豊作だった上半期・外国映画、下半期は?

2018.4.8 18:00

映画『パーティで女の子に話しかけるには』 © COLONY FILMS LIMITED 2016

(写真3枚)

「トム・フォードは複合的なアーティストという感じ」

斉藤「美学的にも叙述的にも面白い。物語を紡ぐ方とその対象となる方の思いが微妙にすれ違ったまま、だんだんすり合っていくという重奏するエクリチュールこそスリリングで。でもそこに流れる思いは恐ろしくドス黒い(笑)」

春岡「『ノクターナル・アニマルズ』はもっともっと評価されて良いと思う」

斉藤「僕は1作目の『シングルマン』(2010年)ももっと評価されて欲しい。トム・フォードって、やっぱスゲえんだよな」

田辺「ファッションデザイナーとしても一流だけど、映画監督としてもとんでもなくスゴいと思う」

春岡「監督業に手慣れてきたよな。『シングルマン』も抜群に面白かったけど、あれは逆に言うと新人らしい良さがあったもんね」

斉藤「自分の性癖に近いもんがあったしね」

春岡「それが今回のは完全にプロだもん。職人として撮ってるんだけど、このレベルまで来るかよっていう」

田辺「ミステリーとしても最上級やったし」

春岡「『シングルマン』は自分の思考に走りすぎてて、それは新人らしい良さでもあり、でも、あそこまで洗練されちゃうと誰も文句言えないんだけど、今回のは自分の志向だけで終わらないスゴさがあったよね。あれはもう作家だよ」

斉藤「あの衝撃的なタイトルシーンを、観終わった後には忘れてるっていうスゴさ(笑)」

春岡「冒頭のパーティ・シーンなんて、久しぶりに反吐が出たわ。びっくりしたわ。なんてもん撮るんだっていう。今日日、美意識なんて言葉を映画のなかに当てはめていいのは、トム・フォードしかいないよ。クリストファー・ノーランもそれに近いけど・・・」

映画『ノクターナル・アニマルズ』 © Universal Pictures

斉藤「ノーランは、映画作家ですもんね。トム・フォードはもっと複合的なアーティストという感じがある。デヴィッド・リンチもそうだけど、そういえば今回はリンチの影響がかなり強い。リンチと言えばさ、WOWOWでやってた『ツイン・ピークス The Return』って観た?」

田辺「いや、観てないですね」

斉藤「アタマおかしい(笑)。30年前の前作以上にホンマ好き放題。今もって異端なんやけど、それでも映画史のなかにちゃんと居場所を作ってるがスゴいよな。本来なら『The Return』はベストに入れてもええけどな。外国の評論家は1位に入れてる人がおったけど」

春岡「リンチはそういうポジションでないと」

斉藤「1話で脱落する人が続出という(笑)。そら、そうやろ。ほとんどストーリーらしきものがなくて、ボーーってずっーーとノイズが響いて、ウォーーってなってるだけのやつが1時間続くんだし」

春岡「でも、トム・フォードってどこに行くんだろうな?」

斉藤「あれだけお話ができるのが分かっちゃったんでね。脚本も書けるし、演出もできるという」

春岡「普通の映画なんて撮らないだろうけど、あの『世界一美しい死体』って言い方も、リンチに似てるよね」

──じゃあ、ここらでまとめますか。

田辺「僕は、『パーティで女の子に話しかけるには』『ベイビー・ドライバー』、そして『ダンケルク』がトップ3で」

斉藤「僕は『ノクターナル・アニマルズ』『ベイビー・ドライバー』『ウィッチ』の3本」

春岡「俺は『パターソン』と『ゴッホ~最期の手紙~』、あとガル・ガドットに釘付けになった『ワンダーウーマン』

斉藤「ガル・ガドット様!」

田辺「眼福です!」

映画『ワンダーウーマン』 © 2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC
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