よう知らんけど日記

第132回 現代IT社会の隙間でめっちゃへこみました……。

2020.10.9 15:51

カテゴリ:未分類

6月☆日 

5月に緊急事態宣言の終わりが見えてきたあたりで仕事の依頼も急に増え、4月にぽっかり時間が空いてた(とはいえ、やらなあかんことはようさんあったのやけど)反動もあるし、隔月とか一号お休みとかなってた雑誌も動いてきたりするのはやっぱりほっとして、せっかくやしと依頼を受けた分で忙しい感じに。「感じに」と書いてしまうのは、「忙しい」って結局人とか場合によるもので、客観的に決まってるものではないよなーと思ったりするので。「忙しい」って言うことが、あんまり好きではないけど、それはなんか口にする度に、いや、もっと忙しい人いるし、とか、これぐらいで忙しいって言うてええのかな、とか、それって仕事できてないだけちゃうん、言われたほうも気ぃつかうよな、とか、自分でうだうだ思ってしまうからやねんな。わたしは複数のことを同時並行でやるのが苦手なので、あれやってこれやって、せやあれもやらなあかんのやった、みたいになるとすぐ固まるんよね。まあ、世の中全体落ち着かないままなので、ぼちぼちやったらええのやで、と自分に言うている。 

6月☆日 

久しぶりに街に出てみると、昼間の電車とかはそこそこ混んでて、でもこないだまでががらがらすぎたからそれに慣れて混んでると感じるけど、前やったらこれむしろ全然空いてるよな、と思いつつ、街の雰囲気は一時期に比べると明るい感じもあり、こういうときは昼間が長い季節ってええよな、と思う。この日記でも何回か書いてるけど、とりあえず、晴れてて、明るかったら気ぃよう過ごせる。 

6月☆日 

自粛期間中に、それなりに家を片付けたり、サブスクリプションとか会員の登録して使ってないやつを整理したりとかしておりました。これ、前にも書いたかもやけど、登録は簡単、解約や退会はめっちゃめんどくさいというのが常でありまして。クレジットカードの明細書を見て、セキュリティソフトの同じのが2つ引き落とされてるのに気づき、どうやら一昨年パソコンを買い替えた際に引き継いだつもりがパソコンについてきたほうにも登録してしまったようで、画面上からではいろいろやってみてもIDがわかってる片方のしか表示されないので退会ができず、サポートに連絡して自動更新を止めてもらうことだけはできたのやけど、結局そのIDも、ほかに登録してるのはないかとかも、個人情報だからと一切教えてもらえなければ、情報を消すことできなくて、え、わたしの名前やし、わたしのメールアドレスやし、わたしのカードから引き落としてるのに、なんなんそれ、そもそも同じアドレスと名前で2個登録できてるんおかしいやん、ということがあって、気軽に登録するのやめなあかんし、とにかくできるところは退会していかな、とやってたのですね(そして件のセキュリティソフトは結局退会はできなかったのでその後期限が切れるまで「更新しろ」のメールやらDMやらが何回も何回も来て辟易しました……)。それで、いろいろ整理できたし、待ってた新しいモデルがやっとでたiPad miniを買い換えようと思ってですね、そしたらAppleのサイトで下取りキャンペーンやってたわけですよ。それで申し込んで、無事に新iPadが届いて数日後に下取りの宅配業者さんが来はったんやけども、業者さんの端末とわたしの身分証明書で本人確認しようとしたら、エラーが出るという。何回やってもだめで、どうしても引き取れないということで帰ってもらい、Appleのサポートに問い合わせたところ……。どうも、わたしが下取りの申し込みのときに入力したうちのなにかが間違えてるらしい。でも、どの部分が合わなかったのかは、教えてもらえない。生年月日が怪しいので、たぶん入力した生年月日が間違えてて、身分証明書はあるのやから、情報を登録し直したい、と頼んでも、できないとのこと。電話の向こうの人は「なんとかお助けしたいのですが、どうしてもできません」と申し訳なそうやし、その人に言うてもしょうがないのはわかるのやけど、なんでー!!!とは思うよね。これ、新しい本体が届くのと引き替えやったら、返品してもう一回買うとかできたかもやけど、何日か経ってるからもう新しいやつ使てるし、なんもかもどうしようもなく、えー! 下取りあるから買ったのにめっちゃ予算オーバーやん! わたしの正しい生年月日はわたしが知ってるのに! 生年月日入った身分証明書も何個も持ってんのに! という、現代IT社会の隙間でめっちゃへこみました……。 

