名優の家系に生まれた寛一郎、なぜ「向いていない」と言うのか

2023.4.1 19:00

舞台『カスパー』で、初舞台にして初主演をつとめる俳優・寛一郎

(写真7枚)

■ 『自分の興味のあることをやれている人』と思ってもらえたら」

──いや、堂々とされていて、そんなこと考えてたとは思えなかったです。では、そんなに堅苦しくない話題で、2022年に『鎌倉殿の13人』で演じた公暁(三代目鎌倉殿・源実朝を暗殺する甥)はSNSでも絶賛され、周りの反響も大きかったのではないでしょうか。

映画やドラマで活躍する傍ら、180cm超えというプロポーションを活かし、モデル活動もおこなう寛一郎

『カスパー』に出てくるセリフで、「ドアは施錠した方がいいが、外界との関係は断ってはならない」というのがあるんですが、僕も結構施錠してるんで(笑)、良くも悪くも自分がやったことに対するフィードバックは、あまりかえってこないんです。もちろん、知ってる人は「良かったよ」と言ってくれましたけど・・・どうなんでしょうね?

──個人的には、実朝や北条家に対する強い憎しみも、実朝の人柄を知ってからの激しい迷いも、非常にリアルに表現していて「すごい役者だ!」と思いました。

「言葉の拷問」とも称される舞台『カスパー』、インタビュー中、寛一郎は慎重に言葉を選びながら話していた

ありがとうございます。最後にちょろっと出てきて、良い人を殺して死ぬっていうことが成立できただけでも良かったですし、演じていても楽しかったですね。あとから知ったけど、三谷幸喜さんも「僕に当てて書いた」と言ってくださってたそうです。公暁は自分ともわかり合えるところがあったし、楽しかったというか、非常にやりがいのある役でした。あれが源氏のほかの誰かをやっていたら、ちょっとしんどかったかもしれない。

──その理由は?

文献が多すぎて、調べるのが面倒くさくなったと思うんです。公暁はいい塩梅で少なかったので、全部読めましたし、調べる集中力が続きました。演じる前に、文献をちゃんと読んで掘り下げておく方が、あとあと自分が楽なんですよ。言い訳もできますし(笑)。

──直感で演じるというより、あらかじめずんずん掘っておくタイプだと。

その直感すらも、勉強しておくと変わっていくんです。そのときとっさに取る行動とかが。そのレベルまで掘り下げたことはまだないけど、調べることはまず役者ができる、ひとつの仕事だと思います。

──それがちゃんとできるってことは、やっぱり役者に向いてるのでは?

いや、面倒くさいですよ(笑)。文字読みたくないですし、歴史の本も2ページぐらいで「うわ、面倒くせえ」ってなりますし。まあ、調べれば楽しくなっていくんですけど。

──先ほど会見では「『カスパー』が最初で最後の舞台」と言ってましたが、最後になるかどうかはともかく、最初なのは確かですよね。

それは貴重な機会ですし、最後だからぜひ観に来てほしいです。「再演しろ」と言われても、多分やりたくないので(笑)。

俳優には「向いていない」と言いながらも、自らが見出した「興味」や「おもしろさ」について熱く語る寛一郎

──まあ「これが最後」と言って、結局ずっと続けるという役者さんも、結構いらっしゃるので、それに期待したいです。さて、役者には向いてないと言いつつも、もし当面続けていくようであれば、今後の理想像などはありますか?

他者から見たときに、自分の興味のあることをやれている人と思ってもらえたら、それは僕自身も幸せです。役者でも、ほかの仕事でもいいんですけど、自分の興味のあるものをやり続けられたらなあ、と思います。現に僕は『カスパー』というものに、今すごく興味を持ってやっているし、今後も・・・(演じた)あとになってからでもいいから、興味を持ち続けられる役や作品ができたらいいですね。

『カスパー』は寛一郎以外に、首藤康之、下総源太朗などが出演。3月の東京公演を経て、大阪公演は4月9日に「松下IMPホール」(大阪市中央区)にて。チケットは9800円で、現在発売中。

取材・文/吉永美和子 写真/渡邉一生

舞台『カスパー』

会場:松下IMPホール(大阪府大阪市中央区城見1-3-7)
期間:4月9日(日)
料金:9800円

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