“シン・清須会議”は最新研究を反映、間もなく「賤ヶ岳の戦い」重要ポイントも登場【豊臣兄弟】

2時間前

『豊臣兄弟!』第30回より。織田信長の嫡孫・三法師(写真左、清水伊織)を抱いて、お披露目会に現れた羽柴秀吉(写真右、池松壮亮)(C)NHK

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豊臣秀吉の名参謀と言われた弟・豊臣秀長(小一郎)のサクセスストーリーを、仲野太賀主演で描く大河ドラマ『豊臣兄弟!』(NHK)。

8月9日放送の第30回「清須会議」では、長年刷り込まれた清須会議のイメージと、最新の説が融合したあざやかな展開に。そして秀長が早くも、兄と共犯関係になったことがうかがわれる描写があった。


■ 市&柴田勝家の結婚を勧める…第30回あらすじ

織田家の今後を話し合う会議に出るため、小一郎と羽柴(豊臣)秀吉(池松壮亮)は清須城に向かう。秀吉は市(宮﨑あおい)に、明智光秀(要潤)を討伐した報告をしに行くが、そこで市が兄・信長(小栗旬)から送られた書状に埋もれて、やつれた姿で座っている姿を見る。

そんな市に対して、秀吉は柴田勝家(山口馬木也)との再婚を嘆願。市の娘・茶々(井上和)は反発するが、市は勝家の承諾を条件にして保留する。

『豊臣兄弟!』第30回より。(C)NHK
『豊臣兄弟!』第30回より。市の部屋の前に座る長女・茶々(井上和)と、市を訪ねてきた羽柴秀吉(池松壮亮)(C)NHK

会議の前日、秀吉は勝家、丹羽長秀(池田鉄洋)、池田恒興(堀井新太)を集めて、今後の織田家は家老たちの合議制にすることを提案するとともに、ただ一人織田家と血縁関係がない勝家に、市との婚礼を勧めた。

勝家は秀吉の提案には乗らないと固辞するが、清須会議が終わったあと、市に呼び出される。市は勝家に、自分にやらねばならぬことができたと告げ、さらに「私を娶(めと)れ」と命じた・・・。

■ 最新研究を旧説に混ぜた“シン・清須会議”

「清須会議」といえば、これまでの大河ドラマや時代劇では、秀吉が三すくみ状態の後継者争いを勝ち抜いて、三法師を跡取りにさせる・・・という流れが定番となっていた。

しかし、最近の研究で、実際には信長の孫・三法師が跡継ぎになることは、規定の事実として決まっており、むしろ後見者となる「名代」を誰にするかということと、信長や光秀の領地をどのように分配するかが、重要なテーマだったことがわかったそうだ。

『豊臣兄弟!』第30回より。(C)NHK
『豊臣兄弟!』第30回より。織田信長の嫡孫・三法師(写真左、清水伊織)を抱いて、お披露目会に現れた羽柴秀吉(写真右、池松壮亮)(C)NHK

とはいえ秀吉が三法師を抱っこして、高らかに自分がトップに立つことを宣言するという構図が、非常に象徴的で、ビジュアル的にもカッコいいのは間違いない。

ということで、清須会議自体は最新の研究に沿った内容にするけれど、三法師のお目見えのときに、秀吉が抱っこして「私がトップです!」宣言&三法師にそれを認めたような発言をさせるという、まさに新旧の「清須会議」の折衷案のような形にまとめ上げた。

この「最新の学説」と「私たちに長年根強く埋め込まれつづけたイメージ」のバランスを取りながら、いかに物語を紡いでいくかは、近年の大河ドラマの大きなテーマとなっているように思う。特に後世で作られたドラマティックな話が、さも真実のように語られがちな戦国時代は、そのイメージとの戦いも激しいはずだ。

そういう意味で『豊臣兄弟!』もまた、信長の草履や墨俣一夜城などの秀吉伝説の数々を、史実確定の出来事とトリッキーに結びつけて視聴者を驚かせてきたが、この清須会議も渋いファインプレーと言えるだろう。

『豊臣兄弟!』第30回より。(C)NHK
『豊臣兄弟!』第30回より。織田信長の嫡孫・三法師の名代を争う織田信雄(写真右、山脇辰哉)と信孝(写真左、結木滉星)(C)NHK

そして、もう一つの議題だった領地問題だが、三法師は信長の最後の拠点・安土を含めた近江、次男・信雄(山脇辰哉)は尾張、三男・信孝(結木滉星)は美濃を受け継ぐことに。秀吉は河内・山城という京に近い国に加えて、「山崎の戦い」の報奨代わりに、光秀の旧領・丹波もゲットする。

これによって織田家家臣の最大勢力になれたものの、拠点の長浜を勝家に譲ることになった。この領地の状況は「賤ヶ岳の戦い」に向けて大きなポイントとなるので、今のうちに頭に入れておこう。

