今週末、飲みたいワイン。第10回
カテゴリ:お酒
家飲みの日々が続くなか、偶然立ち寄った天満橋のワインショップ[salvis wine & records]で、お薦めのヴァンナチュール(自然派ワイン)の複雑な味わいに開眼。カタカナや専門用語が苦手な人でも楽しめる! 週末に飲みたい、小さな作り手による物語のあるワインを紹介します。
第10回
古代からの品種で醸す、ギリシャのワイン。
『Savatiano 2017 / Aoton Winery』
今回はギリシャのアテネ周辺のアッティカ地方の白ワインをご紹介します。
近年、ワイン業界で世界的な注目を集めているギリシャワイン。ギリシャでのブドウ栽培の歴史は、なんと紀元前3,000年にまで遡ります。イタリアで紀元前800年、フランスが紀元前600年なので、その歴史は桁外れですね。ブドウとワインは、ギリシャ神話の演劇や祭りの描写中にも頻繁に登場し、ブドウが硬貨の絵柄になるなど、昔から生活に深く関わっていました。

アッティカ地方は、エーゲ海に突出したギリシャの先端部。周囲を取り囲む4つの山のうち、最高峰のパルニサ山の近くにあって、周辺にはマツやモミの森が広がっています。
このマツは、ギリシャで造られる、独特の松脂風味の白ワイン『レツィーナ』と深い関係が。ワイン瓶やコルクのなかった時代、山羊の皮の袋にワインを入れて松脂で栓をしました。その風味がワインに移ったことが由来で、保存や殺菌の効果もありました。現在は乾燥させた松脂で風味付けしています。

さて、今回紹介するワインを造るのは、古代ギリシャ語で“そのクラスの最高峰”の意味をもつ「アオトンワイナリー」。当主は、二代目のギニス・ソティリスさん。アテネの農業学校を卒業後、祖父からワイナリーを引き継ぎました。この地域は海風が強くて虫が付きにくく、ビオロジック(有機栽培)に適しています。納得のいくブドウができない年は、ワインを造らずに全て売却するほどのこだわり屋。2016年のアオトンブランドのワインはありません。

このワイン『サヴァティアノ』は、主に『レツィーナ』に用いられる4,000年もの歴史をもつ土着品種サヴァティアノ100%で、さらに松脂の風味をほんの少しだけ付けています。『レツィーナ』は独特のクセがあるせいか日本ではあまり見かけないので、まずは松脂がほのかに香るこちらで、複雑なニュアンスを試してみてください。

どんな味ですか?
新鮮なハーブ、とくにローズマリーのような香りから、次第にナッツのような香ばしい風味とコクのある濃厚な果実味が広がります。松脂の風味も適度に感じられ、飲んでいるうちに風味がまとまってきて、さらにおいしくなりますよ。レバーパテや豚の生姜焼き、脂ののった焼き魚など、しっかりとした味わいの料理と相性がいいようです。
飲んでみました。
ほのかにナッツの風味が感じられて、しっかりと落ち着いた味わい。これまで飲んできた、辛口フルーティーな白とは全く違う印象です。メインの食事に合わせても負けないどっしり感があるので、食中酒に適しています。ギリシャワインを飲んだのは初めて。ここ2、3年で日本にも本格的に流通し始めたそうなので、先取りしておきたいですね。


今週のワイン
サヴァティアノ 2017/アオトン ワイナリー
産地:ギリシャ・アッティカ
2,580円(税抜)
salvis wine & records
[天満橋]
大阪市北区天満3-3-18 順源ビル1F
TEL 06-6356-7072
12:00〜20:00 水曜休
Instagram(@salvis_wine)
店主・野口一知さんがセレクトする小さな作り手のワインと、好きな音楽のレコードを扱う専門店。ワインはヨーロッパを中心に約200種を扱い、その約8割がナチュールワイン。知識ゼロでも、味の好みや飲む相手などを伝えれば、ぴったりのワインを教えてくれる。奥には隠し部屋的なバー空間があるのでぜひお尋ねを。全国発送可。
プロフィール
MeetsRegional編集室 1989年創刊以来(今年で31年目突入!)、関西の街をフォーカスし続けるリージョナル・マガジン。編集部員をはじめ、誌面に携わるさまざまなスタッフが自分の足で探してきた店や人、モノやコトを、私感たっぷりにご紹介。街や酒場の“ゴキゲン”を言い訳に、どうにも飲める(飲み過ぎる)スタッフ多め。現在、「WE♥酒場」をキャッチフレーズに、酒場にまつわるエトセトラを12カ月連続で特集中。毎月1日発売。
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