よう知らんけど日記

第92回 肉鬆(ロウソン)めっちゃおいしい!

2015.12.27 12:53

9月☆日
さらに続きます台北編。「どんだけ食べてんねん日記」に改題したほうがええんちゃいますかって感じですが、また食べ物から。ホテルは朝食ビュッフェがあって、お粥とかちっちゃい豚まんぽいものがあるのが台湾らしい以外は基本的にごくオーソドックスなビュッフェ。サラダ・おかずでおいしかったのは、タロイモのココナッツミルク和えとパパイヤの炒め物。お粥の横に塩蛋(しおたまご)があって、これはアヒルの卵の塩漬け、皮蛋とはまた違って白と黄色の見た目はゆで卵なんですが、どこの店やったか忘れたけど10年以上前に大阪のどっかのカフェでランチにお粥・塩蛋付きがあって、めっちゃ好きでよう食べてた。それで喜んでてんけど、お粥周りに並んでる漬物的なもののなかに謎の物体が。茶色い粉のかたまり。ふりかけ?
これ、肉鬆(ロウソン/コンビニのローソンとは発音がちゃうかった)という食べ物。いわば干し肉の削り節みたいなもん。最近は、これをまぶした肉鬆パンというのが人気らしい。塩蛋も、肉鬆も、日本でポピュラーになったらええのに。

9月☆日
台北で行ってみたいところがありました。猫村。猴硐(ホウトン)というローカル線の小さな村に猫がいっぱいいる。2年前に邦訳が出た写真集『猫楽園』で知って以来行きたかったのですが、なんとその『猫楽園』の著者・猫婦人が連れて行ってくれることに! 元々炭坑の町やったのがさびれてたところに猫が増えて、写真を撮りに行った猫婦人が避妊手術や清掃などのボランティアをしっかりやったこともあり、今ではすっかり猫推しの観光名所に。村に着いたとたん、猫婦人が呼ぶとあっちからもこっちからも猫がぞろぞろ! ほんまそこらじゅうに猫がいるし、猫カフェに猫グッズ店、駅のトイレまで猫推し。ただ猫がいっぱいというだけでなく、猫用のおうちがいっぱい設置してあるし、耳に避妊済みの印カットもちゃんとしてある。村全体でちゃんと猫の管理をして世話が行き届いてるのがとてもよかった。それにしても猫婦人、猫情報なんでも知ってる。しばらくぶりに来たみたいなのに、あの子は昨日子猫を生んだ、弱ってる子がいるから見に行ってくる、とすごい情報網。さらには、猫カフェでごはん(わたしはカレーライスを食べたんやけど、日本の家カレーそのまんまの味でした)のあと、わたしたちはローカル線に乗って十份(ジュウフン)という別の村へ、猫婦人は車で台北に戻って、夜に食事(前回書いた白菜鍋)でもう一度お会いしたら、朝、わたしが「肉鬆めっちゃおいしい」と話してたから、と肉鬆特大サイズを買ってきてくれてました! アイドルみたいに美しい猫婦人の行動力とやさしさに感激しっぱなしの一日でした。
猫婦人と別れた後は、通訳してくれた方の台湾人のお友達と猫カフェに。猫づくしの一日でした(このお友達、仕事でよく大阪に行くみたいで、上本町ハイハイタウンの変わりかつ丼の店[祭太鼓]がおいしいと、えらいマニアックな情報を教えてくれました)。

9月☆日
交通機関は全般に安い。地下鉄も初乗り20元(約80円)、実証実験中のレンタルサイクルも20円ぐらい。なにより便利なんは、タクシーが安い! 初乗り70元(約280円)。台北はコンパクトな街なのでタクシーに乗ったらだいたいすぐどこでも行けて、ほんま便利。ニューヨークと同じでタクシーはみんな黄色です。タクシーに乗ると、結構な確率で竹とかプラスチックの玉でできたシートカバーがかかってる。昭和な感じで懐かしい。さらに、ラジオからちょいちょい演歌が流れてくる。そう、日本語の演歌。細川たかしやら杉良太郎やら。かんかん照りのあっつい真昼に台北駅から乗ったときは、「しとしとぴっちゃん、しとぴっちゃん」と『子連れ狼』のテーマが! 「凍え死ぬ~」と、天候とまったく合ってない歌詞に笑ってもうた。日本人が洋楽聴くようなもんなんかな。

9月☆日
ローカル線で台北から離れると、人の顔立ちも違ってくるし、台湾語を話す人も結構いた。車両の中で、台湾語で行き先を教えてくれようとしてるおっちゃんがいてんけど、標準語(北京語)はわからへんみたいでした。台湾は、元々住んでた20以上の少数民がいたところに、戦前に移り住んだ中国人(本省人)、戦後に中国の政治・体制の変化によって台湾に移ってきた中国人(外省人)がいて、日本が統治してた期間も長いし、複雑な背景と歴史の紆余曲折があって、今の台湾がある。政治的な外交面では微妙な関係でもあり、今年東京であった故宮博物院の展覧会も、中国からのクレームで名前を変える変えないでもめたしね。近年日本では日本スゴい! なテレビ番組が大流行なのもあって、「台湾の人は日本好き」みたいな部分ばかり取り上げられてる気もする。もちろん文化的にすごく近しい感じで街を歩いても人と話しても楽しいし、みんな親切にしてくれはるし、震災のときに多額の寄付をしてくれたのも感謝してもしたりんくらいやけど、それを日本の側から「台湾て日本好きなんやろ?」と(モテてるとされる人が「おれのこと好きなんやろ」て言うような感じで)単純に言うだけになってもうたらよくないんちゃうかな、とも思った。日本の統治時代に教育を受けた世代の男の人は家事をしない人が多い、と聞いてなんだかなーと思ったりも(中国人の男性は基本料理をするそうです)。

