よう知らんけど日記

第90回 できるやん! 甘くないあんこ!

2015.11.18 12:37

9月☆日
『ためしてガッテン』(NHK総合)。しょっぱなからいきなりちょっとな話題であれなんですが、男性が家のトイレで立って用を足すときに飛び散る問題をどうするか、というテーマでした。街角でインタビューされた男性の方々は、自分は工夫してる、と言うので、実際に的をどこにすればましか、検証しててんけど、横に当てようが手前に当てようが散るもんは散る、いちばんあかんのは奥の壁で、なんと飛び散りは1万か所超え!!……で、さ。見てる間、ずーーっと釈然とせんかってんけど、「男だから男らしく立ってしたいし」という夫の隣で「掃除の時に困るんですよね~」と苦笑いの奥さん、ていう組み合わせばっかりで、なぜ、女の人が掃除する前提で話進めてるのや。
男の人でもちゃんと掃除する人もおるやろうし、「自由・勝手な男」VS「掃除する・不満な女」の構図をみじんも疑わんような進め方は、男女双方に偏見&不毛と思うねんけど。家まで取材させてもろてた若いご夫婦、飛び散り実証を突きつけられた結果最後になってやっと、夫さんが「週末ぐらいは掃除しようかな……」で、めでたしな感じでまとめてて、やっぱり、なんでや? 感は消えず。使ったら掃除する、自分のことは自分でする、でいいやん。

9月☆日
すごい雨。午前中からどんだけ降るねんていう豪雨が昼過ぎにいったん小降りになったのでこのままやむかと思いきや、断続的に激しくなり、夕方からはもう滝というか道が川というか。ちょうど用事で外出してて、あまりの雨にタクシーに乗ったら、前がまったく見えへんぐらい降ってきた。ワイパーが見たことないぐらい高速で動いてるのに、車乗ってるのが恐ろしいほどの視界のなさ。今まで経験した中で1、2を争う豪雨。なんとか無事に目的地に着いたけど、ほんの10分でもめっちゃ怖かった。
(そして翌日、茨城で堤防が決壊したのでした)

9月☆日
『タンゴ・冬の終わりに』(パルコ劇場)。80年代の名作を三上博史主演、行定勲演出で再演。精神を病んで引退した俳優が、実家の閉館した映画館に戻ってきて、子供の頃の記憶や演劇の場面、愛の思い出が交錯するというストーリーやねんけど、いやー、よかった!! 三上博史さんが以前から再演を熱望してたそうなんやけど、三上博史という俳優の存在感に圧倒されっぱなしの濃い時間でした。俳優ってこんなに美しいんやなあ、と見入ってしまった。フィクションがどれだけ人の心を支えるか、一方で演じる人間にとって真実ってなんなのか。創作を生業にしてる者の端くれとして、身を切られるような思いを抱かずにはいられない舞台やった。行定さん、この数年演劇を積極的にやってはるけど、今回はまた新しい世界に踏み込んではるってストレートに感動しました。俳優の妻の役をしてた神野三鈴さんがあまりにうまくてびっくりしました。

9月☆日
徳島文学書道館で講演。戦後70年ということで、徳島ゆかりの作家の戦争に関する作品や手記などの展覧会を開催してて、『わたしがいなかった街で』で引用した海野十三さんの日記や遺書も展示されてるので、その一環としてお話をさせてもらいました。初めて見た日記の実物は、メモ帳みたいな簡素なものに鉛筆書きで、戦争末期の生活の厳しさを表すものやった。一方で遺書(終戦とともに一家心中しようとしたけど実行できず)は、きっちりした筆書きのもので、海野さんの律儀さが伝わってきた。文学書道館、吹き抜けのきもちいい素敵な建物で、資料も充実してるし、いいところでした。去年まで館長してはった瀬戸内寂聴さんの書斎の再現と、蔵書のほとんどを寄贈したという書庫が圧巻。婦人雑誌のバックナンバーとか貴重なものがたくさんあったので、あらためて取材に行きたいなあ。

