ミュージカル界の「ダメ男」は総なめ、海宝直人が役にかける思い

2023.5.14 20:00

音楽劇『ダ・ポンテ~モーツァルトの影に隠れたもう一人の天才~』で主演をつとめる海宝直人

(写真5枚)

7歳に、劇団四季『美女と野獣』でミュージカルデビューし、以後20年以上に渡り『ライオンキング』『レ・ミゼラブル』『ミス・サイゴン』などの話題作に出演してきた俳優・海宝直人。21世紀に入って大きく変化した日本のミュージカル界と成長を共にしてきたひとりだ。

そんな海宝の最新主演舞台『ダ・ポンテ~モーツァルトの影に隠れたもう一人の天才~』は、モーツァルトの名作オペラの台本を手掛けた知られざる天才、ロレンツォ・ダ・ポンテの生涯に迫るオリジナル音楽劇。今までにないタイプの主人公を演じる心境や、現在の日本のミュージカルについて思うことなどを訊いた。

取材・文/吉永美和子

■ 「楽しみながらキャラを作っていくことになりそう」

──ダ・ポンテは『フィガロの結婚』『ドン・ジョヴァンニ』という、当時としては革新的なオペラを書いたにも関わらず、今や作曲したモーツァルトの名前だけが独り歩きしているという、ある意味不幸な人物です。

彼とモーツァルトは、4年間しか一緒にやってなかったんですが、この2人の感覚がバチッと合ったことで、その時代にはなかった新しい価値観みたいなものを表現できたんだろうと思います。今回の台本を読んで、すごいアーティストだと思ったし、彼の視点から描くことで「モーツァルトにはこういう部分があったんだ」ということも、興味深く見てもらえると思っています。

これまで舞台で取り上げられなかったダ・ポンテという人物像について、分析する海宝

──その一方で、80歳近くまで詩人や教育者として精力的に活動したという、なかなか面白い生き方をした人物でもあります。

最後まで前向きにチャレンジを続けるし、すごくエネルギッシュで極端な人生を送った人だから、今まで演劇の形であまりフィーチャーされてなかったのが不思議なぐらいです。ただ今年になって急に、橋本良亮くんの舞台(『逃げろ!』/今年2月に公演終了)でも取り上げられて、ビックリしましたけど。

──別に没後何年とかいうタイミングでもないのに。ただ、周囲に詐欺師呼ばわりされても、信念を貫こうとするダ・ポンテのガッツあふれる生き様を、いろいろ制限されがちな現在の日本人が見たがっているのかな? とも思います。

確かに。コンプライアンスとかが厳しい今の時代に、ああいう刺激的な生き方をする人を見るのは、すごくいいかもしれないです。でも、彼が詐欺師扱いされるのは、自分のつかみたいもののために、すごく必死に立ち回った結果なんですよ。

純粋な思いから行動するけど、回り回って自分に返ってきて、悲しい目にあってしまうという(笑)。そこが憎めないし、チャーミングだなあと思います。

──そういう無邪気なペテン師でありつつ、女性にもだらしないという人物を、海宝さんは今まで演じたことがないとおっしゃってますが、そもそもそんなキャラクターが主人公になる作品って、あんまりないですよね。

そうかもしれないです。女好きというのも、愛が多いというか(笑)。「だって、愛してるんだもん!」って、すぐに誰でも好きになっちゃうけど、最後に相手にブチ切れられて振り回されて、やっぱり不幸になるんです。そういうところを、コメディ要素強く描いていくので、僕も楽しみながらダ・ポンテのキャラを作っていくことになりそうな気がします。

音楽劇『ダ・ポンテ ~モーツァルトの影に隠れたもう一人の天才~』

会場:新歌舞伎座(大阪府大阪市天王寺区上本町6-5-13 YUFURA6階)
期間:7月20日(木) 〜 24日(月)
料金:S席(1・2階)1万2500円、A席(3階)6500円、特別席1万3500円

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