恒例の評論家鼎談、洋画・勝手にベスト3

2019.8.17 20:00

映画『スパイダーマン:スパイダーバース』

(写真6枚)

「本気出したらこんなことになるんや!」(田辺)

田辺「ちなみに、前回の下半期・外国語映画ベスト3は、『ヘレディタリー』『メアリーのすべて』『顔たち、ところどころ』の3本でしたね」

春岡「『顔たち、ところどころ』はいいね、渋いねぇ。今年の上半期なら、ピーター・ファレリー監督の『グリーンブック』が良かったな」

斉藤「アカデミー賞を獲るなら、『グリーンブック』しかないと思ってた。スパイク・リー監督が怒ろうがさ(笑)」(註:スパイク・リー監督は授賞式で、途中退場しようとした)

春岡「スパイク・リー監督の『ブラック・クランズマン』は、つまんなかったよな」

斉藤「つまんなかった。往年のキレがまったくない。アカデミー賞については、まあ、怒るのも分からんではないけど(笑)。そりゃ断然、『グリーンブック』が支持されるに決まってる」

田辺「そうですよね。『メリーに首ったけ』(1999年)や『愛しのローズマリー』(2002年)など、最高のコメディ映画を作ってたピーター・ファレリー監督。本気出したらこんなことになるんや! って思いました」

斉藤「昔、どこかの記事に『ファレリーは現代のフランク・キャプラだ』って書いたことがあって。まあ、ファレリーの映画って下品なんやけど、超民主主義やんか。アメリカ的な民主主義をとことん信じてないと、ああいう映画は撮れないわけで」

田辺「そうそう、ちゃんと現実的な社会問題をテーマとして抑えてる。実は何十年も前から続いてる問題なんやけども、みんなが目をそらしてたもの、っていうね。ファレリーはそれを前からずっとやっていた」

春岡「笑いのなかに・・・というか、笑いと一緒くたにして障害者のなにが悪いの?っていう。だからこそ、真面目にやったらこうなるのは分かるよね」

ピーター・ファレリー監督の『グリーンブック』

田辺「黒人の問題、今的なゲイの問題、それを変に強調することなく、むしろこれが当たり前なんですよ、っていう問題提起」

斉藤「今回は、ファレリー兄弟じゃなくて、兄のピーター・ファレリーだけやけど、そのスタンスはまったく変わってない。だからこそ、アカデミー主演男優賞はヴィゴ・モーテンセンがもらうべきだったんだよ。『ボヘミアン・ラプソディ』のラミ・マレックじゃなくて」

田辺「そうそう。断然、ヴィゴ・モーテンセンですよね」

斉藤「ラミ・マレックは『パピヨン』(2019年)でもダスティン・ホフマンをそのまま真似してて、もうちょっとちゃんとしてくれよ!って思ったもん」

春岡「あとは、クリント・イーストウッド監督の『運び屋』だな」

斉藤「あんなん嫌いな人おらへん。イーストウッドって、やっぱりメルヴィル(ジャン=ピエール・メルヴィル監督)の『サムライ』が好きなんやなって思った」

春岡「それ、俺も思った、映画の呼吸がまさに、だよな」

斉藤「『サムライ』と違って、主人公はしゃべりまくるけど(笑)。たぶん、間違ってないと思う。あんな何回もメンテナンス屋に寄る映画はないから」

田辺「もう、毎年イーストウッドは面白いですからね。常連過ぎて、逆にベスト3に入りづらいという謎現象(笑)」

斉藤「でも僕は、『15時17分、パリ行き』は褒められすぎやと思うねん。どっちかというと企画倒れ」

春岡「そうなんだよ。素人を使ってよくやったね、というだけで。『ハドソン川の奇跡』とかさ、あの話をあの短さでやる素晴らしさがあったけど、『15時17分、パリ行き』なんて、イーストウッドなら普通にできるよ。むしろ、普通以下じゃんって」

斉藤「そうそう。とはいえ、『運び屋』はさすがに上手すぎるよね。80歳を超えた爺さんが3Pするなんて。しかも、イーストウッド本人が演るなんてさ(笑)」

映画『アリータ:バトル・エンジェル』

田辺「あとはやっぱり挙げておきたいのが、ロバート・ロドリゲス監督の『アリータ:バトル・エンジェル』ですね」

次頁:「分かってる人が、分かってムチャクチャに」(斉藤)

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