ミュージカル界の「ダメ男」は総なめ、海宝直人が役にかける思い

2023.5.14 20:00

音楽劇『ダ・ポンテ~モーツァルトの影に隠れたもう一人の天才~』で主演をつとめる海宝直人

(写真5枚)

■ 「ジャン・バルジャンのように生きられる人の方が少ない」

──海宝さんは20年以上、さまざまなミュージカルに出演してきました。20年前の日本のミュージカル界は上演作品も限られていて、なかなか若者にチャンスが回ってこない印象がありましたが、今では20代〜30代の若手俳優にも主演のチャンスがある。すっかり様変わりしましたよね。

確かにそうですね。特に最近は、漫画やアニメの原作作品がすごく増えたのが大きいと思います。(取材時の)今も『SPY×FAMILY』や『キングダム』をやってますし。それによって、原作で興味を持った新しいお客さまが増えたし、漫画やアニメの世界とも刺激を与えあっていて、素晴らしいことだなあと思います。

グランドミュージカルの「顔」ともいえる存在の海宝だが、以前のミュージカル界は20〜30代の若手俳優が主演をつとめることは稀だった

──海宝さんも『王家の紋章』や『バイオハザード』に出演されてますが、原作があまりに有名だと、役作りに結構制約がかかるのではないかと思うのですが。

輸入物のミュージカルもたくさん決まりがありますけど、それとはちょっと違うアプローチの面白さがあります。たとえば『王家の紋章』は、原作者や原作ファンの思いを大事にしなければという思いに加えて、あの絵柄からインスピレーションを受けたりもしました。原作の「型」にはまりつつも、そのなかでいろいろ試していけるという楽しさを、原作物にはすごく感じます。

──イチから作るから、まったく「型」がない『ダ・ポンテ』は、それとは真逆ですね。

たぶん、いかようにも表現ができるから大変だと思いますよ。みんなでいろいろと持ち込んで、チャレンジして作っていかなきゃいけない。そのプレッシャーは感じています。

インタビュー中、過去の出演作を振りかえる海宝

──一方で、日本で何度も上演される海外ミュージカルの出演も多いですが、『レ・ミゼラブル』のマリウス、『ミス・サイゴン』のクリス、「ファントム(オペラ座の怪人)」のシャンドン伯と「ヒロインの相手役なのに女性に敵視される」三大キャラクターを、コンプリートされてますよね。

そうなんです。三大ダメ男と呼ばれたりすることも多いですよね。

──これ、不名誉だなって思ったりしますか?

全然思わないです。むしろ実際にやらせてもらうと、すごく人間らしい人たちだって思うんですよ。マリウスが「ダメ男」と言われる所以はよくわかるんですけど、実際に探究して、自分自身と照らし合わせたときに・・・決してヒーローではない人が、その時代の空気感や感覚のなかで、彼らなりにすごく考えて必死に生きて、苦しんで、いろんな選択をした結果、そういう流れになってしまったんだろうな、と感じます。

──そう言われると、幼なじみの片思いに鈍感すぎるマリウスも、革命下の極限状態じゃなく平穏な時代であれば、また違う判断ができたような気がしますね。

本当にそこに生きた生身の人間として描かれているからこそ、人間の持つ弱さやダメな部分がすごく伝わってくるし、すごく魅力的に思えるんです。それが「ダメ男」と言われて嫌われつつも、みなさんに愛されている理由じゃないでしょうか。

──人間らしく素直に行動した結果が、特に女性から見たら残念に見えてしまうと。

そうそう。でも多いでしょう? そういう人(笑)。(『レ・ミゼラブル』の主人公)ジャン・バルジャンのように生きられる人の方が少ないですよ。

音楽劇『ダ・ポンテ ~モーツァルトの影に隠れたもう一人の天才~』

会場:新歌舞伎座(大阪府大阪市天王寺区上本町6-5-13 YUFURA6階)
期間:7月20日(木) 〜 24日(月)
料金:S席(1・2階)1万2500円、A席(3階)6500円、特別席1万3500円

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