第84回 38kgなんか寿命縮むて!
(ロサンゼルス編が終わってからも引き続き「思い出しよう知らんけど日記」というか、なんだかアキレスと亀的状況になってる気もしますが、一歩一歩進みます)
3月☆日
友人に用事があって会うのにちょうど中間地点ということで、秋葉原のガンダムカフェに。前にちらっと覗いたことはあってんけど、ご飯食べるのは初めて。アッガイが水面から頭出してるふうのカレーとか、ガンダムのV字アンテナを模したペンネとか、中にはちょっと無理矢理感のもあるけど、おもろいメニューの数々。でも意外に、おいしい! うまいことできてる! 赤い彗星フェア中やったので、わたしはシャア専用ズゴックをイメージしたトマト蟹スープパスタ。蟹の爪がズゴックの手になってるんですねー。友達はシャアザク・オムライス。ほかにも食べたいメニューいっぱいやったし、グッズもサーベル型の傘とかほしいもんがいっぱい。企画してる人はさぞかし楽しんではるやろうというのが伝わってくる、細かいとこまで凝ったもんばっかり。連邦軍の制服着てるカフェのスタッフさん含め、仕事してる人がうらやましい……。
3月☆日
父の墓参りのため4年ぶりに小豆島へ。飛行機も橋もない=船で行かなあかん島としては日本の中で最大だそうで、東京からやと飛行機で高松まで行ってフェリーに乗るコース。久々に行ったら、フェリー乗り場の土産物もなんやおしゃれなボトルのオリーブオイルやったり、ロハスなカフェができてたり。瀬戸内国際芸術祭が始まってから、周りで「小豆島行った」て聞くことも増えたし、建築や演劇の人もなんやかんやしに行ってるし、とは思ってたけど、実際けっこう雰囲気変わってる。子供の頃はただ祖母の家とその周辺に行くだけやったけど、観光として来てみると海きれいし山もあるし、ええとこなんよね。『二十四の瞳』の映画村も増築してたし(岬の分教場の窓から海だけが見える風景が、ほんとにすばらしい!)、もうちょっとゆっくり来ればよかった、と後ろ髪引かれつつ東京に戻りました。しかも、高松はいつも通過ばかりで、うどん食べてないという……。
4月☆日
長嶋有さん、豊崎由美さん、米光一成さんとやっている、人の本を全力で応援するイベント、チア・リーディング部の「スポークン・ワード」第4回を池袋のジュンク堂で。今回は古谷田奈月さんの『ジュンのための6つの小曲』。ちょっと変わっているけど音楽には鋭い感覚と情熱を持った中学生のジュンと彼を取り巻く人々を描いた短編集。世界を音としてとらえるジュンの感覚の表現や、中学生たちの人間関係のあり方がおもしろい。 小説について語り合った後、4人がそれぞれのやり方で「応援」をすることになってて、今まではわたしは朗読やったのやけど、今回はそれにプラスして写真を会場で映すことに。そこではじめて、パワーポイントでスライドショーを作ってみたのでした。開演前ぎりぎりに見よう見まねで作った割に、なかなかええ感じにできてほっとしました。もっと使いこなせるようになりたいなあ。
このパワーポイントいうやつ、ファッション誌の1ヶ月コーディネートコーナーでも「パワポでプレゼン」なんて出てきたりするし、今、オフィスワークをしてはる人には当然すぎるツールなのやと思うけど、以前、『報道ステーション』で古舘伊知郎がパワーポイントを初めて知ったような説明をして(確か、STAP細胞関係のニュース)、そんなことも知らんのかと揶揄されてましたが、使わん人は使わへんよね。ま、名前と機能ぐらい知っといたほうがいいかもやけど、あるところでは当たり前すぎるものが、環境が違うところではなんのことやらさっぱり、ていうのはどんどん増えてきてるように思う。
4月☆日
雑誌に載ってた「男子が考える女子の理想体重」が38kg、とか、萌え系イラストのキャラクター設定のぽっちゃり女子の体重が48kg、とか、そんな話題がTwitterでちょいちょい「炎上」してるのを見かけたあとで、テレビのワイドショーで「男性はほんとはぽっちゃりのほうが好きなのに、女子はダイエットしすぎ」という企画をたまたま見た。矛盾してるようやけど、もしかしてこれ、なにも矛盾してないのでは。つまり、男子が考える「女子の見た目」と「女子の体重」の相関がずれてるのでは?? そら、男子の身長と体重の基準で考えたら、女子の体重もっと軽いと思っててもしゃあないかもね(男子の方が腰が細いし、全体に肉がついてない)。さらに、アイドルのプロフィールとか体重絶対軽く書いてるやろうし、グラビアアイドルって珍しい体型やのにそれを見慣れてしまってたら、胸とかお尻だけむちむちやけど体重は軽いはず、と思うかも。
