豊作だった上半期・外国映画、下半期は?

2018.4.8 18:00

映画『パーティで女の子に話しかけるには』 © COLONY FILMS LIMITED 2016

(写真3枚)

2017年・上半期は『ムーンライト』『ローガン』『パトリオット・デイ』など、豊作だった外国映画。その勢いは下半期も続くのか?数々の映画メディアで活躍し、Lmaga.jpの映画ブレーンである評論家 ── 春岡勇二、ミルクマン斉藤、田辺ユウキの3人に、下半期に公開されたベスト外国映画について、語ってもらった。

「ゲロ吐きながらキスなんて最高でしょう!」

──上半期でベスト3に挙げた映画は覚えてますか?

田辺「僕は『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』『ローガン』、それと『メッセージ』ですね」

斉藤「僕は『お嬢さん』『人生タクシー』『パトリオット・デイ』だった」

──春岡さんが、『沈黙−サイレンス−』『マンチェスター・バイ・ザ・シー』『ムーンライト』でした。

春岡「すげえ、大作揃いじゃん」

斉藤「うまいこと譲り合ってるし(笑)」

田辺「でも、僕の下半期は完全にミルクマンさんと被ると思う。今のところ『ベイビー・ドライバー』『パーティで女の子に話しかけるには』、そして『ノクターナル・アニマルズ』がトップ3になりそうなので」

斉藤「わぁ・・・じゃあ僕は何にしようかな~、それはそっちに譲るわ」

田辺「僕としては、『パーティで女の子に話しかけるには』をベスト1に挙げたいんですよね」

斉藤「最高やもんな。こないだ行定勲監督と飲んでたときも、それで盛り上がって」

田辺「ですよね!オープニングの5分で、なんか変質的な映画みたいになって」

斉藤「だって、ジョン・キャメロン・ミッチェルやもん」

春岡「俺、観てないんだよ。キャメロン・ミッチェルって知らなかったから」

田辺「そう、だから明らかに変なのは分かってたけど、最初の5分くらいは70年代のパンクに感化されたような、疾走感のある青春映画なんですよ。『あれ、パンク青春映画でも始まるんかな?』と思ったところで、180度どころか、何回転もしまくって新しいウェーブの話になっていく」

斉藤「あのスピンしまくっていくのが素晴らしいんだよね! 基本的には80年代の『リキッド・スカイ』(1985年)みたいなネオン世代を思わせるヴィジュアルなんだけど、ソール・バスの『フェイズ IV/戦慄!昆虫パニック』(1974年)みたいなサイケなラブシーンがあったりね」

田辺「だんだん変態的になっていくんだけど、描いている愛にすごくキュンとくるという」

斉藤「ゲロ吐きながらキスなんて最高でしょう! 今の年齢のエル・ファニングの、ロリータぎりぎりの魅力がめっちゃ分かってるやんって」

田辺「そう。好きな相手であればゲロすらも愛せるという。宇宙人との異文化交流もわかりやすくやるし、その相手を理解するってこともあるし、それでいて好きになっていくっていう」

斉藤「オリジナルパンクを支えたロンドンの労働者階級の風景がベースにあるしね。常にマイノリティを描くこの監督らしい」

春岡「やっぱりキャメロン・ミッチェルって、イギリスのそういうとこわかってる感じだよなぁ」

田辺「で、ラストは時間とか距離とかすべてを越えてもう一度再会して過去を思い出すという。主人公の男の子は、それを思い出して本を書きましたという」

──なんか『うる星やつら』みたいですね。

斉藤「ラムちゃんね。近いっちゃ近いかもしれん。文系の男の子がワケわからん女の子に惹かれていくという」

田辺「あぁ。言われてみたら、たしかにそうかも」

春岡「当時のイギリスの下層階級とか、貧乏なんだけど表現したくてモヤモヤしてるのが背景にあると、物語の深さがちょっと違うよね」

斉藤「原作がニール・ゲイマンだからね。『コララインとボタンの魔女』を書いた」

田辺「ただ、タイトルに惹かれてキュンキュンしたい!って劇場に行ったら、ヤバいもん観せられたみたいな雰囲気はありましたけど(笑)」

斉藤「僕はキュンキュンしたけどなぁ、思いっきり」

田辺「僕もそうですけど、劇場に来てた人は明らかに『思ってたんと違う!』みたいな(笑)」

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