光る君へ彰子役・見上愛インタビュー「捉え方は人それぞれ」
吉高由里子主演で、平安時代の長編小説『源氏物語』の作者・紫式部(ドラマの名前はまひろ)の人生を描く、NHKの大河ドラマ『光る君へ』。見上愛は、まひろのソウルメイト・藤原道長(柄本佑)の娘で、一条天皇(塩野瑛久)の中宮となった藤原彰子役で出演中だ。
我を出すことができなかった彰子が、まひろと『源氏物語』に出会ったことで変わっていく姿も、最近の大きな見どころとなっている。素顔は、初期の彰子とは正反対というほどほがらかな見上に、彰子を演じるうえで心がけたこと、まひろや天皇との関係などについて聞いた。
■ 彰子の心情の変化「少しずつ段階を踏めるように計算」
──彰子は「まだ心の内をうまく表現できない子」ということで、あまり表情を出さないようにしていたと、あるインタビューで読みました。ほかにも工夫していたことはありますか?
初期はそうでしたね。第35・36回ぐらいが、彰子が大きく変化する時期でした。無表情の感じから、まひろや敦成(あつひら)親王・・・いや、敦成はまだ(取材時は)生まれてないな(笑)。敦康親王ですね。
(注:敦康親王は、彰子が養育している皇后・定子の息子。敦成は第36回で彰子が産んだ皇子)
──確かにややこしいですよね。
台詞でもめっちゃ間違えます(笑)。『源氏物語』やまひろの言葉を通して、自分の気持ちを表現するための言葉を知っていって、ついに帝に告白してしまうと。
そこに至るまでの変化の付け方は、すごく工夫しました。彰子の心情はジェットコースターみたいに変化しているので、0が100になるのではなく、「ここではこのぐらいの表情かな?」「これぐらい感情を乗せてもいいかな?」と、少しずつ段階を踏めるように計算して。
──そういう長い積み重ねを経ての「お上、お慕いしております!」だったと。
そうですね。ここから彰子はもっと強い女性というか、しっかりとした芯のある、国を守る女性になっていく。その聡明さも、ちょっとずつ出していけるよう意識しています。
■ まひろに心を開いた理由「捉え方は人それぞれ」
──彰子にとって、まひろとの出会いは本当に大きかったですね。
大きいと思います。もちろんお父さん、お母さんはすごく大事にしてくれましたけど、彰子を一人の人間として・・・中宮だからとか、そういうこととは関係なく向き合ってくれた、初めての大人だと思うので。
──第33回で、まひろにだけ自分の好きなものを打ち明けた理由について、視聴者の間ではいろんな説が飛んでいましたが、彰子的にはどんな理由があったのですか?
それ、すごく難しいんです。1つの話の中でも描かれてない時間がすごくあることが、前提になってしまっているんで。だから「あ、これは急に(変わったように)見えるだろうな」と、演じるときもすごく難しいなと思っています。
──実際は出会ってから日にちが経ってるから、ある程度お互いを観察できている状態で、あの会話がかわされたと。
急に(心を)開いたわけじゃなくて、自分が好きな一条天皇が心惹かれる物語を書いている人ということで、もともとすごく興味があって。さらに、誰にもゴマをすることなく、はっきり物事を言うところとかを見て、徐々に「この人だったら、自分の本心を言えるかも」と変化しての、あのシーンだったんじゃないかなと思いますね。
「ほかの女房が『こうしてください』と言うのに対して、まひろは彰子のやりたいことを尊重したからでは」という考察も見ましたけど、捉え方は人それぞれで、どれが正解とかはないと思います。
──今、「自分が好きな一条天皇」と言われましたが、やはり彰子は最初に会った時から、一条天皇が好きだったんでしょうか。
台本のト書きだと、割と一目ぼれでした(笑)。「会った瞬間からときめいているけど、表情には出さない」という感じでしたので。でも自分の「好き」という思いを、どう出していいかわからなかったし、どう接していいかもわからない。単に好きというだけじゃなくて、位的にもめちゃくちゃ尊い人なので。
その気持ちを「出していこう」というのではなく、ついあふれたのが、第35回のシーンだったと思います。そこまでは、彰子は帝に本心が伝えられなかったので、実は好きということは、わからなかったかもしれない。
──いや、少なくとも視聴者にはダダ漏れでしたよ。
本当ですか? よかったです(笑)。
──そうやってまひろが「好き」の出し方を教えてくれたわけですね。
うーん・・・「教えてくれた」というと、ちょっと違う気がして。まひろは本当に、彰子のなかにあるいろんな感情や言葉を、少しずつ引き出す手助けをしてくれたんです。「どうやったら帝に好かれるか」を教えてくれた人はほかにもいるけど、まひろは「こうしたらいいんだよ」ということではなく、眠っているものを引き出してくれたという感じです。
■ 今後、彰子と敦康親王の関係はどうなっていく?