徳島、阿波踊り見たかったなあ、と思ってたら、阿波踊り会館があって毎日観れる! ということで、観てきました。毎日いろんな連が交代で出てて、それぞれ特徴があるそうで、徳島に行かれる方、おすすめです。

9月☆日
旅行の準備。苦手なんです。これがなかなか旅行に行けない原因の一つなんです。あれも持っていかな、これも持っていかな、忘れ物したらどうしよう、なんか大事なこと忘れてんちゃうか、おらん間に仕事でなんかあったらどうしよう、電車止まったり渋滞したりして飛行機に乗り遅れたらどうしよう、と延々と悪いことばかりが頭をよぎり、不安、さらに不安、でいつももう行きたくないと言いながら準備しています。ほんとにつらい……。

9月☆日
しかし、実際飛行機に乗ってしまえば全然楽しめるんやけどね。羽田から台北の松山(そんしゃん)空港へ。沖縄行くぐらいの時間やから楽々。しかも、松山空港、台北の中心地のすぐ近くにあるので、めっちゃ便利。東京で言うと池袋、大阪で言うと京橋あたりに空港がある感じ。タクシーから街並みを眺めて、高速道路にビルにごちゃごちゃした看板と日本の都市とそっくりやなー、と思ってたらふと気づいた。電線がない! 電線ないだけで風景はだいぶんすっきりするよなー。

ホテルの隣はユニクロ、向かいはZARAとadidasとスタバという、絶賛グローバリズムな街角。夜になっても、というか夜の方がじょろじょろ人が出てくるのがアジアの街やなーとうきうきする。晩ごはんのあと、ずーっと前から行ってみたかった念願の[誠品書店 敦南店]へ。台湾の若者に人気というおしゃれ書店、なんと24時間営業。行ったのは10時過ぎてたけど、めっちゃにぎわってました。そして日本の本、雑誌もいっぱい。わたしの『春の庭』台湾版も、早速並んでました! そう、今回は、この『春之庭院』のプロモーションで台湾に初めて来たのでした。

9月☆日

「松山文創園區」へ。日本統治時代の煙草工場の建物をリノベーション、デザイン事務所やギャラリー、カフェ、ショップなんかが入ってる。とにかく広い! 大きい大学ぐらいの感じで、敷地に余裕があるし、南方風と東洋風が混ざったデザインの建物は築80年近いのに状態もいい。日本もこんなふうにええ建物をちゃんと活用してくれたらええのに、とうらやましくなるおしゃれで居心地のいい場所でした。隣には、誠品書店のデパートとホテルが。ここがまた台北最先端のいけてるスポット。ホテルめっちゃ高いらしいねんけど、泊まってみたいなあ……。
夕方は、「紀州庵」という、これも日本統治時代の日本家屋風の建物をリノベした場所で、乃南アサさん、台湾の作家さん、日本、台湾の編集者さんでの交流会。そのあと、近くの客家料理のお店へ。濃いめの味付けの料理を白ご飯とともに食べる、めっちゃおいしいご飯でした。店は込み入った路地を抜けた先にあったんやけど、グーグルマップを見てたら「牯嶺街」の文字が。エドワード・ヤンの『牯嶺街少年殺人事件』の「牯嶺街」じゃないですか! と舞い上がってしまった。

9月☆日
去年10月、今年3月とカリフォルニアに行って、この世はコンビニのある世界とコンビニのない世界に分かれるのやな、と思い知りました。台北は完璧に「コンビニのある世界」です! それもセブンイレブンとファミマばっかり、街の中心部は1区画に1軒ずつあるんちゃうかという、東京以上のコンビニ密度。ソウルに行ったときも確かこのセブンとファミマの組み合わせで、でも品揃えが日本の昔のコンビニくらいの感じやったのが、台北はほとんど日本と同じ、コピー機もある。泊まったホテルのすぐ裏にも向かいにもセブン&ファミマが並んでて、これでなんも怖くない! ロサンゼルスみたいに毎日どこで水買うかなんて、なーんも気にしなくていい! お茶も牛乳も豆乳もおにぎりもおかずも、文房具も化粧品も売ってる! 24時間あいてる! 快適~。素敵~。
普通やん、と思うかもしれませんが、アメリカの車ないと死ぬ地域(全米の95%ぐらい?)を体験すると天国のよう。
そして、店内におでん(日本風と台湾風(辛い)の二種類)、焼き芋、味付け煮卵が揃ってて八角・五粉香系のええにおいが充満。さらに、おでんは「関東煮」って書いてある。関西の人が広めたんやろか。
台湾のお茶は甘いと聞いてたので「日式緑茶」と書いてあるペットボトルを買う。

