眠気をごまかす演技に爆笑
『ラブ、ウェディング、リピート』【Ｎｅｔｆｌｉｘ】

あらすじ【『ハンガーゲーム』シリーズのサム・クラフリンが主演する結婚式コメディ。妹の結婚式で巻き起こるトラブルの数々をおさめるため、主人公である兄・ジャックが孤軍奮闘。カオスな式の模様を、異なる視点で描く】

結婚式にあつまった、様々な職種や個性を持つ人々。恋愛や仕事など、誰もが誰かにアプローチしたい状況がアチコチで発生しながら、空気の読めない人間たちのせいで場がぶち壊しになる。

思い込み、勘違いで全員噛み合わず、一方的に自分のことばかり喋ったり、感情をぶつけたりしていく――と、みんなが一方通行な展開は、イマドキでたとえるなら『愛がなんだ』（２０１９）の今泉力哉監督の映画っぽいかも（特に初期作）。トラブルを重ねながら、それぞれが本当の気持ちにたどり着いていくところも、たしかに今泉風味。

なかでも爆笑したのは、参列する有名映画監督とお近づきになりたい男・ブライアンのマヌケっぷり。ブライアンは、とある理由で意識もうろうとなるのだが、それを演じたジョエル・フライは、それこそ亡くなられた志村けんさんの「眠気をごまかすコント」を思い出す。経歴を調べたら『イエスタデイ』（２０１９）の出演俳優で、そういえば確かに見どころがあった。なかなかおもしろい俳優！

ジョディ・フォスター監督の最終話がグッとくる
『ザ・ループ ＴＡＬＥＳ ＦＲＯＭ ＴＨＥ ＬＯＯＰ』【Ａｍａｚｏｎ Ｐｒｉｍｅ Ｖｉｄｅｏ】

あらすじ【スウェーデンの作家、シモン・ストーレンハーグのイラスト集をドラマ化したＳＦシリーズ。巨大な粒子加速装置・ループが設置されている実験施設の周辺で発生する、奇妙な現象を描いていく】

各エピソードともにクールな画づくりがなされているが、『浦島太郎』などおなじみの童話にも通じるストーリーもあるので、意外とすんなり親しめるのでは？　加えて映画好きであれば、クリストファー・ノーラン監督の『インターステラー』（２０１４）あたりを連想するはずで、その点でもとっつきやすい。

超常現象モノではあるけど、軸となる家族ドラマもキャッチーだ。１話目『ループ』は失踪した母親を探す少女の物語。「母親がいなくなったのは自分が原因ではないか」と思い悩んでしまうところなど、少女特有の気持ちの敏感さがリアルに伝わってきて心が痛む。

最終話『ホーム』は、『羊たちの沈黙』（１９９１）のオスカー女優、ジョディ・フォスターが監督を担当。彼女の初期の映画、ドラマの監督作は人間の感情の描き方が見事だったけど、今回は出てくるロボットにまでしっかり人間味をあふれさせ、その運命の行きどころを切なく感じさせていく。ジョディ・フォスターはやっぱりできる人！

文／田辺ユウキ