閉店寸前のスーパーがとった行動、営業継続になった方法とは?

1988年のオープン以来、地域住民の暮らしを支える「コープミニ月が丘店」(2023年12月・兵庫県神戸市)
「買い支え」という言葉を一度は聞いたことがあるだろうか。株取引などで使われる金融用語だが、消費者が進んで購入することで生産者や販売者を支えるという意味で使われることも多い。そんな買い支えに関するSNS投稿が話題となった。
その投稿とは、「住宅街に唯一ある小さなスーパーが閉店候補にあがり、最低限必要な売り上げ金額と毎日の売り上げが店頭に掲示されるようになったことから、地元の人たちが通うようになった。急になくなる前に言ってくれたのでむしろ良かった」といった内容。
これに対し、「これは良いアイデア」「苦渋の選択だったと思うが、むしろやさしいというか、やるべきことだったんだろう」「閉店決まってから『好きだったのに』って押し寄せたりしがちだけど本当なら普段から買い支えないとなんだよね」と、店側の取り組みに多くの共感が寄せられ、10数万もの「いいね」がついた。
■ 「もう少し早く知らせてほしかった・・・」住民の声で決断

売上金額をつまびらかにしたのは、「生活協同組合コープこうべ」(所在地:神戸市東灘区)が大阪府北部と兵庫県内で運営する130以上のスーパー型店舗のうち、2023年度をもっての営業終了候補にあがった7店舗。日本最古の消費生活協同組合であるコープこうべのお店は、古くから「コープさん」と呼ばれ、地元では生活に欠かせない存在となっている。
コープこうべの広報担当者によると、別店舗の閉店時に「もう少し早く知らせてほしかった。私たちにも何かできたはず」という声が多くあがり、営業終了候補店であることを組合員に周知。このような取り組みを今年度はじめておこなったという。売上額を掲示した7店舗は、結果的に3店舗が営業継続となり、やむをえず4店舗は3月末までに閉店することになった。
■ なくなれば死活問題、地域を挙げて「買い支え」

営業継続となった店舗のひとつ、神戸市西区の住宅地にある「コープミニ月が丘」では、地域の自治会が掲示板や回覧板でこの知らせを住民に広く周知。買い支えだけでなく、店舗での廃棄によるロスを少しでも減らそうと「てまえどり」の呼びかけなどもおこなわれた。
1977年に開発がはじまったこの住宅地には現在3200人ほどが暮らす。地区内にコンビニはなく、スーパーはこの「コープミニ」のみ。もし店舗がなくなれば車で15分ほど走らなければならない。取材中には路線バスに乗って買い物にやってくる人も見かけたが、このような利用客にとってこの店がなくなるのは死活問題だろう。
■ 安心できない状況は続く

利用者側だけでなく店側も、ニーズの吸い上げなど以前からおこなっていた品ぞろえの改善をさらに強化したり、日々の仕入れ精度を上げるなどしたという。このような取り組みが功を奏し「コープミニ月が丘」は閉店を免れたが、現在も売上額の報告は継続している。閉店候補の基準となる数字があり、それを下回る状況が続けばまた、閉店の危機が訪れる。買い支えは日常の中にあってこそ、だ。
健康なうちは、近所のお店がなくなっても「隣町のスーパーに行けばいいや」と思えるかもしれない。だが体力が衰えたり怪我や病気で思うように動けなくなれば、そうもいかない。どんな状況になっても、生きている限り日々の暮らしを営まなければならないのだ。生活を支える店の存在は、暮らしそのもの。
今回の投稿に寄せられた多くの共感は、身近で急に店がなくなり驚いたり困った経験のある人が少なからずいることを示しているといえるだろう。結果的に閉店となった店舗もあったものの、売る側と買う側とがイーブンな立場でコミュニケーションをとることで、維持できる日常があるのだと、あらためて知ることができた。
さて筆者も、日々の暮らしを送る地元の店々へ買い物へ出かけることにする。

取材・文・写真/脈 脈子
「コープミニ月が丘」
住所:神戸市西区月が丘5-1-1
時間:10:00〜20:00
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