6月☆日 

ということで、仕方なく秋葉原へiPadを売りに。インターネットで買い取りしてるとこ調べて、ちょうどそっち方向に用事があったので、何年ぶりかで秋葉原に降り立ちました。うーん、やっぱりここも人少ない! iPadは、Appleのキャンペーン価格よりは低くなったけど無事に買い取ってもらえ、秋葉原と言えば前から行きたかった[カールスジュニア]へ。2014年にカリフォルニアに行ったときに念願の訪問をしましたが、その後日本にも再上陸して、なぜか秋葉原が1号店なんよね。カールスジュニア、1990年前後に数店舗だけ大阪にあり、当時未来タウン感のあったOBPのIMPにあって、と書いても同世代大阪人以外にはなんのこっちゃやと思いますが、JR大阪環状線の京橋駅から大阪城公園のあいだあたりに松下のツインタワーを中心とした大阪ビジネスパークっちゅうのができまして、インターナショナル・マーケット・プレイスは世界のおしゃれ輸入品店が並んでおったんですが、各階のトイレも世界のトイレをテーマにした変わった形やったりしたんですな(桂米朝さん風に読んでください)。そこにカールスジュニアがあって、当時は珍しかったオニオンリングとか、肉感溢れるベーコン挟んだバーガーとか、外国文化の香りでめっちゃ好きやったんです。アメリカに行くとそんな高級なあこがれるようなものではまったくなく、単に安いジャンクフードチェーンなのですが、再上陸した今の店舗もやっぱり高級路線。久々に食べたこてこての肉のバーガーとオニオンリング、アメリカンな味がしました。お店増えてほしいなあ。 

6月☆日 

それと、秋葉原で行ってみたいとこがもう1つあって、JR総武線のホームに、瓶の牛乳いっぱい売ってる店があるんですよ。秋葉原で乗り換えするときに気になってた人もいると思うのですが、牛乳瓶がずらーっと並んでて、品名と値段を書いた紙もひらひら並んでて、飲みたいと思うものの、たいてい乗り換えで時間ないときやし、その場で飲んで瓶返す方式なので、いつも横目で過ぎていく。1月に初めてチャレンジしてみて、近づいてみると、牛乳も産地で何種類もあるし、コーヒー牛乳、フルーツ牛乳、ヨーグルト、青汁などなど、え、どれにしよ、とめっちゃ迷うぐらい並んでて、そしてホットもあるんです。湯煎のステンレスの機械に浸かってる。1月はホットのコーヒー牛乳(3種類あった)、今回は青汁にしてみた。青汁も3種類あってんけど、瓶がちっちゃいやつを選んだら、お店のおばちゃんが「小さいけどこれのほうが濃いからいいよ」と言ってくれる。あー、いいよね、こういうおばちゃんとのコミュニケーション。それで、1月にコーヒー牛乳の写真をインスタにあげたら、知ってる人からリプでたまご蒸しパンがおいしいと教えてもらって、聞いてみたら、今日はもう売り切れたとのこと。えー、まだお昼過ぎやのに! めっちゃ心残りで、反対側のホームへ。前はうろ覚えでよくわかってなかってんけど、この牛乳スタンド、千葉方面と、新宿方面と、両方のホームにある。なぜかお店の名前は違うねんけど、たぶん同じで、売ってるものはほぼいっしょ。一回山手線のホームに下りてまた階段を上がって反対側に行ってみると、無事にありました、たまご蒸しパン。そしてほんまにめちゃめちゃおいしかった。ラップで包んであるので手作りかと思いきや、ヤマザキの「熟成 厚焼きたまご風蒸しぱん」という物体で、よく見たら近所のスーパーにも売ってた。ダイソーにもあるらしい。かなり「厚焼きたまご」寄りで、あんまり甘くなく、たいへん好みです。カロリー見たら「あっ……」という感じではありましたが、おいしいです。 