9月☆日
台湾のお茶は甘い、というのと、外国はお菓子めっさ甘いという先入観から、絶対おやつ類は激甘やろなと覚悟していたところ、なんと! これが! 甘くない! ほんのり甘いぐらいのほどよい感じ! 甘いもの苦手なわたしにはすばらしい味。中でも感動したのは「あんパン」で、日本文化の影響が強いので見た目は日本のとそっくりなあんパンが売ってるのやけど、粒あんがめっちゃ小豆の味。日本のもこのぐらいにしてほしい。お菓子づくりって材料をきっちり量らんと大失敗するから、てっきり、あんこやらようかんやらお菓子はめっちゃ砂糖入れな固まれへんとかうまいことなれへんからしゃあないのやろなと思っててんけど、できるんやん! 甘くないあんこ!
というわけで、「甘くないスイーツ」に感動して、1週間のあいだいろんなスイーツ食べまくってしまいました。もちろん、甘さ控えめなのであってお菓子はお菓子、糖分はがっつり摂取することとなりました……。
台湾編、次回に続く。おいしいものようさん紹介しまっせー。

  • LINE

柴崎友香(しばさき・ともか) 1973年大阪生まれ。映画化された『きょうのできごと』で作家デビュー。2007年に『その街の今は』で第57回芸術選推奨科学大臣新人賞、第23回織田作之助賞大賞、第24回咲くやこの花賞受賞。2010年に『寝ても覚めても』で第32回野間文芸新人賞受賞。2014年に『春の庭』で第151回芥川龍之介賞受賞。著書に『青空感傷ツアー』『フルタイムライフ』『また会う日まで』『星のしるし』『ドリーマーズ』『よそ見津々』『ビリジアン』『虹色と幸運』『わたしがいなかった街で』等多数。
公式サイト:http://shiba-to.com/

権田直博(ごんだ・なおひろ) 1981年大阪生まれ。画家。さまざまな手法を使って作品を作り、すべてを絵ととらえている。風呂からパブリックスペースまで幅広く活動中。
キレイ:https://naohirogonda.tumblr.com/
風呂ンティア:https://frontier-spiritus.blogspot.jp/

あなたにオススメあなたにオススメ

人気記事ランキング人気記事ランキング

写真ランキング

コラボPR

合わせて読みたい合わせて読みたい

柴崎友香(しばさき・ともか) 1973年大阪生まれ。映画化された『きょうのできごと』で作家デビュー。2007年に『その街の今は』で第57回芸術選推奨科学大臣新人賞、第23回織田作之助賞大賞、第24回咲くやこの花賞受賞。2010年に『寝ても覚めても』で第32回野間文芸新人賞受賞。2014年に『春の庭』で第151回芥川龍之介賞受賞。著書に『青空感傷ツアー』『フルタイムライフ』『また会う日まで』『星のしるし』『ドリーマーズ』『よそ見津々』『ビリジアン』『虹色と幸運』『わたしがいなかった街で』等多数。
公式サイト:http://shiba-to.com/

権田直博(ごんだ・なおひろ) 1981年大阪生まれ。画家。さまざまな手法を使って作品を作り、すべてを絵ととらえている。風呂からパブリックスペースまで幅広く活動中。
キレイ:https://naohirogonda.tumblr.com/
風呂ンティア:https://frontier-spiritus.blogspot.jp/

人気記事ランキング人気記事ランキング

コラム

ピックアップ

写真ランキング

エルマガジン社の本