宮沢氷魚「当たり前の恋愛が描かれている」

2020.1.24 22:00
(写真6枚)

「みんなの価値観が少しでも変化するんじゃないかなって」

──綾野剛さんがいなかったら、宮沢さんは生きづらさを感じたままだったかもしれませんね。

でも、今でも生きづらさを強く感じることはあります。日本も多様化が進んできましたが、しかし海外は別々の人種、宗教がもっと入り混じっている。むしろ、それぞれ違った方がいいという考え方。

インターナショナルスクールのときも、「他人とは違うものを生み出そう」というベースをもとにして学んでいた。誰かと似たような意見だと嫌になって「じゃあ、別の意見に変えるわ」となるくらい。だけど日本はどうしても大多数と同じ方向に流されたり、同じ意見を求めたりする。違った意見を声に出しづらいですよね。

──これは日本だけに限りませんが、どうしてもマイノリティ(少数派)=弱者という考え方ですよね。日本では、何か物事を決めるとき多数決の結果を正解とする部分もありますし。

僕が通っていた学校では、何かを決めるときは必ずプレゼンをしていました。相手を説得するためのディベートがおこなわれます。中学1年生のときも模擬裁判をやったりして、弱者が勝つこともあり得ると知りました。その方が世の中は豊かになるし、むしろそうあるべきじゃないかと考えます。

宮沢演じる迅、藤原季節演じる渚と、娘・空役の外村紗玖良 Ⓒ2020映画「his」製作委員会

──LGBTQについても、いつまでも「マイノリティ」にくくっていてはいけませんよね。当たり前に存在する、とならなきゃいけない。どうしてもその点の意識が、日本は後進国であると思います。だからこそ『his』の終盤、根岸季衣さん演じるおばあさん・吉村房子さんが口にする1つのセリフはすごく先進的に聞こえます。

アメリカに2年間暮らしていたこともあるのですが、みんなプライドを持ってカミングアウトをしていました。僕も、ゲイの方に「好きだよ」と告白された経験があります。でもみんな自分に嘘をつきたくないし、セクシュアリティに誇りを持って生きている。いつの間にか、ゲイの人がたくさんいることを当たり前に感じるようになった。

でも、日本に帰ってきたとき、周りに全然いないんですよ。いないわけがないのに。どうしても隠さなきゃ日本ではうまく生活できない。まだそんな状況なんだと知って、心が苦しくなりました。

「これがLGBTQの映画というカテゴリーではなく、恋愛映画のひとつとして楽しんでもらえるようになってほしい」と宮沢
「これがLGBTQの映画というカテゴリーではなく、恋愛映画のひとつとして楽しんでもらえるようになってほしい」と宮沢

──こういった映画だと、メディアによっては「タブーに踏み込んだ作品」と紹介したり、それこそ宮沢さんや藤原さんに「チャレンジングな役だったのでは?」と尋ねたりするインタビュアーもいるのではないでしょうか。

確かにそう言われることはあります。

──どうしてもセンセーショナルに扱ったり、BLモノっぽく紹介したりする。メディアのそういう取り上げ方に違和感を抱くことはありませんか。

あるにはありますが、ただ、それでも何らかの形でクローズアップされることが大事だし、大きなステップになると信じています。スタートしないと始まらないから。いずれそういうレッテルがなくなって、「LGBTQの映画」という触れ込みではなく、「当たり前の恋愛がそこに描かれている」と感じられる作品になってほしい。

2020年は東京でオリンピック・パラリンピックもあり、いろんな国の人、いろんなセクシャリティの人が日本にやって来る。みんなの価値観が少しでも変化するんじゃないかなって。そんな重要な年に、『his』が公開されることに大きな意味を感じています。

『his』

2020年1月24日(金)公開
監督:今泉力哉
出演:宮沢氷魚、藤原季節、松本若菜、松本穂香、外村紗玖良、中村久美
配給:ファントム・フィルム

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