よう知らんけど日記

第60回 中森明菜が好きでした。

2013.12.10 18:06

11月☆日
洋服屋さんでコーデュロイパンツを試着。試着室にはいるとき、サイズを確認した店員さんが「こちらでぴったりなんですけど、あえて、ワンサイズ上で着られるのも素敵ですよ」と大変愛想よく言う。それは、ちょっとぴちぴちやしそのサイズ無理やで、の婉曲表現であろうか。と思いつつ、はいてみたら、そこまでぴちぴちでもなくそれなりに大丈夫そうな感じ。でもまあ、そんなにゆとりあるってほどでもないから店員さんが持ってきてくれたワンサイズ上のもはいてみる。そうすると店員さんが「そうですね、あえて、このサイズでゆったり着られるのもお似合いですね」。………「あ、え、て、」てそないに強調せんでよろし。
店員さんも、そら無理ですわ、とは言われへんし気ぃつこてはるんやろけど、何回も言われるとちょっと言葉の裏を読みたくなってしまうね。

11月☆日
『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』の試写へ。ジム・ジャームッシュ監督の新作はなんとヴァンパイア映画。アメリカってヴァンパイア好きやんねえ。ゾンビもやけど、死にぞこないに興味があるのであろうか。でも、そこはさすがにジャームッシュ、ふつうのヴァンパイアものとは違って、音楽映画といっても差し支えない渋い音楽に彩られたかっこいい映画でした。

主演は、この数年いちばん好きな女優、ティルダ・スウィントン。年齢も性別も超えたティルダ様の美しさは、ヴァンパイアにぴったり。恋人役のトム・ヒドルストンとは実年齢で20歳の差があるようには見えません!
夜の世界にしか生きられない吸血鬼と、暗闇の中でだけ見ることができる映画は、似てる 存在。ああ、自分が暮らす日々の夜の側にはこういう世界があると思ったらなんか心が安らぐなあ、こんなかっこいい時間を作ってありがとうと言いたくなる映画でした。

11月☆日
もう一つ見た試写では『ファイア by ルブタン』がよかった。パリにあるクラブ[クレイジー・ホース]のダンスをクリスチャン・ルブタンが演出した公演のドキュメンタリー。
同じクラブのショーでフィリップ・ドゥクフレ(アルベールビル五輪開会式、FIFAワールドカップフランス大会前夜祭を演出した人)が演出に就任した公演をフレデリック・ワイズマンが撮ったドキュメンタリーもあって、見比べるとおもしろい。
完全に見た目のみで選ばれた超絶スタイルのダンサーたちが(オーディションの様子がワイズマン版にあり)、ほぼ全裸でダンスする公演が、しかも3D! いやー、5年分ぐらいおしり見たね。おしり1年分てどのくらいかわからんけど。とにかくおしり、おしり、おしりです。あんな靴でようダンスできるなあ、と呆然としてしまうくらい、ヒールの高い美しい靴と肉体の曲線の競演。シンクロナイズドスイミングのように脚を上に向けてのダンスでは、ヒールのほうが長い=実際は歩けない靴も。子供の頃から[クレイジー・ホース]に出入りしててと熱く思いを語るルブタンもよかった(ていうか、子供は入れるのか?)。わたしの中で、マイケル・コースがセリーヌのデザイナーに就任したときのインタビューで読んだ、子供の頃に通りかかったセリーヌのお店の服があまりに美しくて店員さんに「メンズはありますか?」と聞いたというエピソードと匹敵するデザイナーズ心温まる話やね。
それにしても、隠したりじらしたりが基本の日本のヌード系ダンスと違って、こちら[クレイジー・ホース]では最初からに出しっぱなし。いちおう隠してるときもどっちかというとコミカルな衣装っていうか、紐っていうか。裸に対する感覚が違うのやなあ。

11月☆日
『歌のトップテン』第1回の再放送をCS・ファミリー劇場で発見。徳光さんと石野真子が司会になっての第1回ね。10位のデビューしたて西村知美、9位の『ヤヌスの鏡』主題歌・椎名恵(小学生の頃、大映ドラママニアだったので懐かしすぎ)と80年代全開で始まった後、斉藤由貴は表情が挙動不審すぎてものまねの人にしか見えへんし、河合その子、吉沢秋絵のおニャン子組は無表情やし、トップテン名物の意味不明のセットも張り切って大仏が出てくるし、食い入るように見てしまいました。3位チェッカーズ、2位渡辺美里(欠席)と続いたあと、第1位は誰やろうとボードを見つめていたら……、中森明菜「DESIRE」。泣きました。
わたし、当時のアイドルでは中森明菜が断然好きでした。松田聖子は今に至るまでまったく心惹かれたことがなく(大人になってやっと、好きと言ってる人がどんなとこをいいと思うのかまでは理解できた)、おしゃれすぎる小泉今日子はなんか気後れした。中森明菜は歌がうまくて陰があって薄幸そうで、大人っぽい衣装もかっこよくて、よかったなあ。また歌ってほしい。

