【連載vol.18】見取り図リリー、フェルメールを観る
アート大好き芸人「見取り図リリー」が、色々なアート展へ実際に観に行き、美術の教員免許を持つ僕なりのおすすめポイントをお届けするという企画「リリー先生のアート展の見取り図」でございます。今回は「大阪市立美術館」(大阪市天王寺区)で9月25日まで行われている特別展『ドレスデン国立古典絵画館所蔵 フェルメールと17世紀オランダ絵画展』です。
17~18世紀に収集された美術品がきっかけとなって誕生した美術館「ドレスデン国立古典絵画館」。1800年以前に制作された絵画3000点以上を所蔵し、約400点がオランダ絵画。今回はその黄金期に活躍した画家の作品約70点を展示しています。
そのなかでもやはり注目は、ヨハネス・フェルメール(1632年~1675年)の《窓辺で手紙を読む女》でしょう!
フェルメールは光の魔術師といわれ、暗い部屋に窓から差し込んでくる光の表現が美しいんですよね。資料があまり残されていないため、謎に包まれている画家ですが、生きている間は評価されなかったらしいです。しかも、残されている作品はたった約35点(コツコツと鑑賞していて、この連載では3作品目)。
しかも、そのうちの6点が手紙を描いているそう。当時は手紙が最先端のコミュニケーションツールだったらしくて、今でいうとSNSに夢中でスマホを見ているみたいな感じでしょうか。この作品は初期のもので、実はいろいろすごいんです。
手紙を読む女の奥の壁は何もなくただの壁だったそうですが、1979年の調査で、その壁はキューピッドの画中画の上から塗られている事がわかったんです! ただ、フェルメール本人が塗りつぶしたのでは・・・とそのままにされていましたが、2017年に修復作業をすることになったときに、その壁のところだけ絵の具が新しいことが発覚。急遽フェルメールが描いた本来の姿を取り戻すために、4年もかけて、少しずつ覆っていた絵の具を超慎重に手作業で削り取ったそうです。
なんと、このキューピッドの画中画バージョンの《窓辺で手紙を読む女》を観ることができるのは、ドレスデン国立古典絵画館を除くと世界で日本が初! ちなみに上塗りされた壁バージョンの模写も展示されているのですが、見比べるとどうなんだろう。どっちが好きかは人それぞれでしょうね。
それにしても、びっくりしたのは、フェルメール本人が上塗りしたのではなく、別の何者かということ! なんちゅー事するんじゃ! フェルメール師匠の絵に!! 枝雀師匠の落語後半が良くないなぁとか言って「ちょっと僕が後半演じますんで、編集で繋いでください」レベルにやばいぞ。やっとる事わかっとんのか何者か!
しかも最初はレンブラントの作品と間違われてもいたこともあったそうで。まぁ、けどそういうのも含めてフェルメールの魅力なんですよねー!
ほかの作品を観て改めて17世紀のオランダ絵画のレベルの高さにびびります! モチーフも幅広く、肖像画、静物画、宗教画、風俗画、風景画などなど盛りだくさん!あと、この時代って描いているモノで「匂わせている」のがおもしろいんです。例えば、鳥が性的な意味を持っていて、鳥を女性に売っているおじいさんの絵は、買春の意味を持っていたりと、かなり刺激的。
どの作品も完成度がすごくて、気になった作品のひとつ、ピーテル・デ・リングの《キジのパイがある静物》の細やかな技術なんてずっと観てられます! こちらも単なる食卓かと思えば、ワインとレモンが組み合わさると、節制とわがまま的な意味があるらしいです。なので、無駄遣いせずに、キチンと生活しましょうねって意味なんかなぁ。
あと、レンブラント先生の20代の頃の作品《若きサスキアの肖像》もあるのですが、20代でもうこの域なの、天才すぎます。俺なんか20代の頃金無さすぎて毎日パスタに塩かけてそれと発泡酒飲んどったわ。うらやま!
『ドレスデン国立古典絵画館所蔵 フェルメールと17世紀オランダ絵画展』
ドイツ東部のザクセン州にある「ドレスデン国立古典絵画館」より、オランダ絵画の黄金期である17世紀に活躍したレンブラント、メツー、ファン・ライスダールらによる作品約70点を展示。フェルメールが影響を受けた画家の作品もあり、当時の画家たちの関係性が見えてくる内容となっている。
【見取り図リリーの近況】
9月25日になんばグランド花月で、見取り図単独ライブ『ホテル・ミトリズ』やります! 配信あり! また史上最大のお笑いフェス『LIVE STAND 22-23』をはじめ、よしもと漫才劇場など各劇場でネタやっています! YouTube「見取り図ディスカバリーチャンネル」では注目の芸人とトークする「芸人テレフォンショッキング」、愛用するアイテムやオリジナルランキングといったコンテンツを配信。テレビでは冠番組の『見取り図じゃん』、『ラヴィット』(水曜)、『スローでイージーなルーティーンで』(月曜)などにレギュラー出演しています。
特別展『ドレスデン国立古典絵画館所蔵 フェルメールと17世紀オランダ絵画展』
期間:2022年7月16日(土)〜9月25日(日)
※月曜休館(9月19日は開館)
時間:9:30〜17:00(入館は16:30まで)9月10日・17日・23日・24日は19:00まで開館(入館は18:30まで)
会場:大阪市立美術館(大阪市天王寺区茶臼山町1-82)
料金:一般2100円、高大生1500円※中学生以下は無料
電話:06-4301-7285(大阪市総合コールセンター なにわコール・8:00~21:00)
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