この数年、映画『セデック・バレ』やこのあいだ直木賞を受賞した『流』など、日台の関係を背景にした面白い作品が次々出てるので、興味を持った人はぜひ見たり読んだりしてください。

9月☆日
きりがないので、台北コネタ集。
・大人気みやげ、サニーヒルズのパイナップルケーキ。あまのじゃくなもので、別に買いに行かんでも、と思てたら、初日に出版社の人にいただいたのがおいしすぎて、帰りに買い込みました。東京にもあるけど値段倍ぐらいするねんもん。甘すぎず、パイナップルの繊維がしっかりあって、はまる味。でも、タクシーのおっちゃんとかは「あれはパイナップルケーキちゃう」と。その新旧ギャップのよくある感じもわかる。

・故宮博物院、なんだかんだで翡翠の白菜と瑪瑙の角煮の有名どころは見たら感動しました。広すぎて回りきれへんし、人も多いので狙いを定めて夕方行くのがおすすめ。アメリカのメガ美術館・博物館はほかの国から持ってきたもので富を誇示してるけど、故宮はぜーんぶ中国のものなんがすごい。ようわからんなりに、書がよかった。
・故宮博物院の向かいにある順益台湾原住民博物館がこぢんまりしてるけど超おすすめです。
・香港みたいに、台湾もたいていの人が英語ふうの名前もついてる。そして改名が簡単で、運気を変えるとかこんな名前にしたい、というのでよく改名する人もいる。
・乾物街、薬草街、バイク屋街という感じで同じ種類の店が集まるタイプの街構造。中華文化圏は比較的そうかな。
・ポーズを凝って撮る結婚写真が大人気で、猫村にも撮影に来てる人がいた。家には特大サイズの写真を飾り、結婚式では写真カードを配る。案内してくれた同い年女子(既婚)に「撮影したんですか」と聞くと、「するわけないよ!」と即答でした。

9月☆日
楽しかった時はあっという間に過ぎ、空港へ。いったんチェックインしてから空港近くにあるサニーヒルズにパイナップルケーキを買いに行って試食をし、あと30分ぐらいあるからとまだ食べてなかった水餃子を。ぎりぎりまで食べます! 店内は、伝統工芸ふうの造りやのに、BGMは洋楽のラジオでかかってたのはレッチリ。ああグローバリゼーションやなあ、と思いながら肉餃子とセロリ餃子を食べて、苦しいお腹を抱えて飛行機に乗りました。

9月☆日
雨。行くときも大雨やったけど、帰っても大雨。今年の日本はほんま天候不順やね。
そして、はい、仕事、仕事……。
遊んだ分、働きます。

10月☆日
用事があって、東京で最初に住んだ家の近くに行ったついでに散歩。狭い路地が入り組んでる地域で、震災ハザードマップでも赤く塗られてる。住んでたマンションも見に行ってんけど、わたしがいたころにも人の気配がなかった向かいの古家が完全に朽ちて、屋根に穴開いてる。近所も、空き家が増えて、なんや寂れた感じ。持ち主が亡くならはったんかな、と思しき古い木造家屋もあれば、公務員の独身寮、古い木造アパートなんかも空き家になって板で塞がれてたり。入り組んだところやから新しく建てるのが難しいのか、一体をまとめて開発するつもりなのか。空き家問題て最近よう取り上げられてるけど、こんな不動産価格の高いとこで、新築の家やらマンションやら次々建つすぐそばで、廃墟が増えてるのはほんま謎やし、妙な感じ。住むとこなくて困ってる人ようさんおるのになんとかならんかなーといつも思う。
(後日、このとき通った近辺のずっと廃屋になってたアパートから白骨死体が出ました……)

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柴崎友香(しばさき・ともか) 1973年大阪生まれ。映画化された『きょうのできごと』で作家デビュー。2007年に『その街の今は』で第57回芸術選推奨科学大臣新人賞、第23回織田作之助賞大賞、第24回咲くやこの花賞受賞。2010年に『寝ても覚めても』で第32回野間文芸新人賞受賞。2014年に『春の庭』で第151回芥川龍之介賞受賞。著書に『青空感傷ツアー』『フルタイムライフ』『また会う日まで』『星のしるし』『ドリーマーズ』『よそ見津々』『ビリジアン』『虹色と幸運』『わたしがいなかった街で』等多数。
公式サイト:http://shiba-to.com/

権田直博(ごんだ・なおひろ) 1981年大阪生まれ。画家。さまざまな手法を使って作品を作り、すべてを絵ととらえている。風呂からパブリックスペースまで幅広く活動中。
キレイ:https://naohirogonda.tumblr.com/
風呂ンティア:https://frontier-spiritus.blogspot.jp/

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権田直博(ごんだ・なおひろ) 1981年大阪生まれ。画家。さまざまな手法を使って作品を作り、すべてを絵ととらえている。風呂からパブリックスペースまで幅広く活動中。
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