完成まで11年…妙心寺×京都芸術大学の共同プロジェクト、襖絵が公開
京都の寺院「妙心寺」(京都市右京区)の塔頭寺院「退蔵院」「壽聖院」で、11年の歳月を経て完成した「襖絵」が特別公開された。
「退蔵院」の方丈(本堂)には、1600年代初めに狩野派の絵師・狩野了慶が描いた、国の重要文化財の襖絵が現存しているが、普段は取り外されており、一般公開されず保管されている。そのような場合、通常はレプリカを飾ることが多いが、「退蔵院」では2011年春から「京都造形芸術大学」(現・京都芸術大学)と共同で、若手絵師が方丈の襖絵を描き上げる前代未聞の『退蔵院方丈襖絵プロジェクト』を始動した。
「今の時代、精巧な複製を作ることもできますが、それでは芸術家は育たないし、後世に残る新たな文化財も生まれません。江戸時代も寺社で専属の絵師を雇い、寺社に住み込みさせ襖絵を描かせたように、若手芸術家を育成し、400年、500年後に国宝になる襖絵を残したいと思い、プロジェクトを始めました」と、副住職・松山大耕さん。
絵師は、公募により京都造形芸術大学院卒の村林由貴さんが選ばれたが、公募条件には「3年間寺に住み込み、最初の半年は筆を持たず、禅の修行をする」という厳しい項目も盛り込まれていた。村林さんは寺に住み込みつつ修行道場にも何度も足を運び、当初は3年ほどで完成するかと思われたプロジェクトが、なんとかかった歳月は11年。25歳だったら村林さんも現在は36歳に。
「寺に住み込み、修行することは、仏教や禅について理解を深め、信仰の場に奉納する襖絵を描くことはどういうことかを考えるいい機会になりました」と、村林さんは制作期間を振りかえる。完成した襖絵は、動植物を描いたものが多く、命の輝きや溢れる生命力、さらには、村林さんの変化や軌跡を感じるものとなっている。
「退蔵院」で全76面の襖絵が披露されており、村林さんがアトリエとして過ごした通常非公開の塔頭寺院「壽聖院」でも、方丈・書院の襖絵を特別公開中。
[お詫びと訂正]「京都芸術大学」の略称を間違って使用しており訂正いたしました。関係者のみなさまには、ご迷惑をおかけしましたことをお詫びいたします。
取材・文・写真/天野準子
退蔵院方丈襖絵プロジェクト 退蔵院・壽聖院 特別公開 ~村林由貴が描く禅の世界~
公開期間:2022年12月24日(土)~2023年1月9日(祝)
拝観時間:9:00~17:00(1月7日~9日壽聖院は10:00~16:00)
場所:妙心寺・退蔵院、壽聖院
拝観料:退蔵院1,000円、壽聖院600円
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