よう知らんけど日記

第58回 初めての札幌、そして旭山動物園。

2013.10.28 18:05

9月☆日
祝!『よう知らんけど日記』単行本化!
ということで、丸善&ジュンク堂書店渋谷店でトークイベントを開催しました。対談をしてもらったのは、写真家の加瀬健太郎さん。2年ほど前に雑誌の企画でお会いして、そのときの話がめっちゃおもろかったのでお願いしたら、期待以上の盛りだくさんな話を伺えました。
加瀬さん、年も近いし、実家も大阪市南部、わたしが会社員してるころに心斎橋でTシャツを売ってはったと共通点もようさんあって、『よう知らんけど日記』にはなにわ濃い目のしゃべりがぴったりでした。最初に会ったときにも聞いたのですが、机とか椅子の角からビームが出ててそれをよけて歩くって話がめっちゃ好き。子供の頃、この線から出たらあかんとかこのブロックから落ちたら死ぬとか考えたものですが、それがずっと続いてる感じ。年取ったら普通見えなくなるものがまだ見えてる感じでうらやましい。
いつものイベントとひと味違って、お客さんにようさん笑ろてもろてよかったです。来ていただいたみなさま、ほんとにありがとうございました。

9月☆日
屋形船に乗りました。
5年ぐらい前に、作家さんたちの集まりで乗ったことがあって、また乗りたいわー、行こうや~、と毎度おなじみ高校の同級生東京組の宴会で言うてたら、実現。大阪から来た子も3人ほど参加して、前回は品川から出発したのですが、今回は勝どきから。普通の住宅地の間にある川から船に乗り込んで、ちょっと不思議な滑り出し。晴海埠頭を通り、レインボーブリッジをくぐって、お台場へ。走ってる間はかなり揺れるのやけど、お台場沖で落ち着くと、ゆっくり宴会のお座敷。きらきら光ってるお台場のショッピングモールと、さらに電飾いっぱいのほかの屋形船を眺めながら、船で揚げたての天ぷら大量。屋上デッキに出られるようになってて、暗い海面にはカモメがいっぱい。なかなか非日常な風景。大阪もそうやけど、いつもの街も水辺から見ると新鮮やね。また乗りたいなあ。

9月☆日
高校の同窓会があって、っていう話の流れで、1学年600人近くおった、って言うとたいていの人にびっくりされる。特に、英会話教室で外国の人に言うと、Really? Unbelievable! みたいな。

映画とかで見てても、欧米の学校ってすし詰めちゃうくてゆったりしてるもんな。人口密度高いアジアの、大阪市内の工場多い町の、さらにベビーブームどまんなか。1973年生まれって人口いちばん多いんよね。
中学も確か1学年500人ぐらい、小学校でも130人ぐらいやったんちゃうかな。小中学校は、校舎増築中でプレハブ教室。小学校は人数多いから4年生から3組から1つ増えて4クラスになった。それでも1学級32人とかやった。中学高校は1学級50人。

9月☆日
豪雨の音で目が覚める。台風来てるって言うてたっけ。明日の朝に飛行機で北海道行くんやけど大丈夫やろか。と思いつつ、屋形船で飲み過ぎたせいもあってごろごろしてたら電話が。「主催者からどうしてもイベントを決行したいとのことで、今日中に札幌入りしてください」。えっ、まじで。

一緒に行く人たちとの連絡がなかなか取れず、1日わらわらした末、なんとか札幌行き最終便を予約。羽田に着いたものの、やっぱり飛行機は遅れまくりで、1時間半前に出発予定の飛行機に振り替えられ、それでも大幅ずれ込み。空港内で使える1,000円券くれてんけど、ごはん食べたあとやったのでおみやげ屋さんでなぜか資生堂パーラーのチョコ買った。羽田は売店も閉まって薄暗くなってたけど、翌日乗る予定やった便は早々に欠航になったので、なんとか札幌行けてよかった。 初めての札幌、もう真っ暗で風景は全然見えへんかったけど、駅のホームの階段のところがガラスの扉で囲われてるのが見えて、やっぱり寒いんやなあ、としみじみした。

9月☆日
午後。無事にイベント開催。
去年、ジョジョ25周年記念ムック『ジョジョメノン』で「ジョジョ句会」に参加して以来で、「東京マッハ!」という公開句会イベントにゲスト出演しました。俳句、この「マッハ!」1回目を観に行くまではようわからんジャンルで、とっかかりがない感じやってんけど、マッハメンバーの千野帽子さんが書いた『俳句いきなり入門』を読んでから、興味がわいてきた。短歌がある程度意味やストーリー性があるのに比べると、ぱっと光景を切り取ったり、人によって違った解釈があるのは写真ぽいなと思ったり。まだまだ初心者なので、もっといろんな人の俳句を読みたい。