6月☆日 

Eテレのベートーベン生誕250年特別企画の番組に出演するためにNHKへ。わたし、音楽の知識は全然なく、特にクラシックまったくわからないのですが、わたしが出演するのはこの企画のアンバサダーを務める稲垣吾郎さんとベートーベンのラブレターを読んでどんな人だったか想像して話すというコーナーで、ベートーベンの手紙を実際に読んでみたらなかなか興味深かったので出演させていただくことにした次第です。渋谷のNHKに行くのは、2018年暮れのラジオ出演以来やけど、その前2回もラジオだったので、テレビ出演でヘアメイクをしてもらうのは5年ぶりぐらい? ヘアメイク室でマスク姿のヘアメイクさんに、しばらくはお仕事お休みとかだったんですか? と聞いてみると、「ニュース番組があるので変わらずに出勤してました」とのこと。そうか~、ニュースは毎日あるもんなあ、それは大変やなあ~、と急に、ずっと家にいた間と違う環境、なかなかわからない他の人の仕事の大変さに思い当たったのでした。 

番組の収録自体は、新宿のベートーベンをテーマにされてるバーでした。お店の方がベートーベン大好きで、お酒やグラスもベートーベンやその時代に関連したもの、楽譜やコンサートの写真やチケットの額があちこちにあり、とても素敵なお店でした。元々ヘヴィメタル好きだったそうで、ヘヴィメタルとクラシックって通じるところあると前から思ってたので、妙に納得。 

ベートーベンのラブレター、何人かの人宛に書いたものがそれぞれ複数残ってるのですが、そもそもラブレターって受けとった人が持ってるものなので、ベートーベンの元にあった何通かはなんであるのかも謎やし、200年後に他人に読まれてあれこれ言われるのいややろうな~、ごめんやで~、と思いつつ、書かれた言葉と垣間見える人となりは、音楽につながるところが多々あって、おもしろかったです。稲垣吾郎さんの番組に出させてもらうのは、「ゴロウ・デラックス」での2回以来ですが、ほんとに知識も豊富だし、お話が滑らかかつ細やかで、はー、すごいなあー、と感心しっぱなしでした。稲垣さんがベートーベンを演じた舞台も再演されるそうで、楽しみです。 

7月☆日 

新刊のサイン本作りとインタビューのため、筑摩書房へ。新刊の『百年と一日』はPR誌『ちくま』で約2年半連載していた掌編集で、短い話の中に長い時間が流れる、ちょっと不思議な書き方の小説です。と、言われてもようわからんと思うので、筑摩書房のサイトの試し読みをぜひ読んでみてください。 

もともと、今年の春~夏前あたりに出す予定で進めてたのですが、コロナのあれやこれやで、4月には書店も休業のところが増えたりして、どうしようか、どうなるのか、となってたのですが、無事に刊行できてよかった。こんな大変な時期に、出版社から印刷関連、書店まで、いろんな方が助けてくださって無事にお店に並ぶのやなあ、といつもに増して感慨深いです。

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柴崎友香(しばさき・ともか) 1973年大阪生まれ。映画化された『きょうのできごと』で作家デビュー。2007年に『その街の今は』で第57回芸術選推奨科学大臣新人賞、第23回織田作之助賞大賞、第24回咲くやこの花賞受賞。2010年に『寝ても覚めても』で第32回野間文芸新人賞受賞。2014年に『春の庭』で第151回芥川龍之介賞受賞。著書に『青空感傷ツアー』『フルタイムライフ』『また会う日まで』『星のしるし』『ドリーマーズ』『よそ見津々』『ビリジアン』『虹色と幸運』『わたしがいなかった街で』等多数。
公式サイト:http://shiba-to.com/

権田直博(ごんだ・なおひろ) 1981年大阪生まれ。画家。さまざまな手法を使って作品を作り、すべてを絵ととらえている。風呂からパブリックスペースまで幅広く活動中。
キレイ:https://naohirogonda.tumblr.com/
風呂ンティア:https://frontier-spiritus.blogspot.jp/

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権田直博(ごんだ・なおひろ) 1981年大阪生まれ。画家。さまざまな手法を使って作品を作り、すべてを絵ととらえている。風呂からパブリックスペースまで幅広く活動中。
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