真摯に役を生きる宮沢氷魚、発達障がいを抱える天才画家に挑む

2023.5.26 07:45

映画『はざまに生きる、春』で主演を務めた俳優・宮沢氷魚

(写真8枚)

「第16回アジア・フィルム・アワード」で最優秀助演男優賞を受賞した映画『エゴイスト』、明智光秀を好演した『レジェンド&バタフライ』のほか、6月からスタートする舞台『パラサイト』にも長男役でキャスティングされている俳優・宮沢氷魚。そんな彼が最新主演作『はざまに生きる、春』で挑んだのは、「発達障がい」の特性を持つ天才画家だ。

同作は、宮沢扮する若手画家・屋内透役と雑誌編集者の淡い恋を描いた純愛映画。天才的な画の感性を持つ透は、「青い絵しか描かない」ことで有名な画家で、感情を隠さず「誰かの気持ちを汲み取る」ということが苦手な一面を持つ。そんな繊細な役どころを見事に演じ切った宮沢に作品への想いを訊いた。

取材・文/ミルクマン斉藤 写真/バンリ

■ 繊細な役柄に真摯に向き合う宮沢

──宮沢さんの最近の活躍といったら、ものすごいですね。

ありがとうございます。

──この間も映画『レジェンド & バタフライ』の大友啓史監督とのインタビューで明智光秀の話について盛り上がりました。スピンオフができてもいいんじゃないかと。

結構カットされているシーンもあるので、撮っているのを全部繋げて明智版も作って欲しい(笑)。

──2017年のテレビドラマ『コウノドリ』でデビュー以降、ほとんど拝見していますが、今回の『はざまに生きる、春』はちょっと泣いてしまいました。いわゆる「アスペルガー症候群」の主人公を演じてみていかがでしたか?

どの役も自分でない人を演じることは決して簡単ではないから、難しさはどの役でもありますが、ただ、この『はざまに生きる、春』の透くんの場合には、自分のなかで整理しなくてはいけないことがたくさんありました。僕たちが表現、伝え方を間違えてしまうと本当に多くの人を傷つけてしまうし、差別を助長してしまうので、その辺はすごくセンシティブに、大事に大事に役と向き合って。映画が完成してからも、丁寧に発信していきたいなと思っています。

映画『はざまに生きる、春』[5.26 Fri公開] 主演:宮沢氷魚・ヒロイン:小西桜子

──なるほど。この映画を観ていると「発達障がい」という言葉自体がかなり幅広い解釈があるなと思います。

撮影の前後に勉強会を開いていただいたんですが、やはり発達障がいというのはすごく人に伝えづらいというか、レンジも広くて。「これが発達障がいです」という典型的な例も年々変わっていくし。日々、社会の認識が変わっていくなかで発達障がいのことを知ってもらうという難しさはありました。でも、少しでも発達障がい、アスペルガー症候群という特性を知っていただける機会になればという思いはありました。

──特に外国映画ではアスペルガーを扱った映画・・・例えば『レインマン』や『メアリー&マックス』ってアニメーションが昔からあります。それぞれに特性があって、そんなことを言い出したら僕自身も発達障がいそのものじゃないかって、この『はざまに生きる、春』を観ると思ってしまうんですよね。

大人になってから発達障がいと診断される人も結構いますよね。子どもの頃から発達障がいと診断できると思っていたんですけど、それを知らずにずっと生きる方もいる。この映画で初めて自分がそうであると気付く場合もあるかもしれません。だから発達障がいってなんだろうっていう。

──なんなんでしょうね?

正解は僕のなかではまだ無いし、理解するのが難しい人もたくさんいると思うんですけど。でも、やっとこの何年かで少しずつ前進してる気がします。それは社会的サポートもそうだし、発達障がいというものを認めている国も多くなってきた。そこに少しでもこの作品がプラスになれたら良いなという思いはあります。

映画『はざまに生きる、春』

2023年5月26日(金)公開 
(c)2022「はざまに生きる、春」製作委員会

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