9月☆日
札幌から車で旭山動物園へ。台風一過で昨日までの荒れ具合が嘘のような晴天。北海道の広々した風景の中を車で走ること2時間(わたしは運転できないので乗せてもろて)。畑の真ん中をどこまでもまっすぐ貫く道の先に噂の動物園が。初めて行ったんやけど、「さびれてた動物園が見せ方を工夫して」の物語も納得の、天王寺動物園や上野動物園に比べたら地味で動物の種類も少ないこぢんまりしたところ。でも、本州ナンバーの車も結構見かけたし、シロクマ餌やりタイムは長蛇の列(もちろん並びませんでした)。工夫ってだいじやなー、ブームってすごいなー、と感心しながら回りました。テナガザルが真上を移動するのが観られるのとかもよかったけど、なによりよかったのは風景。山だけに高台からひろーい北海道の大地が見下ろせて、動物園やっていうことを忘れそうやった。

9月☆日
7月ぐらいから、仕事が雪崩てえらいことになっておりまして、元々片づけんの苦手やから部屋中もう手に負えなくなってます。原稿もイベントも、仕事受けるのは何カ月も前で、中には去年返事したことも。予定はだんだん変わっていくのやから、余裕を持ってスケジュール組んどかなあかんということを、つくづく思い知りました。
札幌行きの飛行機でもイベント前の楽屋でも仕事をし、東京戻ってからすぐエッセイの原稿を一つ送り、連載小説の原稿の続きをやり、3カ月ぶりにやっと一息。しかし、そのあいだほったらかしになっていた家の雑用やらなんやら、どこから手を着けたらいいのやら……。
各方面の方、いろいろすみません、ほんとうにすみません。

9月☆日
とある建物の高層階に行く用事があり、大きな窓からよう見える皇居を眺めていたら、あれ、あの向こうに見えてるビルに見覚えが!! 前回書いた『サラメシ』にでてきたビルじゃないですか! 巨大おにぎりがお弁当の、超絶技巧なクレーンオペレーターさんがいるあの建物! あのクレーンがそうなのか~。いやー、遠くから見ると、超高層ビルのさらにその上に飛び出てる孤高のクレーン、想像を超える高さ。あんなところで、あの巨大おにぎりを毎日食べてはるのやなあ。

  • LINE

柴崎友香(しばさき・ともか) 1973年大阪生まれ。映画化された『きょうのできごと』で作家デビュー。2007年に『その街の今は』で第57回芸術選推奨科学大臣新人賞、第23回織田作之助賞大賞、第24回咲くやこの花賞受賞。2010年に『寝ても覚めても』で第32回野間文芸新人賞受賞。2014年に『春の庭』で第151回芥川龍之介賞受賞。著書に『青空感傷ツアー』『フルタイムライフ』『また会う日まで』『星のしるし』『ドリーマーズ』『よそ見津々』『ビリジアン』『虹色と幸運』『わたしがいなかった街で』等多数。
公式サイト:http://shiba-to.com/

権田直博(ごんだ・なおひろ) 1981年大阪生まれ。画家。さまざまな手法を使って作品を作り、すべてを絵ととらえている。風呂からパブリックスペースまで幅広く活動中。
キレイ:https://naohirogonda.tumblr.com/
風呂ンティア:https://frontier-spiritus.blogspot.jp/

あなたにオススメあなたにオススメ

コラボPR

合わせて読みたい合わせて読みたい

柴崎友香(しばさき・ともか) 1973年大阪生まれ。映画化された『きょうのできごと』で作家デビュー。2007年に『その街の今は』で第57回芸術選推奨科学大臣新人賞、第23回織田作之助賞大賞、第24回咲くやこの花賞受賞。2010年に『寝ても覚めても』で第32回野間文芸新人賞受賞。2014年に『春の庭』で第151回芥川龍之介賞受賞。著書に『青空感傷ツアー』『フルタイムライフ』『また会う日まで』『星のしるし』『ドリーマーズ』『よそ見津々』『ビリジアン』『虹色と幸運』『わたしがいなかった街で』等多数。
公式サイト:http://shiba-to.com/

権田直博(ごんだ・なおひろ) 1981年大阪生まれ。画家。さまざまな手法を使って作品を作り、すべてを絵ととらえている。風呂からパブリックスペースまで幅広く活動中。
キレイ:https://naohirogonda.tumblr.com/
風呂ンティア:https://frontier-spiritus.blogspot.jp/

コラム

ピックアップ

エルマガジン社の本