二宮和也主演、瀬々敬久監督「忘れてはいけないことがある」

2022.12.8 09:00

映画『ラーゲリより愛を込めて』の瀬々敬久監督

(写真6枚)

「彼から『ぜひ言いたい』と提案された」(瀬々監督)

──事実無根のスパイ容疑により、妻と4人の子どもを日本に残してラーゲリに収容された主人公・山本幡男役を演じた二宮さんはどうでした?

『硫黄島からの手紙』(2006年)で彼と仕事をしたクリント・イーストウッドも言ってたことですが、彼はほんとうにフランクな人ですね。先輩にも後輩にも分け隔てなくタメ口で接する(笑)。後輩からはもちろん親しみやすい先輩として慕われ、先輩たちもからも好かれるんです。映画の終盤に出てもらった寺尾聰さんは、以前テレビの仕事で二宮さんと一緒だったことがあるらしく、彼が主演するならどんな小さい役でも出るよって言ってくれました。

──二宮さん本人も、この作品にはなにか強い思い入れがあるように感じました。

実は彼のお祖父さんが、シベリア抑留経験のある旧日本兵だったとのことで、現場でそれを口にすることはなかったですが、やはりなにか胸に秘めたものはあったように思います。映画で彼が語る「戦争って、酷いものですね」というセリフがあるのですが、それは初めての顔合わせのときに彼から「ぜひ言いたい」と提案されたものでした。

©2022映画「ラーゲリより愛を込めて」製作委員会 ©1989 清水香子

──撮影を通じて、俳優・二宮和也にはどういった印象をもちましたか?

これまでの映画で観てきたとおりの、非常にいい役者だなって思いましたね。本番にすべてを一気に出し切るタイプで。リハーサルではいくらか小出しにしておいて、本番は常に完璧なものを出してくる。撮影を開始してすぐにそれがわかったので、安心して撮り進めました。

──主人公の妻・山本モジミを演じた、北川景子さんはいかがでしたか?

きれいな女優さんにわりと多いように思うんですが、北川さんもどちらかというと男性的なサバサバとした性質の方ですね。

©2022映画「ラーゲリより愛を込めて」製作委員会 ©1989 清水香子

──北川さん演じる奥さんは、一途に御主人を待ち続けているわけですが、あまり悲壮感のない、明るい女性なのが素敵でした。

あのキャラクターには裏話が在るんです。辺見さんの原作に書かれた奥さんのキャラクターはいわゆる良妻賢母といった女性で、シナリオでも最初はそのように造形していたんです。それが主人公のモデルとなった方の息子さんに実際にお会いしてお話をうかがったら、ちょっと違って。

本当の奥さん、いわゆる息子さんにとってはお母さんですが、けっこうドジなところがある可愛らしい方だったようなんです。それで北川さんとも相談してあのキュートな女性像ができあがったんです。クランクインひと月前の変更だったのですが、北川さんも見事に応じてくれました。

──主人公の妻としてこういった映画によく登場する良妻賢母より、いまの少々ドジなところのある女性像が、北川さんも魅力的で断然いいと思います。

ええ。ただ映画でも描いていますが、戦後にある報せがもたらされて、奥さんが号泣するシーン。あれは実際にはもっともっと激しい泣き方だったそうです。

映画『ラーゲリより愛を込めて』

2022年12月9日公開
監督:瀬々敬久
出演:二宮和也、北川景子、松坂桃李、中島健人、寺尾聰、桐谷健太、安田顕、ほか
配給:東宝

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