昨年は大ヒットに湧いた邦画、今年は?

© 2017「映画 山田孝之」製作委員会
「ドキュメンタリーとして抜群に面白い」
田辺「あと、上半期ベスト級だったのが、天龍源一郎のドキュメンタリー映画『LIVE FOR TODAY-天龍源一郎-』!」
斉藤「あれは抜群やったよな!」
田辺「ミッキー・ロークの『レスラー』(2009年)ってあったじゃないですか。あれは、プロレスの人情話だけど、いかにもなドラマチックさがありましたよね。ここまでくるとさすがに嘘くさいよなって。だけど、この映画の天龍源一郎はそれを実際にやってるんですよ。というか、むしろ越えてるっていう(笑) 」
斉藤「完全に越えてるよね。監督あるいは天龍さんは明らかにあれを意識して映画を作ったんだと思うけど(笑)」
田辺「娘さんがよくて。天龍プロの社長みたいな代表みたいなのをやって、で、天龍を最後までちゃんと支えてるっていうのが娘さんなんですよ」
春岡「天龍源一郎ってキャラクター自体がフィクションみたいだよなあ」
斉藤「そうそう。自分で虚構を作り上げていかなければ、スターになれない世界だから」
春岡「力道山、ジャイアント馬場、アントニオ猪木もそうだけど、日本にプロレスラーってすべてが虚構で全然リアリティがないんだけど、リアリズムがないところがスゴいんだっていう」
斉藤「そういう、日本のプロレスがもってる構造を全部さらけ出して、お約束だと誰もが知っている状態でなお、さらに感動させるという」
田辺「とてつもなくスゴかったのが、引退試合の相手に指名したのが、今の新日本プロレスで最強レスラーと言われる、オカダカズチカなんですよ。天龍クラスになれば、引退試合くらい気持ちよく終わらせることも許されてるのに、最後の最後まで最強レスラーとバチバチにやるという。もう感動しました!」
斉藤「天龍はプロ中のプロ、最高のプロレスラーなんで、オカダもそれをちゃんと分かった上でのガチンコでね。しかも20分近くも闘うという」
田辺「それを若いプロレスラーが仕掛けるならまだしも、70歳近い天龍から仕掛けるという」
春岡「それが虚構としての第一条件なわけで、まさかそんなことはやらんだろう、ということが虚構の始まりなわけだから。で、実際にそれを目の前で観せて、観客も『これは現実なのか、フィクションなのか?』分からない世界で興奮するという。エンタテインメントとしては大正解で。天龍の場合、自分自身がリアルを越えようとしていて、それをみなさん、楽しんでくださいというわけだから」
斉藤「作家の村松友視が著書『私、プロレスの味方です』(1980年)で、プロレスという妙な存在を理論づけたじゃないですか。それ以降のプロレスラーって、そういうメタ的な概念をハッキリ咀嚼してやっているのよ。あの論理は現在もさまざまなエンタテインメントで通用していて、例えば今のアイドル事情もそうでしょ? メタ的なところにいるのが面白いという考えが普通になっちゃってる」
春岡「この前、NMB48の子が結婚宣言してファンが賛否両論、喧々囂々となったわけだけど、そこに参加するということが楽しいわけで」
斉藤「それがまさにメタなんですよね。で、しかも須藤凛々花はそんなの承知で仕掛けてもおかしくない奴やったから(笑)。それはともかく天龍は観るべきですよ。ドキュメンタリーとして抜群に面白い」

田辺「最高でした。で、ちゃんと最後、娘さんとの親子の話が落としどころになっていて」
斉藤「そう。でも別に親子愛を謳うわけじゃなし、ベタベタしてないのがいいね。娘さんがたぶんコンセプトを一番分かっているんだから。この映画は今年のベストテンに積極的に入れたい感じ。もっと知って欲しいよね」
田辺「僕は上半期の1位は『LIVE FOR TODAY-天龍源一郎-』。2位が『映画 山田孝之3D』、3位が『帝一の國』ですね。『帝一の國』は菅田将暉と野村周平がすごく良かった」
斉藤「ホントに面白かったよね。野村周平は『日々ロック』(2014年)みたいにああいう役の方がいいよな。僕は1位に白石和彌監督の『牝猫たち』、2位が『愚行録』、3位が『夜は短し歩けよ乙女』かな。ロマンポルノ・リブート・プロジェクトは基本的に作家性と過去への思い入れが強すぎて失敗だったと思うけど、アフレコや全篇ロケなど昔のロマンポルノの作り方を踏襲してなお、田中登映画への返歌として成立させた白石さんのと、永遠に射精できないというブニュエル風ジレンマの可笑しさと女優ふたりの可愛さが突出してた行定勲監督の『ジムノペディに乱れる』が突出してたと思う」
春岡「俺は1位が『美しい星』、2位が『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』。で、3位にさ、熊切和嘉監督を入れたいんだよ」
斉藤「あぁ、『武曲 MUKOKU』。僕は映画はつまんなかったけど村上虹郎はめちゃくちゃ良かった!虹郎、開眼という」
春岡「虹郎をあれだけ撮った熊切監督は偉いよ。柄本明を誰もが考えるような、つまんない坊主役に当ててさ。まあ、それも含めて、(大学の後輩である)熊切がかわいいのよ、俺は(笑)」
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