寛政の「必殺仕事人」…謎の絵師「写楽」の正体に、どう関係?【べらぼう】

『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第44回より。元大奥総取締・高岳(冨永愛)から疑惑の手袋を見せられる重三郎(横浜流星)(C)NHK
江戸時代のポップカルチャーを牽引した天才プロデューサー・蔦屋重三郎の劇的な人生を、横浜流星主演で描く大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(NHK)。11月16日の第44回「空飛ぶ源内」では、源内の生存説を流した思いがけない人物が登場。それによって、この『べらぼう』がかつて日本のお茶の間を楽しませた「エンタメ系時代劇」のオマージュであることが浮き彫りになった。
■ 蔦重が「平賀源内の生存」を確信…第44回あらすじ
駿河国から訪れた青年・重田貞一(のちの十返舎一九/井上芳雄)から、獄死したはずの平賀源内(安田顕)の生存を告げられた重三郎。杉田玄白(山中聡)、朋誠堂喜三二(尾美としのり)、三浦庄司(原田泰造)、大田南畝(桐谷健太)と面会し、生きている可能性を探っていく。ある日店の戸口に、源内が田沼意次(渡辺謙)のために描いた戯作のつづきの原稿が置かれてあり、重三郎はそれを「源内先生にしか書けない」と断定した。

原稿に添えられた待ち合わせ場所を訪れた重三郎だが、そこにいたのは元老中・松平定信(井上祐貴)だった。定信は、元大奥総取締・高岳(冨永愛)が保管していた、戯作に書かれた「死を呼ぶ手袋」を重三郎に見せる。さらにその場に同席していた三浦や長谷川平蔵宣以(中村隼人)の証言から、手袋に毒を仕込んだ犯人が、自分を追い落とした「傀儡好きの大名」だと推理し、この仇討ちに加わるよう重三郎に要請した。
■ 1年かけて『必殺仕事人』集結、巨悪を倒す
アンダー30の皆様には信じられないかもしれないけど、かつて日本のテレビのゴールデンタイムは、毎日のように時代劇が放映されていた。『水戸黄門』『暴れん坊将軍』『桃太郎侍』『鬼平犯科帳』『必殺仕事人』などなど、名作シリーズを上げたらきりがないぐらいだ。そしてこれらのエンタメ系時代劇の9割は、正義の味方の主人公が、江戸に跋扈(ばっこ)する悪人をバッタバッタと切り倒して大団円という、一話完結の勧善懲悪ものだった。

しかし、時代劇はなにかと予算がかかるうえ、「主人公側は絶対的な正義で、悪い人は死ななきゃ治らない」という勧善懲悪の構図が、時代の変化とともにそぐわなくなってきた。「鬼には鬼になった理由がある」ということを丁寧に描いた『鬼滅の刃』がロングランヒットしているのを見ると、やはり善と悪がまったく相容れない世界観は、21世紀の大衆には受け入れがたくなったのだろうなあと、納得と同時に寂しさを感じたりもする。
さて、『べらぼう』に話を戻すと、ついに正体を暴かれた一橋治済(生田斗真)の造形、まさに前述の勧善懲悪型時代劇のラスボスの雛形というか、悪役のエキスを煮詰めてとんでもないキメラを生み出したかのような雰囲気なのだ。なぜ治済があんな風になったのかについては、その出自から「トップに立てない代わりに、トップの座をもて遊べる存在になろうとした」という推測が語られはしたが、それで「治済かわいそう・・・」って同情した人は、まずいなかったと思う。

特に最近の大河ドラマでは、ここまで同情も共感もできない絶対的なヒールは珍しかったのだけど、かつての時代劇が1時間の枠で「主人公がある事件に関わり、最後は悪人をやっつける」という物語を描き切ったのと同じようなことを、『べらぼう』は1年という壮大な時間をかけてやろうとしたのではないだろうか。そして蔦屋重三郎は、治済という巨悪を倒す「寛政の必殺仕事人」の一人、ということなのだろう。
■ 写楽=平賀源内?待ち合わせに現れたのは…
そう考えると、今週の『べらぼう』は、『必殺仕事人』で言うと仕事人たちが「晴らせぬ恨みを晴らしてください」と依頼される、カタルシス展開の導入部にやっと到達ような感じだけど、ここで大きな鍵を握るのが、平賀源内になるとは思わなかった。しかも、この時期に蔦屋に出入りするようになった十辺舎一九が、かつての田沼意次の所領で、源内が匿われたという都市伝説のある相良国の隣の駿河国出身ということに目を付けて、重三郎に「生存説」を吹き込む重大な役割を担わせるとは・・・。

さらに、「東洲斎写楽」がまだ登場していないということで、写楽が生き延びた源内先生では? とミスリードさせる仕掛けを巧みに作っていたのも憎い。源内が役者好きであり、写楽の作風とかぶるところがある西洋美人画を描いていた(ちなみにこの絵は実在している)のは確かなので、信じかけた視聴者も結構いたのでは。というより、当時の江戸も、平賀源内生存説は少なからずあったそうなので、写楽が発表された時「写楽=平賀源内」説を唱えた人もいたんじゃないかと思う。

しかし、源内の生存を確信して、待ち合わせのお寺にやってきた重三郎の眼の前に現れたのは、懐かしき源内先生ではなく、「ふんどし野郎」こと松平定信だった。源内先生はやっぱりいなかったけど、源内をよく知る重三郎すら「生きてる」と信じ込ませるほどの仕掛けを考案するとは、やはり切れ者政治家の頭脳は伊達ではなかった。というかあの『一人遣傀儡石橋』という、重三郎もだまされるほど、源内完コピな戯作を書いた人誰なの? もし定信君だとしたら、すぐ蔦屋でスカウトするべきだ。
■ 今後「写楽の謎」とどう関係?仇討ちが開幕
という戯言はさておき、どうやら「傀儡好きの大名」を成敗する舞台を作るために、「東洲斎写楽」という絵師を生み出すという流れとなりそうだ。それは一人の特定の画家に託すのか? あるいはこれまで蔦屋に関わった絵師や戯作者たちが、共同で作り上げていくプロジェクトの名称なのか? なによりも写楽が独特の役者絵を作り上げることが、なぜ治済を追い詰めることにつながるのか? など、とにかくまだまだ謎が多い。

ただ、蔦屋重三郎がプロデュースした写楽によって、幕府の影の最高権力者を打ち倒すことができれば、それは勧善懲悪の爽快感だけでなく、極上のエンターテインメントはここまで社会に大きな影響を与えることができるという、すべてのエンタメ関係者およびエンタメ愛好家たちへの、最大級の励まし&リベンジとなるに違いない。あのコロナ禍で「エンターテインメント不要論」が叫ばれたなかで、そのカウンターとして企画されたという『べらぼう』。その二重の意味での仇討ちの幕が、ついに開かれようとしている。
◇
大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』はNHK総合で毎週日曜・夜8時から、NHKBSは夕方6時から、BSP4Kでは昼12時15分からスタート。11月23日の第45回「その名は写楽」では、重三郎が松平定信から「傀儡好きの大名」の仇討ちに手を貸すように言われ、そのために「東洲斎写楽」という絵師を誕生させるところが描かれる。
文/吉永美和子
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