11月☆日
ところで、斉藤由貴、チャゲ&飛鳥、チェッカーズと、みなまで書きませんが、ランクインのみなさんその後いろいろありすぎて、時の流れって……。徳光さんの「うちの息子が~」みたいなコメントにも、そのころは甥っ子もマングローブじゃなかったんやな、などとどうしても思いを馳せずにはいられない1時間でしたが、4位のアルフィーだけがまったく変わらない! 各人の髪型もキャラも音楽も、ぜーんぶいっしょ。そこだけ時間が止まってる。変わらずにいることのほうがとっても難しいことなのやなあ。

11月☆日
秋がなかった……。秋物の服買うたのに、着る機会がなかった。寒いの嫌いじゃないけど、もうちょっと待ってほしい。

11月☆日
イベントがあり大阪へ。でもイベント終わってとんぼ返りな日程。いろいろいきたいとこあるんやけどなあ。
帰りが日曜の夜やったので、しかも行楽シーズンということで新大阪激混み。売店に行列できてると思たら、「551の蓬莱」。そやねんなあ、551の豚まん、関西でしか売ってへん。ほしいけど、並んでたら時間なくなりそうなのでやめて、しかしその隣の「りくろーおじさんのチーズケーキ」につい、並んでしまった。なんか妙に好きなんよねえ、これ。安いし(いつのまにか600円になってたけど、ホールでこの値段は驚愕)おいしいし、東京でも売ってくれたらええのに。列短いし、と思ったのに、前の人が3つ、4つと買う。えー、そんなに買うてどないすんねやろ、配るんかな。焼きたてを無事に入手してからさらにお土産ゾーンを物色、新発見のフエキのりの黄色い犬? の容れもんに入ったプリンを買いました。かなりかわいい。
新幹線改札内の大阪グルメコーナーで[道頓堀 今井]のきつねうどん食べれて満足。讃岐じゃないほうの、やさしいうどん、東京でもおいしいの食べれたらええのになあ。

11月☆日
近所の家の庭に、あけびが大量に成ってるのですが、取る様子がない。ほかにも、夏みかん的なものとか、柿とかビワとか梅とかようけ成ってんねんけど、誰も取れへんのよね。でも、勝手に取ったら当然あかんやろし。ピンポーン、てして、通りすがりの者ですがあけび取ってもいいですか、って聞いたら取らしてくれるやろか。「ご自由にどうぞ」って張り紙しといてくれたらええのになあ。
ところで、あけびという物体を7年ほど前まで食べたことがなく、友達とチャレンジしたものの、慣れないものにはあのぷちぷちの見た目が結構気色の悪いものであまり楽しめず……。その後、『ケンミンSHOW』で、外側を味噌炒めにして食べるっていうのをやってておいしそうやったので、今度はそっちにチャレンジしたいです。

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柴崎友香(しばさき・ともか) 1973年大阪生まれ。映画化された『きょうのできごと』で作家デビュー。2007年に『その街の今は』で第57回芸術選推奨科学大臣新人賞、第23回織田作之助賞大賞、第24回咲くやこの花賞受賞。2010年に『寝ても覚めても』で第32回野間文芸新人賞受賞。2014年に『春の庭』で第151回芥川龍之介賞受賞。著書に『青空感傷ツアー』『フルタイムライフ』『また会う日まで』『星のしるし』『ドリーマーズ』『よそ見津々』『ビリジアン』『虹色と幸運』『わたしがいなかった街で』等多数。
公式サイト:http://shiba-to.com/

権田直博(ごんだ・なおひろ) 1981年大阪生まれ。画家。さまざまな手法を使って作品を作り、すべてを絵ととらえている。風呂からパブリックスペースまで幅広く活動中。
キレイ:https://naohirogonda.tumblr.com/
風呂ンティア:https://frontier-spiritus.blogspot.jp/

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権田直博(ごんだ・なおひろ) 1981年大阪生まれ。画家。さまざまな手法を使って作品を作り、すべてを絵ととらえている。風呂からパブリックスペースまで幅広く活動中。
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