【どうする家康】有名な逸話が続出のなか、意外な描写に驚き

2023.11.17 17:00

『どうする家康』第43回より、出方をうかがう早川秀秋(嘉島陸)(C)NHK

(写真8枚)

古沢良太脚本・松本潤主演で、江戸幕府初代将軍・徳川家康の、厳しい選択だらけの人生を描きだす大河ドラマ『どうする家康』(NHK)。11月12日放送の第43回『関ヶ原の戦い』では、関ヶ原での戦闘の経過を、最新の情報に基づいて再現。特に「裏切り者」の名を受けたある武将の、従来になかったスタンスに注目が集まった(以下、ネタバレあり)。

■ どうする家康、留保していた小早川秀秋の動き

1600年9月15日、井伊直政(板垣李光人)の一番槍を皮切りに、家康と石田三成(中村七之助)率いる両軍15万の大群が関ヶ原で激突。当初は三成側が優勢だったが、毛利輝元(吹越満)の軍は来ず、家康と密約を結ぶ吉川広家(井上賢嗣)は動こうとしない。機は熟したと見た家康は、自らの軍をあえて前進させて味方を鼓舞する。

すると両軍どちらに付くか留保していた小早川秀秋(嘉島陸)が、勝機は徳川にあると確信。大谷吉継(忍成修吾)の陣に攻めかかり、三成側の軍は総崩れとなって、その日のうちに家康の勝利が決まった。島津家の兵を追いつめた際に腕に傷を負った直政は、家康がこれで天下人になったことを、涙を流しながら喜ぶのだった・・・。

■ お約束トピックとこれまでにない関ヶ原の戦い

徳川家康の人生の、最大のクライマックスと言える「関ヶ原の戦い」。最近の大河でこの戦を取り上げた『真田丸』(2016年)では、忍びからの結果報告だけで終了するという憂き目に遭ったので、久々にガッツリと戦の模様が描写されることに期待する声が高まっていた。そしてこの43回の蓋を開けてみると、お約束のトピックと「調べてみたら、本当はこうだったんですよ」という新説が交わる、これまでにない関ヶ原の戦いが描かれていた。

『どうする家康』第43回より、戦場に立つ本多忠勝(左・山田裕貴)と徳川家康(松本潤)(C)NHK
『どうする家康』第43回より、戦場に立つ本多忠勝(左・山田裕貴)と徳川家康(松本潤)(C)NHK

まずは戦がはじまる直前、家康と本多忠勝(山田裕貴)&直政との間で交わされた、昔を振りかえりつつも、久々の大戦にワクワクしているかのような会話。この時点でSNSでは、「殿の圧巻の経験値!」「幾度も死線をくぐり抜けてきた、徳川軍団。関ヶ原や石田三成ごときで今更動じない」「殿と一緒に戦うことが好きって、最強すぎる!」と、盤石ぶりに感心するコメントが。

そして、周囲を敵に囲まれた圧倒的不利な陣営だったが、広家は約束通り軍を動かさない。その言い訳が「兵士が食事中なので」だったというのは「宰相殿の空弁当」なんて故事が残るぐらい有名な話だが、今回は嘘ではなく本当にガツガツ食ってる姿が出てきて、歴史好きからは「弁当タイムキター!!」「部下のお弁当タイムを気遣うやさしい上司・吉川広家(すっとぼけ)」「喰っとる場合かァァァァ」など、喜び(?)の声が上がっていた。

■ 「裏切り者」代名詞のような秀秋の汚名返上

そして関ヶ原の一番良い位置から、両軍の様子を探ったうえで、結局は三成を裏切って家康側に付いた小早川秀秋。これまではどちらに付くかさんざん迷ったあげく、家康に催促の鉄砲を撃たれたのにビビって寝返った・・・と言われていたけど、ギリギリまで状況を慎重に見据えた末の行動であり、鉄砲を撃ちかけられた事実もないという説が有力視されるように。その結果『どう家』では、これまでにない「デキる男」な秀秋像が誕生した。

『どうする家康』第43回より、大谷吉継の陣に攻めるよう指示する早川秀秋(嘉島陸)(C)NHK
『どうする家康』第43回より、大谷吉継の陣に攻めるよう指示する早川秀秋(嘉島陸)(C)NHK

これにはSNSも、「小早川秀秋、こんなズル賢いイメージなかった。今までジタバタしてるイメージで描かれてなかった?」「小早川は日和見ではなく見極めなのだね」「史上最強の小早川秀秋じゃない?」「怨霊に悩まされて亡くなったりしなさそう」「小早川秀秋くんをかっこよく描いてくれてありがとう」など、「裏切り者」の代名詞のような秀秋の汚名返上を歓迎する声が多かった。

■ 直政生還に安堵、喜びつつも油断大敵

一方で、負けた三成側は普通に戦うよりも難しい「退却戦」を強いられることに。とりわけ敵陣のど真ん中を命がけで突破した、島津義弘軍の壮絶な退却は「島津の退き口」と讃えられている。その大勝負を受けて立ち、実際に手傷を追ってしまったのが井伊直政だ。冒頭で「取り立ててくださってありがとうございました」など、これは死亡フラグ? な発言を連発していたのでドキドキしたが、生還できたことに安堵した視聴者も多かっただろう。

『どうする家康』第43回より、直政(板垣李光人)を介抱する家康(松本潤)(C)NHK
『どうする家康』第43回より、直政(板垣李光人)を介抱する家康(松本潤)(C)NHK

SNSでも、「直政そいつは追っちゃあダメなやつだ!」「井伊直政に致命傷を与えるための装置と化した島津勢」と盛り上がったのと同時に、直政のフラグ回避にも「あれほど静謐な目と心で関ヶ原の勝ちを取った殿が、直政の危機に動揺したの凄く良かった」「その銃撃受けた体で無理して動いたり、過労押して交渉に走り回るな」と、喜びつつも油断大敵と言わんばかりのコメントがあふれた。

結論から言ってしまうと、直政はこのとき受けた傷も一因となって、徳川幕府ができる前に人生の幕を下ろすことになってしまう。そして次回予告を見る限りは忠勝も、今回はほぼ出番なしの榊原康政(杉野遥亮)も、どうやら遠からず退場の気配が濃厚となってきた。これからは、得るものもあれば失うものもありな状況となりそうな家康だが、その分ラストに向けて新しい出会いも用意されているはずなので、それを心の慰めとしよう。

『どうする家康』はNHK総合で日曜・夜8時から、BSプレミアムは夕方6時から、BS4Kは昼12時15分から放送。11月19日放送の第44回『徳川幕府誕生』では、ついに家康が征夷大将軍となって江戸に幕府を開くと同時に、成長した秀頼(作間龍斗)を擁する豊臣家が、逆襲の機会をうかがう様子も描かれていく。

文/吉永美和子

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