昨年は大ヒットに湧いた邦画、今年は?

2017.8.23 12:00

© 2017「映画 山田孝之」製作委員会

(写真4枚)

2016年は『君の名は。』『シン・ゴジラ』など、大ヒットに湧いた日本映画。今年もその勢いは続いたのか。数々の映画メディアで活躍し、Lmaga.jpの映画ブレーンである評論家 ── 春岡勇二、ミルクマン斉藤、田辺ユウキの3人が大阪市内某所に集結。お題は「ホントにおもしろかった映画はどれ?」。上半期公開の日本映画について語ってもらった。

「これはちゃんと宣伝しなければいけない」

田辺「ホントにおもしろかった映画はどれ?と言われれば、僕は『映画 山田孝之3D』。山田孝之がしゃべっているだけなのに、3D映像の意味をちゃんと成しているという稀有な3D映画」

斉藤「そうそう、3Dでないと存在意義が無いという(笑)」

田辺「山田孝之の起源について撮りながら、バックでは宇宙を感じさせつつ(笑)」

斉藤「しゃべっていることに対して、突然映像のほうが暴走し出すという」

春岡「監督は誰なの?」

田辺「松江哲明さんと山下敦弘さん。最初は山田孝之が自分の生い立ちを語ってるんですけど、その生い立ちにバックの方で映像がついてきて、で、さっきミルクマンさんが言ったように急に映像の方が先に出ていくことがあって、そこに山田孝之の語りがついていくみたいな」

春岡「なるほど。被写体があるんだけど、その被写体の背景が前に出てくることが3Dなんだよな」

田辺「方法論としては、松江さんが撮った『フラッシュバックメモリーズ 3D』で。ただ単に山田孝之にしゃべらせるという(笑)」

斉藤「しかも、その内容がどこまで本当なのか分からない(笑)。大実験映画ですよ」

田辺「それを3D料金とメガネ代合わせて2200円払わせて劇場でかけるという。あれは賭けですよ」

春岡「評判は上々?」

田辺「いや、困惑している人が多いと思う。誰もしゃべっている人がいない(笑)」

斉藤「あくまで、『山田孝之の東京都北区赤羽』『山田孝之のカンヌ映画祭』ファン向け。ちゃんと繋がってるから」

春岡「世界観はその地平だもんな」

田辺「ドラマの1部・2部で、山田孝之というキャラクターをちゃんと見せて、で、3部で山田孝之が『僕は変な風に見られるようにしてるんです』みたいなのをちゃんと言ってオチもついてるし」

斉藤「生い立ちも語るし、その場所を訪ねるし、演技論も語るし、映画哲学も語るんだけど、それがホントかどうか分からない」

田辺「むしろもう、全部頭から抜けていくんですよ、山田孝之の語りが(笑)」

春岡「『山田孝之のカンヌ映画祭』なんて、すごく良い意味で嘘っぽいもんな。映画なんて、如何様でやってますという感じがすごく良い」

田辺「これはネタバレなんですけど、最後に『僕はひとつだけ嘘をついてたことがあるんです』って言うんです。でも、そうか? むしろ、ホントのこと言ってたのって、長澤まさみが好きっていうとこだけちゃうかっていう(笑)」

斉藤「お父さんが地元でバーやってると言うけど、それもホントかどうか分からない。全部嘘かもしれない」

田辺「松江さんが上手いのは、そういうのをちゃんと3Dでやりましょう、立体でやりましょうっていう。3Dという立体性、真実性みたいなのを利用して」

春岡「3Dでやれば、嘘が嘘っぽくなくなる。でも逆に嘘じゃないかな?と思ったら、どこまでも嘘に見えるっていうさ(笑)」

斉藤「映画ってさ、もっとも見世物性の高い媒体やんか。だからそうしたフェイクというか、フィクションのシステムを理解してる利口な観客は、自ら進んでその意図にハマりに行く。この映画の場合はタイトルで分かるからね、これは冗談ですって」

春岡「大事な映画だね。今の時代に合う。やっぱり日本でもそういう映画生まれなきゃダメだよ」

田辺「ホントですよ、これはちゃんと宣伝しなければいけない」

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