■ サイコパス?自己肯定感&承認欲求の果て…

『豊臣兄弟!』第1回より。(C)NHK
『豊臣兄弟!』第1回より。小一郎(写真左、仲野太賀)との8年ぶりの再会を喜ぶ兄・藤吉郎(写真右、池松壮亮)(C)NHK

この清須会議の出来事で、近年の私たちがイメージする「腹黒でサイコパスな秀吉」像に、また一歩近づいた・・・と思った視聴者が多かっただろう。

しかし、ここまでの池松秀吉を見ていると、腹黒とはちょっと方向が違う気もしてきた。むしろ信長の天下一統の遺志と、「平和な世を実現したい」という弟の願いを叶えるピュアな気持ちが先走りしすぎて、周囲の目も気にせず最短ルートを突っ走るという、良くも悪くもスタンドプレーが目立つだけの人物に思えてくる。

思えばドラマの序盤で、秀吉が語った出世の動機は「身近な人たちに褒められたい」だった。そんな彼が、家柄に関係なく、実力さえあれば無限に褒めて出世させてくれる信長に仕えることになるだなんて、これ以上の幸運は思い浮かばない。

たとえ戦で非人道的なことをしても、信長が褒めてくれるなら「そんなの関係ねえ!」と突き進んでいくことになるのだから、これは自己肯定感と承認欲求が果てしなく膨らむことになる。

『豊臣兄弟!』第29回より。(C)NHK
『豊臣兄弟!』第29回より。嫡男が亡くなり、悲しみに暮れる小一郎(写真左、仲野太賀)に、天下を目指す覚悟を語る羽柴秀吉(写真右、池松壮亮)(C)NHK

しかし、信長という「褒めてくれる人」がいなくなった今、秀吉が誰に代わりを求めるか? そこで該当したのが、身内ということでありのままの自分を、結果的には全部受け止めてくれてくれる秀長だった。

弟の究極の望み「誰も殺されない世界」を実現して「さすが兄者じゃ!」と褒められることに、これからの秀吉は邁進するのだろう。しかし、肝心の秀長は、秀吉が自分のために、なりふり構わず周囲と対立していくさまを、どう受け止めるのだろう?

■ “悪事”の片棒を担ぐ小一郎…きっかけは?

『豊臣兄弟!』第30回より。(C)NHK
『豊臣兄弟!』第30回より。織田信長の嫡孫・三法師のお披露目会に、並んで座る黒田官兵衛(写真左、倉悠貴)と小一郎(写真右、仲野太賀)(C)NHK

・・・と勝手に心配をしていたが、早くも秀長はこの清須会議で、信雄の三法師誘拐計画を静観することで失脚させるという、秀吉の片棒を担ぐ行為に出た。

無事に保護できたから良かったけど、場合によっては三法師の命が危うくなっていたので、かつての秀長だったら「幼い子を危険な目に合わせるわけにはいかぬ!」と止めていたのではないだろうか。しかし、今の秀長は、三法師の安全を引き換えにしてでも、兄の計画を忠実に進める道を選んだ。

思った以上に早い段階で、秀長も兄と一緒に泥をかぶる決意を固めたわけだが、そのトリガーを引いたのは、おそらく慶(ちか/吉岡里帆)だろう。

『豊臣兄弟!』第30回より。(C)NHK
『豊臣兄弟!』第30回より。清須会議へ行くか悩む小一郎の話を立ち聞きする妻・慶(吉岡里帆)(C)NHK

清須への出立を渋る秀長に、亡き息子・与一郎(大西利空)が楽しい世を作ってほしいと父に願っていたことを伝えるとともに、思わず漏らした「こんなことはたくさん」という言葉。これが秀長自身の希望と掛け算になって、甘えた気持ちを完全に払拭する。兄の筆頭家老宣言を、一ミリの戸惑いも見せずにまっすぐ見据えていた秀長の表情に、それが現れていた。

これまでは愉快に協力し合っていた兄弟が、たった1週間を挟んで「落ちればもろとも」と言わんばかりの共依存関係に変化した。これからは周囲に腹黒とかサイコパスと思われようが、お互いが褒めてくれるなら何も怖くないという感じで、天下一統への厳しい道を切り開いていくのだろう。

この強力すぎるタッグなら、天下取りも夢ではないと確信できると同時に、その片方が数年後にいなくなったときに、悲劇が起こることも予想できてしまうのが、今から切ない・・・。

『豊臣兄弟!』第30回より。(C)NHK
『豊臣兄弟!』第30回より。羽柴秀吉(写真左、池松壮亮)と話す小一郎(写真右、仲野太賀)(C)NHK

大河ドラマ『豊臣兄弟!』はNHK総合で毎週日曜・20時から、NHKBSは18時から、BSP4Kでは12時15分からスタート。8月16日放送の第31回「これで、お別れにございます」では、秀吉の動きを警戒して、市が勝家と結婚。さらに信孝が三法師を岐阜に連れ帰り、織田家の主導権争いが激化していくところが描かれる。

文/吉永美和子


【次回予告】豊臣兄弟 VS 市…泥沼の争い、幕開け

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