話題の夜ドラ、福地桃子「能登の“やわらかい風”を映像で届けられたら」

夜ドラ『ラジオスター』(NHK総合)のインタビューに応じる福地桃子(大阪市内にて撮影)
災害後の能登を舞台に、災害FMラジオをめぐる悲喜交々な日常と、さまざまな痛みを抱えながらも前に進もうとする人々の姿を描いた夜ドラ『ラジオスター』(NHK総合)が明日、最終回をむかえる。
ボランティアのために大阪から能登半島は「鈴野」の町へとやってきて、ラジオのパーソナリティをすることになった主人公・柊カナデ。演じた福地桃子が最終回直前、インタビューに応じ、作品と能登への思いを語った。
話は少し遡って、カナデが一度大阪に引き上げて、悩みながらも再び「ラジオスター」に復帰した4〜6週のエピソードからふり返ってもらった。

■「あのとき能登に戻らなかったことを後悔するだろうな、と」
──新聞記事に“被災地の救世主”のように書かれたことをきっかけに、カナデのなかで “自分は当事者ではない”という気持ちが次第に大きくなっていきました。一度はラジオをやめて大阪に戻ったカナデでしたが、鈴野のみんなの生きる力に再び背中を押され、ラジオに復帰することを決意します。このときのカナデの気持ちと決意をどのように演じましたか?
大阪で再び就職活動を始めて、カナデはまた一から自分の居場所さがしを始めようとしました。それでも、自分を待ってくれている「ラジオスター」の仲間──松本(甲本雅裕)、さくら(常盤貴子)、リクト(甲斐翔真)、多田(大八木凱斗)、西川(渋川清彦)のことを思うと、カナデはいてもたってもいられなかったのかなと思います。
きっとそれだけ、みなさんへの信頼があって、「この先の人生で、あのとき能登に戻らなかったことを後悔するだろうな」と強く思えたから、再び鈴野、そして「ラジオスター」に戻る決意をできたように思います。

■ 能登は訪れた人の気持ちをふっと軽くさせてくれる
──このドラマはフィクションですが、災害後の能登を生きる地元の皆さんを綿密に取材して作られたと聞きました。カナデとして『ラジオスター』の世界で生きることを通じて、どんなことを感じましたか?
このドラマには「被災地だから」ということだけではない、「今の能登」のリアルが詰め込まれています。私はこの作品に参加するひとりとして、能登の皆さんの「温度」にどうしたら近づけるか、ということを考えたのですが、結局「能登の温度に触れること」がいちばん大事なんじゃないかと思ったんです。
クランクイン前に土地のことを知るために訪れたのと、2週間にわたるロケとで、私は二度能登を訪れたのですが、協力してくださる地元の皆さんの明るさとバイタリティに心を奪われることばかりでした。
能登の皆さんは「被災地」であることの前に、「もっともっと能登の魅力っていっぱいあるよね」ということを懸命に発信していらっしゃって。その活動のひとつに「ラジオスター」の参考にさせていただいた「まちのラジオ」があります。

──能登の魅力って、どんなところなんでしょう。
能登を歩いていると、町も人も温かくて心地よい素朴さがあって、なんだか気持ちがふっと軽くなるんです。私はその「能登のやわらかい風」がドラマの映像にたくさん出ていればいいなと願いながら、カナデを演じていました。
もちろんこの作品が伝えたいことは他にもたくさんあるし、思いはひとつだけではないのですが。私は特に、その心地よい風と、能登の「楽しさ」を届けたいなと思いました。ドラマチーム全体も、そうした思いだったと感じます。
■ 能登に来たからこそ、自分と向き合うことができた
──能登に来て、カナデはどう変わったと思いますか?
きっとカナデも私と同じように「能登のやわかい風」に心を洗われたのではないかと思います。大阪で悩んで、人生の迷子になって、この場所にたどり着いたカナデは、能登に来て初めて気持ちを和らげてもらえた。静かに流れる能登の時間のなかで、いろんなことを感じながら、ゆっくりと自分と向き合う時間ができた。

能登にいると自然と力が抜けて、今この瞬間、この場所、そして出会えた人たちに感謝しようと思える。素朴な美しさや豊かさに目を向けることができる。そういう境地に、カナデはたどり着いたんじゃないかと思います。
せっかく能登に来たなら、この素晴らしい土地の優しさと楽しさを五感で感じないともったいない。私もそのことを、能登の皆さん、そしてカナデから教えてもらった気がします。
■ 最終回はみんなが「いい顔」で笑って
──明日いよいよ最終回ですが、見どころを教えてください。
完成した映像を見たら、カナデも鈴野のみんなも、すごくいい顔で笑っていました。「人は何かを手放すことで新しい風が吹き込んで、成長していくものである」ということが描かれた最終回になっていると思います。
未来はどうなるかわからないし、それが正解かどうかもわからない状態でチャレンジするというのは、怖いことだと思います。でも、カナデは能登で得た経験を胸に、その「怖さ」さえも楽しめる、たくましい人になった気がします。

どこにいても何があっても、カナデの能登への思いは続いていくし、カナデと鈴野のみんなはラジオでつながっています。ラジオを聴けばまたあの「やわらかい風」が心の中に吹きこんできて、背中を押してもらえる。
最終回でカナデはある決意をして一歩を踏み出します。カナデが能登からもらったものと同じように、このドラマを最後まで見てくださった皆さんが、ふっと気持ちが軽くなったり、やわらかい気持ちになっていただけたらうれしいです。
◇
夜ドラ『ラジオスター』(NHK総合)の最終回は、5月21日・22時45分から。20日・22時45分からは第31回が再放送される。
取材・文/佐野華英
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