プロジェクトの『牝猫たち』 © 2016 日活

春岡「そうなれば、神代辰巳監督より、田中登監督の芹明香になっちゃうんだね」

白石「そうですね。そっちに惹きつけられているんだろうと思います。自己分析ではなく、スタッフに言われたんですけど、『もっと普通の女性を出してくださいよ』って(笑)」

斉藤「神代映画の女性が持つ生のたくましさ、とはちょっと違う」

白石「儚さを持っていて欲しいんですよね」

春岡「まず歯並びが悪い、というのがいいね(笑)」

白石「でも、なかなかキャスティングできないんですよね。歯並びが悪い女性というのは。ていうか歯並びの悪い女優さんというのがなかなかいない(笑)」

斉藤「歯並び悪いと、行定さんとか喜んで映すもんね(笑)」

白石「大好きですからね」

斉藤「そういうフェチなところが、俺は好きなんだよなぁ」

白石「行定監督の助監督をしていた時代、まず気が合ったのがそこだもん(笑)」

斉藤「極めてセクシャルでフェティッシュな監督やもんね」

春岡「基本フェチじゃなきゃ、女性を撮ったときキレイに撮れないよ。それは清順さんにしたって、山根さんにしたって、神代さんも田中さんもそうで。そういった意味で、案外深作さんよりいいかもしれないよ?」

白石「整いすぎていると、濡れ場とか撮ってても楽しくないすよね。個人的な性癖かもですけど(笑)」

春岡「いや、ホント、そうなんだよ。キレイな人って、あの角度で見たときに、だいたいブサイクに見えるんだけど、はじめからブサイクな人の方が、絵として良くなるんだよね。まあ、こんなことは書けないだろうけど(笑)」

田辺「『凶悪』のインパクトがスゴかったからか、白石作品といえばバイオレンス面が取り上げられがちですけど、そうじゃないですよね。メンタルと同時に、ちゃんと肉体を肯定して撮ってますよね」

白石「そうですね」

「映画には必ずおっぱい要員がいます」と白石和彌監督

春岡「世間では、白石作品がバイオレンスって言われるんだから不思議だよね」

田辺「人のメンタルと同時に、フィジカルもちゃんと描いているのは、ずっと一貫してますよね」

春岡「肉体を全然否定してない、当たり前だけど。でも、それはすごく大事なんだよ。最近は妙に遠慮してるような作品が多いんだけど」

白石「全然、否定なんてしてないです」

春岡「やっぱり映画で肉体を描かないなんて、どうするんだっていう」

白石「そうですよぉ」

斉藤「おっぱい出してナンボやから(笑)」

白石「むしろ描きやすくなってますよね、俺がやってると(笑)。映画には必ずおっぱい要員がいますから」

春岡「肉体をちゃんと肯定して、撮ってるよね」

白石「もちろんです。その営みで歴史が出来ているわけですからね」

春岡「映画なんて、そこ描かなきゃどうするんだってもんだからね」

(第2弾へ続く)

映画『孤狼の血』

2018年5月12日(土)公開
監督:白石和彌
出演:役所広司、松坂桃李、真木よう子、江口洋介、ほか
配給:東映

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