「若い女子がやせすぎ」系のニュースって、ダイエットに走る女子が浅はか、みたいな論調になりがちやけど、どの雑誌見てもめっちゃ細いモデルやアイドルばっかり載ってて、そういう人に似合う服しか売ってなくて、現実にはおかしい体重を「理想」だの「条件」だのって求められたら、やせなあかんていう強迫観念すごいと思う。
フランスやイタリアではやせすぎモデル禁止令が出たなんて話も聞くけど、パリコレなんかの映像をみる限り昔よりもさらにがりがりになってるような気がする。モデルや女優の仕事してはる人を実際に見ると、あー、骨が違うんやわ、って自分と比べたらあかんことに気づくんやけど、たとえばユニクロのオンラインショップのサイト見ても、細ながーい白人モデルで、参考にならんわい! てなるけど、「イメージ」と「現実」の乖離は縮まれへんね。身長にもよるけど、やせすぎは不健康やし、38kgなんか寿命縮むて! 現代の女子、戦後すぐよりも摂取カロリー少ないらしいし、心配です(そして、今時の男子にも、太ったらあかん強迫観念はかなりあるやろなとも思う)。 女子の体重は実際このぐらいが普通で健康的、っていうのがもっと認識されなあかんよなー。
献血は50㎏以上という女子としては微妙な数値やから変えたら献血増える、という話を聞いたのやけど、正確には、50㎏以上は全血献血400mlで、女性は40㎏以上だと200mlいけるらしい。わたしは大変申し訳ないことに採血の針が刺さってるとこ&抜かれた血を見ると貧血を起こすという困った性質があり献血したことないのですが、どれだけ献血したかってその場で周りにわからんそうやし、気にせんでええってことやね。採血中、目をそらし続けててもだいじょうぶそうやったら、一度勇気出していってみよかな。
4月☆日
京都から友人か仕事で来たので、丸の内のインターメディアテク(無料やし、おすすめです!)に一緒に行った後、一人で三菱一号館美術館の「ワシントン・ナショナル・ギャラリー展」、東京ステーションギャラリー「ピカソと20世紀美術展」、ブリジストン美術館、資生堂ギャラリー「花椿会」をハシゴ。どれもおもしろかった。ブリジストン美術館は、去年初めて行ってんけど、ピカソの「腕を組んで座るサルタンバンク」(これめっちゃ好き)を筆頭として、印象派や日本の近代絵画のかなりええコレクションを持ってはって、いい美術館やなって感動した。改築のため数年の休業になるってことで、コレクション作品おさらい展で名作メドレー状態で満喫しました。近代以前の絵画は額縁がおもしろくて、図録ではわからない額縁を見られることが展覧会の楽しみの一つなんやけど、青木繁『海の幸』の額が魚のレリーフやったんがうれしかった。新装オープンが今から待ち遠しいなあ。
こないだのロサンゼルス旅行で美術館のことさんざん書いたけど、日本も美術館はありすぎぐらいに数多い。でも、特別展、企画展中心なことが惜しいというか、それが美術館の存在感を薄めてる気がする。よほどしょっちゅう美術館行く人以外には、かえってそれぞれの美術館の個性がわかりにくくなってるんちゃうかな。常設をアピールしたほうが、これから外国のお客さんも来やすいと思うけどなあ。あそこに行ったらあの絵がある、あの作品を見に行くためにあそこに行く、ていうのは幸せなことやし、観光の大きな目的になるもんね。日本に来たら日本の美術作品や日本の美術館が持ってる名作を見たい、って思うやろうし。常設展&所蔵作品、もっと重視されてほしいなあ。
プロフィール
柴崎友香(しばさき・ともか)
1973年大阪生まれ。映画化された『きょうのできごと』で作家デビュー。2007年に『その街の今は』で第57回芸術選推奨科学大臣新人賞、第23回織田作之助賞大賞、第24回咲くやこの花賞受賞。2010年に『寝ても覚めても』で第32回野間文芸新人賞受賞。2014年に『春の庭』で第151回芥川龍之介賞受賞。著書に『青空感傷ツアー』『フルタイムライフ』『また会う日まで』『星のしるし』『ドリーマーズ』『よそ見津々』『ビリジアン』『虹色と幸運』『わたしがいなかった街で』等多数。
公式サイト:http://shiba-to.com/
権田直博(ごんだ・なおひろ)
1981年大阪生まれ。画家。さまざまな手法を使って作品を作り、すべてを絵ととらえている。風呂からパブリックスペースまで幅広く活動中。
キレイ:https://naohirogonda.tumblr.com/
風呂ンティア:https://frontier-spiritus.blogspot.jp/
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