廃業寸前の銭湯も復活、神戸の台所で親しまれる商店街を歩く

2023.10.19 17:05

8月に復活した「湊河湯」。夜はネオンサインが目印に

(写真21枚)

神戸・新開地あたりを散歩するのが好きだ。場外舟券売り場があって昼間から飲める店も多い「新開地駅」周辺から、「新開地二丁目商店街」のアーケードを通って「湊川公園」まで、さらにその先の「湊川商店街」へと足を延ばすと、町の雰囲気が徐々に変わっていくのがわかって楽しい。

だんだん生活感が増していくようなそのルートをさらに先へと進んでいくと、「湊川市場」へたどり着く。「湊川市場」は「東山商店街」や「マルシン市場」を含む複数の市場・商店街から成っていて、「神戸の台所」とも呼ばれるエリアである。

近所のスーパーより断然安くておいしそうな野菜や果物、魚介類や総菜を売る店が道の両側にひしめき(湊川市場内に約400ものお店があるそうだ)、ここまで来るといつも急に気持ちが買い物モードに切り替わる。

さらに、市場内には飲食店もあるし、テイクアウトできそうなものもいろいろ売られているから、食べ飲み歩きモードもそこに加わってくる。今回は、湊川市場を散策しつつ、リニューアルしたばかりの「湊河湯」の様子を見てきた。

取材・文・写真/スズキナオ

■ なんだかホッとする、地元民に愛され続ける名物店

私がこの辺りに来たら立ち寄るのが「鼻知場商店」だ。1960年創業の老舗で、もとは惣菜なども販売していたそうだが、今はひやしあめとレモン水、そして巻き寿司やいなり寿司を売る店になっている。ひやしあめとレモン水はそれぞれ一杯50円。シャリシャリと細かな氷も入った甘酸っぱいレモン水が私は大好きで、ここまで歩いてきたご褒美だと思って飲んでいる。体力が一気に回復する感覚だ。

レモン水もひやしあめも、90歳になる店主が毎日仕込んでいるんだとか。そう聞くとますますありがたい味わいに思えてくる。

その「鼻知場商店」からすぐの場所にある、カラフルな縦じまののれんが目印の「稲田串かつ店」にも寄って行くことにする。こちらも創業50年以上になるという老舗で、店頭で串かつを食べている人の足がのれんの隙間からいつも見えて気になっていた。

牛肉、いか、あじ、うずらの卵など8種類ある串かつはどれも1本120円。ラムネやアップルといったドリンクも120円なので計算が楽である。アルコール類は販売しておらず、飲みたければ持ち込んでいいシステム。

そう聞いてノンアルコールチューハイ(のちほど銭湯に行く予定なので)を用意してきてはいたが、しかし、神戸のご当地ドリンクとして名高い「アップル」がせっかく飲めるならとそっちを注文することに。「アップル」という名なのにみかん水っぽい味がして、これが串かつのソース味に絶妙にあうのだ。

好きに取って食べてもいいし、注文すれば揚げたても

飲んで食べて一息ついたところで、市場散策を再開。焼きたてのするめが買える「スルメのおかやん」の香ばしい匂いに誘われて列に並んでいると、店主がするめの端っこの部分を分けてくれる。これがもうアツアツで、甘じょっぱいタレの味も抜群で、今すぐこの場で生ビールを飲みたくなる。

豆腐屋さんの店頭で豆乳を飲んだり、ハートフルみなとがわというショッピングセンターのなかにある製麺店「マルヤス食品」で中華麺を買ったり、楽しい時間を過ごした。

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