廃業寸前の銭湯も復活、神戸の台所で親しまれる商店街を歩く

8月に復活した「湊河湯」。夜はネオンサインが目印に
■ 風呂上がり、地ビールと市場の逸品が味わえる「湊河湯」
だいぶ満足したところで今日の散策のゴール地点である「湊河湯」へ向かう。この湊河湯、創業74年の歴史を持つ古い銭湯なのだが、この場を守り続けてきた店主・元木淳さんが2023年に亡くなり、以来、休業となっていた。
その息子で、現オーナーである元木英雄さんが今後の対応について悩んでいたところ、京都を拠点に廃業寸前の銭湯を引き継ぐ事業を展開している「ゆとなみ社」から声が上がり、同社のメンバーであった松田悠さんを新店主に迎える形で経営が続けられることになったという。

営業再開にあたって建物を全体的に補修し、番台を撤去してロビースペースを作り、立ち飲みカウンターを設置するなどの改修工事をおこない、晴れてリニューアルオープンとなったのが2023年8月11日のこと。
その「湊河湯」にやってきた私。まずはもちろんお風呂に入らせていただく。浴場内には電気風呂、ジェットバス、スチームサウナ、水風呂、そして露天風呂まである。スチームサウナはしっかりとした熱さで、体を芯まで温めてから水風呂に入り、露天風呂スペースで外気を浴びて、と心地いい時間を過ごすことができた。

さっぱりしたところで、ロビーに戻り、手触りのいいカウンターで待ちに待った風呂上りの一杯をいただく。ドリンクメニューには、新開地発のクラフトビールである「神戸湊ビール」の生や、趣向を凝らしたチューハイ類、ハイボールなどが並ぶ。さっき私が飲んできた「アップル」や、神戸市長田区の兵庫鉱泉所で生産されているサイダー的な味わいの「ワンエース」など、ソフトドリンクも充実していた。
さらに、それらを飲みながら味わえるおつまみメニューには「原商店のおいしいとうふ」「大貴のかまぼこ」など、先ほど歩いてきた湊川市場の逸品たちが並んでいるではないか。こういうの・・・とてもうれしい。

■ 復活から約2カ月経ち、店主が感じる変化
キリッとした苦味があって美味しい神戸湊ビールのピルスナーを飲みつつ、若き新店主である松田悠さんにお話を伺う。
復活から約2カ月経ち、もともとの常連さんもかなり戻ってきてくれた感触があるという。それに加えて新規客も増えているそうだ。リニューアルオープン後は従来よりも営業時間が格段に長くなり、以前は時間的になかなか来られなかったお勤め帰りの方が初めて来店したりと、喜ばれることが多いんだとか。

リニューアルに際し、ロビースタイルになった入り口付近は大きく変わったが、浴場内部については徹底的にクリーニングした以外、昔の設備を維持した。その一方でシャンプー、リンス、ボディソープは備え付けのものを無料で利用できるようにし、脱衣所のドライヤーも最新式のものを用意している(こちらも無料で利用できる)。サービス内容はリニューアル前に比べてますます充実しているのである。
ロビーは広々と快適で、デザインが可愛いオリジナルグッズなども販売されている。ちなみにフロントの脇にはレコードプレーヤーが置かれ、そこで再生されるレコードがスチームサウナ内部のスピーカーからも流れるという仕掛けになっている。
リニューアルにともなってかなりの費用が発生してしまったため、「売り上げ的にもカウンターで飲食してもらえるとめちゃくちゃ助かるんです。燃料費も上がってるし」と松田さん。

つまみ類は、「リニューアル工事を依頼した建築集団「々(ノマ)」のみんなと工事期間中よく一緒にここで飲んでいて、そのときに市場で買ったり、教えてもらったりしたものがほとんどです」とのことだ。
今回の工事にあたって特にこだわったのが立ち飲みカウンターで、「人造石研ぎ出し」という手法で作られているそう。ところどころに埋め込まれているのは、松田さんたちが実際に拾いに行った湊川源流の石と、オーナーである元木さんが造園業の仕事でよく使用している石で、そんな思いも込められたものになっている。
オープン後の日々ついて松田さんは「とにかくバタバタでした」と語る。銭湯に関わる仕事がしたいと考えた松田さんがゆとなみ社に入社したのは2022年6月のこと。それから1年間、京都市下京区の「サウナの梅湯」と大阪府門真市の「みやの湯」のスタッフを兼任して現場仕事を学んだ。
とはいえ、銭湯は現場によって業務内容が大きく異なる。「銭湯ごとに個性があって、マニュアルがあってないようなものなんです。特にここは先代が亡くなってしまったので、ノウハウがわからないまま一から試していくしかなくて」と、松田さんが特別に見せてくれた銭湯裏の設備室には見た目にも複雑そうな機材が並び、これだけでも一から覚えていくのにさぞかし骨が折れただろうと思う。

それでも、湊川市場が大好きで頻繁に遊びに来ていた松田さんは、かつて自分が常連客でもあった湊河湯に関われることがとてもうれしいのだという。
「ここって本当に立地的に最高やなって思うんです。湊川市場ってすごくないですか? 活気があるし、しかも女性が強くて、八百屋さんでも果物屋さんでも喫茶店でも女性が活躍してる感じが好きですね。あと、湊河湯に来るお客さんはみんな銭湯の使い方が上品で、すごくきれいにしてくれるんです」と、湊川市場周辺の印象について語ってくれた。
■「湊河湯が続くことになってよかったなと」
そんなお話を聞いたあと、湊河湯のおつまみメニューにも採用されている東山商店街の「原商店」をたずねた。創業71年になるという老舗豆腐店で、現在は初代から数えて三代目となる長男・原諭史さん、次男・原武史さん、三男・原宏史さんの三兄弟が主に店頭に立っている。
昔ながらの製法で作られているという豆腐や、三兄弟のお母さんが担当しているという厚揚げなどを買わせてもらったあと、三男の宏史さんに「湊河湯」についてたずねてみた。

子どもの頃から「湊河湯」に通っていた宏史さんは、リニューアルオープンの話を聞いた当初、「もし、昔から通っていた町のおじいちゃんとかおばあちゃんが行きにくい雰囲気になってしまったら残念やなと感じていた」と、少し不安にも思っていたと胸中を語る。
しかし営業再開後、その印象は変わった。「始まってみたら全然そんなことなくて、おばあちゃんたちも相変わらず行ってるし、若い人も来てる。それを見て、湊河湯が続くことになってよかったなって思いました」と宏史さんは言う。
「湊川市場」周辺を歩いてみて、新生・湊河湯がオアシス的なスポットして地域の方に愛され、また、湊川市場を知らなかった新しい人たちをこの町に呼び込むきっかけになっていく、そんな予感がしたのだった。私もあのお風呂と、そして風呂上りのおいしいお酒を楽しみに、またのれんをくぐろうと思う。
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