『大阪・関西万博』を建築で振り返る…番外編「クウェート」「カタール」非公開VIPゾーンも

翼を広げたような形の「クウェート・パビリオン」前のエリアは、会期後半になると近寄れないほどの混雑となった(2025年9月27日/大阪・関西万博)
『大阪・関西万博』閉幕から200日が過ぎ、会場となった夢洲では大屋根リングなど各施設の解体が進む。来場者らの目を楽しませた各パビリオン建築も、今ではその多くが姿を消した。そんな中で、「『大阪・関西万博』を建築で振り返る」と題し、各パビリオンのありし日の姿をシリーズで振り返ってきたが、今回は「クウェート」と「カタール」中東の2か国のパビリオンを取り上げる。

万博期間中に会場を訪れた国家元首・首脳級は79か国・2国際機関の計91名。会場内に世界各国の要人をもてなす「迎賓館」(一般の来場者に非公開)を日本が整備していたように、参加国もタイプAのパビリオンを中心に、外交やビジネスなどで要人をもてなすのに使用する「貴賓室」を館内に備えていた。今回は、閉幕後にメディアに公開された「クウェート」と「カタール」の豪華なVIPルームを中心に紹介する。


◆ 一般来場者に非公開のゾーンで外交や商談も活発に
万博では、各国の技術や文化を紹介する展示やイベントのほかに、ビジネスマッチングのためのミーティングやイベントも日々開催されていた。ちなみに、サウジアラビア王国は、万博関連で700件という多くの一般向けイベントをおこなったのとあわせて、期間中に150件を超えるビジネスイベントも開催している。

そのため「タイプA」のパビリオンなどには、一般来場者向け展示スペースやカフェなど飲食スペース以外に、来日した要人、企業のCEO、他国の代表などが使用する貴賓室やビジネス交渉用の部屋が用意され、一般来場者とは別の入り口が設けられていた。
・ 流線型が印象的な「クウェート・パビリオン」の場合


翼を広げた流線型のフォルムが印象的な クウェートパビリオンは、砂丘に横たわって映像を見るなどの没入型の体験が人気のパビリオン。会期途中からは「並ばせてももらえない」ほど人気沸騰となった。

パビリオンの左側には展示の入り口があり、右側の階段を上がるとレストランがあったが、貴賓室へは左奥の専用エレベーターでアクセス。実は正面の翼部分は短辺で、奥に長い建物になっていて、一番奥にテラスつきの特別室があった。

貴賓室のインテリアは、ゴールドとサンドカラーでまとめられていてモダン。パビリオン建築の統括をおこなったNUSSLIグループのマネジャーは、「クエートの伝統的な要素と現代的な美学を融合させた」と説明。

部屋は2つのエリアに分かれており、奥は伝統的でフォーマルな座席配置「Diwania(ディワニア)」になっており、議論やコミュニケーションの場として使用。手前はくつろぎながらテラスを眺められるインフォーマルな場になっている。

天井には、建物の翼のカーブとリンクする形で、うねるような特注のシャンデリアが設置されており、ダイナミックな空間だ。カーペットもシャンデリアのカーブに合わせてデザインされている。
また、シャンデリアのカラーは、クウェートの伝統的な織物の柄からインスピレーションされた。すべての家具やシャンデリアは、VIPルームのための特注品とのこと。シンプルながらゴージャスな雰囲気がさすがだった。

・日本とカタールの文化が調和…隈研吾監修「カタール・パビリオン」の場合


「カタール・パビリオン」の建築は、伝統的な「ダウ船」にインスピレーションを受けたデザインで、隈研吾建築都市設計事務所が監修。カタールの帆船と日本の木組みから、両国の調和を表している。

展示は、カタールの自然や風景を映像やパネルなどで展示。壁面3面に天井から床までかかる、海洋地図の幻想的なブルーの刺繍カーテンが印象的だった。

カタールも展示用の入り口から、さらに奥に進んだ先に専用の入り口があり、2階に貴賓室がある。展示を見ているときには全く気がつかなかったが、こちらの部屋の窓から、展示室の様子を見下ろせるようになっていた。

赤いソファが置かれたVIP専用の部屋「マジリス」には、カタールの王族や政治家など75名のVVIP(超要人)も訪れたとのこと。ほかにこちらのスペースでは、イベントも多数おこなわれ、日本とカタールの共通点なども展示されている。


部屋に入るとまず目を引くのが、両側の壁にある大きな絵画で、2022年に外交関係樹立50周年の特別プロジェクトによる、日本の西垣肇也樹氏と、カタールのユセフ・アーメット氏による共同作品。よく見ると、日本語が書いてあったり、コロナ禍だったこともありマスクをつけた人がいたりする。また、別の絵画が電動で下がってくるようになっており、全12枚が展示できる。


目を引く真っ赤なソファは、キャスターがついており、イベント内容に合わせて簡単に移動して使用していたとのこと。両国が島国と半島ということから、生地には波模様が織られ、昔から使用されているアラビア文字で船の名前が書かれている。また日本人が畳を利用するように、カタールでは絨毯に座るという共通点から、床の絨毯が畳柄になっているのもおもしろい。

「カタール・パビリオン」館長のファイサル・アル=イブラヒム氏は、「日本とカタールは似ているところがあると思います。たとえば抹茶と和菓子でもてなすように、我々カタール人はアラビアコーヒーとデーツでもてなす習慣があります。畳と絨毯の文化もそうですし、遠い国にも関わらず似ているところがあることを発見しました」と語り、同国の親日ぶりがその話ぶりやパビリオンの作りからも伝わってきた。

中東以外の各国も、それぞれ貴賓室を用意していたが、半年という期間限定のスペースということもあり、シンプルなイベントホールだったり、リラックススペースだったりと、参加国によってVIPルームのつくり方はそれぞれ。しかし、そこは中東。やはりクエートやカタールなどは、豪華につくり込まれていた。
取材・文・写真/太田浩子 写真/Lmaga.jp編集部
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