真摯に役を生きる宮沢氷魚、発達障がいを抱える天才画家に挑む

2023.5.26 07:45

映画『はざまに生きる、春』で主演を務めた俳優・宮沢氷魚

(写真8枚)

■ 監督、現場を支えたプロフェッショナルな座組

──そんな教育的な意味でも、この映画は良くできていると思うんですが、まず恋愛映画としての機微が素晴らしいと思いました。僕は、この葛里華さんという監督は初めて拝見したんですが、なかなかセンスがあって。それにスタッフがみんな行定勲組じゃないですか。

そうなんです。すごい豪華な。

──製作の「セカンドサイト」が行定監督の事務所ですし、撮影の福本淳さんも録音の伊藤裕規さんも。

福本さんもすごくユニークなおじさんだし、ほんとに職人さんの集まりでした。

──伊藤さんも音に関してはホントにこだわりがすごいし。

職人さんたちが監督のやりたいように合わせてくれる。みなさんキャリアがあるのに、葛監督が監督であるということをすごく大事にしていて。こんなイメージなんです、と監督が上手く言葉にできない時には「分かった、じゃあこう撮ろう」と、あくまで監督発信を尊重する。素晴らしい環境でしたね。

──徹底的にプロフェッショナルに仕上げる。その効果が今回の映画にもすごく出てると思うんですよね。新人監督とは思えない。

監督も実体験を基にこの映画を作ってるわけですから、こだわりが。

──そうなんですか!

そうなんですよ。監督が以前発達障がいの方に恋をして。監督は、本業では漫画のエディターをされてて。

──そうらしいですね。調べたら結構有名な漫画を担当されてて。

だから、小西桜子ちゃん演じる小向春ちゃんに葛監督の心情が投影されているんです。だから春ちゃんに対する演出はすごく厳しかったです。

■ 相手役・小西桜子に寄せる信頼

──なるほど。でも小西桜子さん、見事に応えてたと思いますけど。

本当に、ほかに春ちゃんを演じられる女優さんが思い浮かばない。監督の桜子ちゃんに対する要望を近くで聞いていると、指示がすごく難しいんですよ。自分の実体験を基に作っているから、昔の巨人の長嶋監督がバッティングを教えるときのようで、「ここでグッとして」っていうのがあるじゃないですか、ニュアンスで伝えるみたいな。僕にはよく分からなくても、ちゃんと桜子ちゃんは自分のなかに落とし込んで演じてるから、本当に素晴らしいと思いました。

(c)2022「はざまに生きる、春」製作委員会

──監督からの氷魚さんに対するリクエストはありましたか?

時々ありましたけど、結構自由にやらせてもらっていました。逆にこっちが不安になるので、監督に聞くんですけど「いや、いいと思いますよ」って。

──それが正解だったんでしょうね。実際の体験を基にされてるんだったら。

最初はちょっと不安だったんですよ。もっとこうして欲しいと言われたら、それをクリアしていけば良いんですけど、「良かった」って言われると、自分では何が良かったのかいまいちはっきりしてない。そこを見つけるまでちょっと時間がかかりましたけど、それを1回掴んでからは自由に、僕が思ったようにやって、違ったらもちろん演出が入るという感じでしたね。

──タイトルにある「はざま」の意味は、「発達障がいとのグレーゾーン」と最初に説明されますけれども、そのうち水族館に入る時に、透くんから「自分は発達障がいだ」と告白します。あのあたりで、観てる側も「はざまってどこにあるんだろう」と思うわけです。春ちゃんもやっぱり、自分とどこがどう違うのか、なぜ透くんに惹かれるのか。彼氏もいるのに、彼氏とどう違うのか。そうしたいろんな世間の境界とのはざまをいろいろ描きつつも、移ろいゆくところが面白い。

ほんとにその通りで。僕も演じていて、いつからそう区別するようになってきたのか、その境界線というものはいわゆる僕たちの日常生活では発達障がいの特性を持っているとか、身体障がい者であるとか、一応あることにはなっているんですけれども。それがどこなのかは目に見えないものだから、どこが境界線なのか結局分からない曖昧なものなんです。そのなかで揺れ動く春ちゃんとか、自分で自分の道を全うして生きている透くんの描き方が、僕は葛監督のすごく上手いところと思っています。

映画『はざまに生きる、春』

2023年5月26日(金)公開 
(c)2022「はざまに生きる、春」製作委員会

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