──敦康親王との関係の変化も、今後の見どころとなっていくかと思いますが。
今までは、年の離れた仲の良い子ども同士という感じでしたけど、もっと親子っぽくなっていきます。「ずっと甘えてちゃいけないよ。お父様のような立派な帝になれるよう、がんばっていこうね!」と(笑)。だから彰子としては、親と子という気持ちは変わらないと思うんですけど、『源氏物語』と重ねてみたときに、周りからはどういう風に受け止められるんだろう? と。
──今の時点でも「これは間違いなく、光る君と藤壺だ」と期待してる人も多いですし。
これからの敦康親王の行動を、すごく恋愛っぽく見る人もいるかもしれないし、親子愛と受け取る人もいると思います。あまり「こうです」と、一つの見方にはならないように、意図的に作っているのかもしれないですね。
■ 初の大河ドラマ出演「関わっている人の多さ」に驚き
──確かに彰子と敦康親王の関係性に限らず、簡単に断定できないことが多いのが『光る君へ』のおもしろさですからね。これが初めての大河ドラマ出演ですが、改めて「すごいなあ」と感じることはありますか?
まずはセットです。私はテレビで視聴者として見てからクランクインしたんですけど、撮影に入ってから「あ、これセットだったんだ」って(笑)。ロケに行って、実際にある建物で撮ってると思っていました。それぐらいセットの一つひとつが、(場面に)映らないところまで凝っていることに、すごさを感じます。
とくに我が家(後宮の藤壺)は御簾の飾りまで豪華だし、季節が変わると、お庭のお花とかも全部入れ替えるんですよ。だからわざわざ「集中しよう」と思わなくても、そこに入るだけでスッと集中できるという、そういう空間になっています。
──セットの力ですね。
あとはやっぱり、関わっている人の多さ。スタッフさんとか、所作指導や考証の先生とか、大河ファンのみなさんとか。今回は大津に来ましたけど、全国各地に応援団がいて、みんなで盛り上げてくださってるんだなあと感じます。あとは、サウジアラビアで見てくださってるという方もいて、すごくグローバルなんだなあと思いました。
■「民を思って行動するようになっていく」彰子に注目
──今後の見どころを教えていただけますでしょうか。
後半もまだまだいろんな出会いや別れがあり、関係も変わっていきますので、そこに注目していただけたら、よりおもしろく見られるんじゃないかと。彰子は、これからは帝と志を同じくして、民のことを思って行動するようになっていくので、その思いを軸にして、ブラさずに演じていこうと思っています。
──ちなみに見上さん自身が、個人的に好きな登場人物はいますか?
やっぱりききょう(清少納言/ファーストサマーウイカ)さん。ずっと同じシーンがなくて、この前リハーサルで初めてお会いしたときに「本物だ! 本物のききょうだ!」って(笑)。向こうも「本物の彰子だ! やっと会えた!」って、2人で抱き合いました。
──では清少納言にも仕えてほしかったと、思ったりしますか?
うーん・・・2人は大変なので、まひろさんとどちらかでいいかな(笑)。
取材・文/吉永美和子
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