十三ファンダンゴ、32年の歴史に幕
「ゴチャゴチャしたブッキングは、街に影響されていたのかも」
──出演するバンドの傾向も、30年ほどでいろいろな変遷があったと思いますが。
加藤「変わってはきましたね。最初は一連のウルフルズとかランブルフィッシュをはじめとするロックの流れがあって、でも成功した後もパンク~ハードコア系のバンドと一緒に混ぜてオールナイトのイベントに出てもらったりもしていました。その後にデカかったのは、(90年代後半の)メロコアとそれに付随するシーンかな」
──十三での最終日(31日)を飾るガーリック・ボーイズも、初期のウルフルズとともにファンダンゴを語るうえで外せないバンドですね。
加藤「ガーリックは最初の年から出てもらっていたし、1番古いんじゃないかな。メンバーが泉北出身で隣の中学やったから、かわいがってもらいましたね」
──ほかにも、90年代に関西拠点のアンダーグラウンドなシーンを紹介していたガンジー石原さん主宰の音楽誌『GーScope』に取り上げられていたバンドとか、挙げ始めるとキリがないですが。
加藤「レーベルで言うとアルケミーとか、ギューンとか、タグラグとかね。最後に向けてそのへんの人たちもちょこちょこ来てくれて、この2~3カ月くらいで振りかえれたんとちゃうかなと思ってる。やっぱり会えたらうれしいし」
──直近の10年ほどはどんな感じだったんですか?
村上「僕がファンダンゴで働き始めてからちょうど10年くらいなんですけど、もともと僕は愛媛から出てきた人間で、パンクのイベントをきっかけにファンダンゴによく来るようになったんです。僕が通い始めた頃には、ハードコア寄りのやかましいバンドも多かったけどそこは少し落ち着いて、パンク~メロコアにロックンロール界隈、ブルース系のバンドや弾き語りも多くて、こんなに多様でジャンルレスなライブハウスがあるんやという驚きがありました」
──なるほど。
村上「この場所で知れて、好きになっていったミュージシャンが多かったし、10代の頃はちょっと極端でウルサい音楽をやってこそパンクやろみたいに思っていたんですけど、それは全然思わなくなって。一貫した自分の音楽性を貫いて続けている人の方が強いというのを学んだし、そういう人たちを観て若い子も、昔よりもジャンル分けしにくい独創性のある人が増えてきているように思います」
──村上さんは、最初の頃はどういうバンドがお好きだったんですか?
村上「こっちのバンドで言えばS.O.B.とかガーゼとか原爆オナニーズとか・・・。でもハイ・スタンダードとか、オフスプリングのような海外のメロディック・コアも好きでしたね」
──ファンダンゴのブッキングは、常にパンクも主軸にありましたけれど、そこだけに留まることのない独特のものでしたね。でも、一貫したカラーみたいなものも確かに感じられて。
加藤「やっぱりジャンルよりも『ヒト』やと思っていたから。コイツ面白いし熱いなと思ったら来てほしいという、そういうブッキングの仕方をしていたからジャンルはバラバラになったし、そのゴチャゴチャとした感じが十三らしい気もしていたし。街に影響されていたのかもわからんね」
──ブッキングに関しては、ファンダンゴ流の明確な基準みたいなものはあったんですか?
加藤「1番大事にしていたのは、直接に会うて話をしたときの感じ。音が云々よりも、ヤル気があるかどうかとかは、そこですぐわかるじゃないですか? 1番最初の基準は、そこでコイツ面白いなぁと思えるかどうかで、次に音楽でしたね」
村上「そうですね」
加藤「面白い人にはどういう形でも来てもらいたかったし、昔は郵送してくるバンドもあったけど、たいがいは直接音源などを持ってきてくれた。最近はメールで送ってくるような時代に変わっているけど、今でも鼻息荒く直接に店まで来てくれる子もおって。そういう人には、たとえそれまでにファンダンゴに来たことがなかったとしても(笑)、『持ってきたということは来たということや』と1度出てもらったりするようにしていますね」
──まずは音楽性や知名度などよりも、その人自身のパーソナリティを重視するという姿勢が、自然とジャンルを越えたファンダンゴならではの色を形成してきたというか。
加藤「いくら歳が離れていたとしても、オレらも何かを得たり勉強したいというか。そういうモノを求めますね」
村上「ただ、最初に入ったばかりで(加藤さんの)横で事務作業をやらせてもらうようになったときには、たまにビックリするような会話も聞きましたね」
──というと?
村上「学生さんがホール・レンタルしようと思って電話をかけてきたときにも、内容を聞いて加藤さんが『それは面白いんか?』と返したら相手が無言になって、『またよろしく!』と電話を切ってしまったり(笑)。『使わせてください、なんぼですか?』とだけ言ってくる電話が大嫌いで・・・」
加藤「『なんぼで借りれんのん?』とだけ言われたら、『100万!』と返してましたね(笑)。今はそんなことはなく、何でも『ありがとうございます!』と応対していますけれど」
村上「でも、人と内容が見えていないイベントはやりたくないというのは、今でも根底にあると思います。『え、来たことあんの? ないん? やめとき!』と言って電話を切ったこともありましたから(笑)。普通なら店長自らがそんなこと絶対に言わないし、『うわっ、ガラ空きやのに断った・・・』と隣で思ってました(笑)」
『十三FANDANGO~end roll~』
日程:2019年8月2日(金)・3日(土)
時間:2日=17:00〜23:00、3日=13:00〜21:00
場所:十三ファンダンゴ(大阪市淀川区十三本町1-17)
料金:入場無料((要ドリンク注文)
『FANDANGO 移転記念「SAIKAI THE SAKAI #1」』
日時:2019年10月1日(火)・19:00〜
会場:堺ファンダンゴ(大阪府堺市堺区戎島町5-3)
料金:前売3000円、当日3500円
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